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 次の日の朝、僕たちは焚き木を焚き、気がついてはいるだろうが、仁斗田島に合図を送った。
「俺たちに、危害を加えるつもりはなさそうだな」
ハムさんが対岸にある島を見つつ、呟いた。
「仁斗田島でも、朝食を作っている最中でしょうか?」
僕も呟くように、島から出ている煙を見て言った。
「二人で島を眺めていないで、こっちも朝食を作る準備を手伝ってくれ。ロウに水を汲みに行ってもらったが、中々帰ってこない。もしかすると、川の上流まで汲みに行ったのかもしれない」
僕はザシさんの言葉を聞き、急激に喉の渇きをおぼえた。
「昨日の夕食、しょっぱかったもんな」
 ハムさんが僕に言い、僕も「そうでしたね」と同意した。昨日汲んだ川の水には、多くの海水が混じっていたようだった。食べた時には気がつかなかったが、起きから異常に喉が渇いてきたのだ。
「さ、早く水を汲んでこよう」
僕はハムさんに促され、一緒に水を汲みに行った。
 ロウさんは歩いて、かなり遠くの場所にいた。
「ここまで来たんですか?」
 僕が尋ねると、ロウさんは「まだ、何となく塩っ気がある気がしてな」と言い、足をさらに川の上流に向けた。
「仁斗田島では、どうやって水を調達しているんでしょうね?」
僕は背後の島を一度振り返り、昨日の話題を口にした。
「やっぱり、雨水だろうな。この辺りの植生を見ると、海岸付近に生える様な木や草の生え方をしている」
 ロウさんが言うと、ハムさんが反論するように口を開いた。
「それは、俺たちが住んでいる所よりも南で、暖かいからじゃないですか?」
「そうかもしれない。だが、土が塩っけぽい気がする。イバさんが嫌がりそうな土だな」
 ロウさんは土を足で蹴る様にして掘り、川に向かって歩いた。
「ここなら、うん。真水に近いな」
 僕たちはここでようやく水を汲め、ザシさんの元へ戻れることになった。
「それにしてもハム。何だかんだ言っていても、カラと気が合うんじゃないか?」
 ロウさんがそう言い、僕が『そうですか?』と尋ねる前に、ハムさんが口を開いた。
「去年まで、子供たちの班長をしていましたから」
ハムさんはそっけなく答え、足を速めていった。
「ロウさん、ハムさんは僕の事をどう思っているんでしょうか?」
僕が尋ねると、ロウさんは何も言わず、ただハムさんの背中を微笑みながら眺めているだけだった。

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