『潮が満ちたら、会いに行く』

１－３

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 村に戻ると、不機嫌そうなお兄ちゃんがいた。
「で、だ。猪を子供だけで獲ったとはどういう事だ？」
「雪が降る前から練習して、罠を仕掛けてからも予行練習をしていたから、大丈夫だと思っていたよ。それに、安全も確保したし。ウルにもいい経験になってと思うよ？」
僕がお兄ちゃんに言うと、お兄ちゃんは「でも、子供だけでっていうのはなぁ」と、呟きを漏らした。
「大丈夫だ。お前が二ツ森に行く時には、一緒にカラがついていって、罠の造り方と獲物の追い込み方を習っていたじゃないか。お前が二ツ森に交流しに行くついでに、な？」
 ロウさんがお兄ちゃんの肩を叩きつつ、言葉に含みを交えつつお兄ちゃんに言った。
「まあ、そうなんだが」
 お兄ちゃんは少し、口ごもっていた。
そして、いつの間にか現れたザシさんとヤンさんが、二ツ森でとれた石を上手く使いながら、猪の解体をし始めた。
今年の春は、いつもよりも暖かく感じた。その暖かさは太陽が暖かいだけではなく、村の雰囲気も暖かったからだ。
「お、今日は猪か。産後の女性には猪の骨を煮込んだ羹を。小さな子供には脂身のある部分を与えるようにな」
 お父さんが猪を解体しているザシさんとヤンさんに指示を出し、集まってきた村人たちを見渡した。今年の冬は、一人も亡くならなかったのだ。