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2―12
僕たちは岩場を抜け、山道に入る場所で一夜を過ごすことにした。
「急げば夜中の内に山を越えられるかもしれないが、急ぐ必要もないし、暗いと足場も悪くなるしな」
ラドさんの言葉に、僕たちはみな賛成した。
「さてと、ここでバクの獲った鳥が役に立つな」
ラドさんは背負っている籠の中から、鳥の燻製を取り出した。昨日、二ツ森でも食べたのだが、それでもまだ十二分に余っていた。
「食料の調達をせずに済みましたね」
イケが明るい口調でいい、腰につけてある籠の中かから、粉物を少しだけ取り出した。
これは去年採った、栗の実等の木の実を乾燥させた保存食だが、時間が経つにつれて不味くなる。出来れば、あまり食べたくなかった。
「どこか湧き水でもあれば、ちょうどいいだけどな」
ウドさんが空を見上げ、「雨でも降らないかな」と呟いた。
「おいおい、雨が降ったら山越えが大変になるぞ?」
ラドさんに言われ、ウドさんは「冗談さ」と、軽く答えた。
僕も空を見上げ、飛んでいる鳥を見た。
「ヨウなら鳥の言葉がわかって、何処に水場があるかわかるのかな?」
僕が言うと、イケも「そうですね」と同意した。
「いや、鳥も水が無ければ生きられない。まだ明るいし、少し探してみよう」
ロウさんはそう言って、疲れが見えるイケに火の番を任せ、皆で水辺を探すことにした。
「鳥や、何処かに水辺はないか?」
僕は冗談交じりに飛んでいる鳥に話しかけ、鳥が飛ぶ方角に向かって歩いた。すると、煙が見えてきた。
「あれ、イケのいる場所に戻って来たのかな?」
僕は自分が一周したのかと不安を抱き、後ろを振り向いた。そこにも、煙がたっていた。という事は、今見える煙は誰かが起こしている煙であろう。
「誰かいませんかー?」
僕が大きな声をあげると、「なんだ!」という、少し警戒している様な声が聞こえてきた。僕はその声によって集まって来たロウさんらと共に、少し身構えた。
「何だ。人間だったのか」
岩の間から身体の大きな男性が現れ、呆れたような顔で僕たちを見つめた。
「お前は、耳が悪いんだよ」
他にも人間が数人ほど現れ、身体の大きな男性を揶揄った。
「この辺りに住んでいるんですか?」
ウドさんが尋ねると、身体の大きな男性は「帰り道だ。祭事のな」と言い、空になっている大きい甕を逆さまにした。少しだけ、お酒の匂いがした。
僕たちがここにいる理由を話すと、身体の大きな男性は不思議そうな顔をした。
「へぇ、歩いて三内まで行くのか。俺たちも歩いて行くんだが、お前たちの住んでいる所からだと、船ってやつの方が速いんじゃないのか?」
僕は男性と話をしつつも、大きな身体に圧倒されていた。ロウさんも他の男性に話しかけられ、受け答えをしていた。ロウさんはあまり、人見知りをしないのだろう。
「あなた達は、三内を管理している村の人ですか?」
僕が身体の大きな男性に尋ねると、彼は「ああ、あと2年後に交代だな」と言い、少し面倒そうな顔をした。その事を指摘すると、彼は「俺たちの村が、一番人間が少ないからさ」と答えた。
「三内の維持・管理も楽じゃないんだ。建物だけじゃなくて、もめごとの処理までしなくちゃならない」
身体の大きな男性が言うと、他の男性らが「お前は身体が大きいから、行くだけで解決するだろ」と揶揄っていた。僕の目には、彼らは仲の良い人たちに見えた。
「僕たちは水辺を探しているんですが、この近くにありませんか?」
「ああ、ちょっとした湧き水が流れている所が近くにある。ちょうど、あの尖った岩の向こう側だ」
僕たちはこの集団にお礼を言い、先ほどの集落跡についても尋ねてみた。
「あそこは、俺たちもよく知らないんだ。たまに十人くらいで、村を造らないで流浪して生きていく人たちがいるからな。俺にはあまりわからないな。村を造って、拠点があった方が暮らしやすいだろうに」
身体の大きな男性は不思議そうな顔をしつつ、僕たちと別れを告げた。
僕たちは岩場を抜け、山道に入る場所で一夜を過ごすことにした。
「急げば夜中の内に山を越えられるかもしれないが、急ぐ必要もないし、暗いと足場も悪くなるしな」
ラドさんの言葉に、僕たちはみな賛成した。
「さてと、ここでバクの獲った鳥が役に立つな」
ラドさんは背負っている籠の中から、鳥の燻製を取り出した。昨日、二ツ森でも食べたのだが、それでもまだ十二分に余っていた。
「食料の調達をせずに済みましたね」
イケが明るい口調でいい、腰につけてある籠の中かから、粉物を少しだけ取り出した。
これは去年採った、栗の実等の木の実を乾燥させた保存食だが、時間が経つにつれて不味くなる。出来れば、あまり食べたくなかった。
「どこか湧き水でもあれば、ちょうどいいだけどな」
ウドさんが空を見上げ、「雨でも降らないかな」と呟いた。
「おいおい、雨が降ったら山越えが大変になるぞ?」
ラドさんに言われ、ウドさんは「冗談さ」と、軽く答えた。
僕も空を見上げ、飛んでいる鳥を見た。
「ヨウなら鳥の言葉がわかって、何処に水場があるかわかるのかな?」
僕が言うと、イケも「そうですね」と同意した。
「いや、鳥も水が無ければ生きられない。まだ明るいし、少し探してみよう」
ロウさんはそう言って、疲れが見えるイケに火の番を任せ、皆で水辺を探すことにした。
「鳥や、何処かに水辺はないか?」
僕は冗談交じりに飛んでいる鳥に話しかけ、鳥が飛ぶ方角に向かって歩いた。すると、煙が見えてきた。
「あれ、イケのいる場所に戻って来たのかな?」
僕は自分が一周したのかと不安を抱き、後ろを振り向いた。そこにも、煙がたっていた。という事は、今見える煙は誰かが起こしている煙であろう。
「誰かいませんかー?」
僕が大きな声をあげると、「なんだ!」という、少し警戒している様な声が聞こえてきた。僕はその声によって集まって来たロウさんらと共に、少し身構えた。
「何だ。人間だったのか」
岩の間から身体の大きな男性が現れ、呆れたような顔で僕たちを見つめた。
「お前は、耳が悪いんだよ」
他にも人間が数人ほど現れ、身体の大きな男性を揶揄った。
「この辺りに住んでいるんですか?」
ウドさんが尋ねると、身体の大きな男性は「帰り道だ。祭事のな」と言い、空になっている大きい甕を逆さまにした。少しだけ、お酒の匂いがした。
僕たちがここにいる理由を話すと、身体の大きな男性は不思議そうな顔をした。
「へぇ、歩いて三内まで行くのか。俺たちも歩いて行くんだが、お前たちの住んでいる所からだと、船ってやつの方が速いんじゃないのか?」
僕は男性と話をしつつも、大きな身体に圧倒されていた。ロウさんも他の男性に話しかけられ、受け答えをしていた。ロウさんはあまり、人見知りをしないのだろう。
「あなた達は、三内を管理している村の人ですか?」
僕が身体の大きな男性に尋ねると、彼は「ああ、あと2年後に交代だな」と言い、少し面倒そうな顔をした。その事を指摘すると、彼は「俺たちの村が、一番人間が少ないからさ」と答えた。
「三内の維持・管理も楽じゃないんだ。建物だけじゃなくて、もめごとの処理までしなくちゃならない」
身体の大きな男性が言うと、他の男性らが「お前は身体が大きいから、行くだけで解決するだろ」と揶揄っていた。僕の目には、彼らは仲の良い人たちに見えた。
「僕たちは水辺を探しているんですが、この近くにありませんか?」
「ああ、ちょっとした湧き水が流れている所が近くにある。ちょうど、あの尖った岩の向こう側だ」
僕たちはこの集団にお礼を言い、先ほどの集落跡についても尋ねてみた。
「あそこは、俺たちもよく知らないんだ。たまに十人くらいで、村を造らないで流浪して生きていく人たちがいるからな。俺にはあまりわからないな。村を造って、拠点があった方が暮らしやすいだろうに」
身体の大きな男性は不思議そうな顔をしつつ、僕たちと別れを告げた。
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