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サキSide 1

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サキSide 1
 レイの考えた創作話は、思ったよりも好印象に受けいれられたと思う。是川の小さな子供たちは主に、装飾品を造ったり、その手伝いのような形で遊んでいる。何かを考えるとしても、その美しさや、もっと簡単にできないかを相談し合うくらいだ。
 それと、星を見る人が少ないというのが印象的だった。他にも、海鳥が太陽に向かって飛ぶ話や、月が落ちてこない話などをした。この二つは好評だったが、星の話になると、少し首を傾げている小さな子供が多かった。
 その事をノギさん、カラの母親に尋ねてみると、「星は海に還った魂が昇って、空から見守ってくれているくらいにしか、私たちは考えていなかったわ」という答えが返ってきた。
 しかし、ノギさんの話だと、秋田の一部の集落の人たちは太陽と月の位置が、年に二度完全に同じになると信じているとのことだ。その証拠として、石を置いて、年に二回同じ時間に太陽の影の長さが同じになるというのだ。
私の興味は尽きなかったが、詳しく聞こうにもノギさん自身はその集落の出身ではないので、詳しくは知らないそうだ。
「三内になら、そこの集落の人と出会えるかもしれないわね」
 ノギさんはそう言ったが、私は実際にその集落に行ってみたいという思いが強くなった。しかし、入江では秋田との交流を持とうという考えはなく、提案してもハウさんらが反対するだろう。
「カラに、頼んでみようかしら?」
 カラならば、どこへでも行ってくれると思った。しかし、カラには去年お世話になりすぎており、カラ自身も是川で『立派な子供』になろうとしていた。
「どうしようかしらね」
 私は一人呟きつつ、ナホさんと一緒にどろどろとした腐ったものの作る約束を思い出した。

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