274 / 375
動かない空の神様
しおりを挟む
動かない空の神様
空の神様は動かない神だと、他の神々から言われていました。太陽と月を空に打ち上げてから、何も仕事をしていなかったからです。
海の神様は魚たちを育み、山の神様は木々や獣を育みました。しかし、空の神様は何もせず、空の上から人間たちを見守っていました。
そんなある時、海の神様が言いました。
「人間たちは魚を獲りすぎている。ちょっと困らせてやろう」
そう言うと、海の神様は大風を吹かし、漁をしている人間たちを困らせました。
「人間たちは山の木々を切り、獣を獲りすぎている。少し困らせてやろう」
そう言うと、山の神様は木々を大きく成長させ、人間たちを暗い山に迷わせてしまいました。
その様子を空の神様は、ただ眺めているだけでした。
「どうしたんだ空の神よ。お前は何もしないのか?」
二人の神様に言われても、空の神様はただ空の上から人間たちを見守っているだけでした。
そんなある時でした。海をさ迷っていた人間が叫びました。
「太陽はいつも同じ方向から昇ってくる。そっちの方角に進んでいけば、いつか陸地が見えるかもしれない」
人間たちは一生懸命舟を漕ぎ、ついに陸地に辿り着きました。
山をさ迷っていた人間も叫びました。
「どんなに暗くても、月の明かりが私たちを照らしてくれる。月が昇る方角に進めば、いつかは山から出られるはずだ」
人間たちは懸命に木々をかき分け、ついに山から脱出しました。
それを見ていた二人の神様は、面白くありませんでした。
「よし、なら太陽と月の昇る位置を、勝手に動かしてしまえ」
二人の神様は太陽と月を、空の神様に黙って、勝手に時期によって昇る位置を変えてしまいました。それでも、空の神様は空の上から人間たちを見守っていました。
太陽と月の位置の違いに驚いている人間たちを見た二人の神様は満足げに頷き、居眠りをし始めました。
それにも関わらず、空の神様は太陽と月の位置を直そうとはしませんでした。
二人の神様が目覚めると、なんと人間たちは以前と変わらぬ、それ以上の暮らしをしていました。
「空の神よ。お前が何かしたのか?」
二人の神様は空の神様を問い詰めましたが、空の神様は人間を見守っているだけで、何もしていませんでした。代わりに、口を開きました。
「人間は、お前たちが太陽と月の位置を変えた事で、いつ魚が獲れるか、いつ木々に実がなるかを知ったようだぞ?」
二人の神様は大慌てで、空の上から人間たちを眺めました。
空の神様の言った通り、人間たちは太陽や月の位置から四季を予測し、その時々にあった暮らしを育んでいました。
それを見た二人の神様は、「もう人間を困らせるのは止めよう」と言いました。何故なら、人間は困らせれば困らせるほど、強くなっていく生き物だったからです。
それを聞いていた空の神様はようやく重い腰を上げ、夜に見える小さな星をたくさん打ち上げました。
「そんなもの、打ち上げてどうするんだ?」
二人の神様は口を揃えて言いました。そして、空の神様は口を開きました。
「私はずっと、空の上から人間たちを見守ってきた。空の上から私たち神々が人間を見つめてきたように、空の下から人間たちも、私たち神々を見つめていたのだ。私はもっと、人間たちを試してみたい」
しかし、空の神様が打ち上げた星々は勝手気ままに飛び散り、どれがどれだかわからなくなっていました。
「この中で一つだけ、動かない星を打ち上げた。人間は、これに気がつくだろうか?」
空の神様は少し笑いつつ、たった一つの動かない星に住み始めました。
空の神様は、他の神々が人間にあらゆる物事をしても動じる事無く、人間たちを見守っていました。
空の神様は何もしていないように見えましたが、一つだけ他の神々とは違ったことがありました。それは、人間を信じているという事です。
人間は神々が苦難を与えても、それを乗り越えて生きていく。だから自分が動かずとも、見守っているだけでいいと考えていたのです。
空の神様は今日も、いつか人間たちが自分のいる星を見つけてくれることを信じつつ、空の上から人間たちを見守っています。
空の神様は動かない神だと、他の神々から言われていました。太陽と月を空に打ち上げてから、何も仕事をしていなかったからです。
海の神様は魚たちを育み、山の神様は木々や獣を育みました。しかし、空の神様は何もせず、空の上から人間たちを見守っていました。
そんなある時、海の神様が言いました。
「人間たちは魚を獲りすぎている。ちょっと困らせてやろう」
そう言うと、海の神様は大風を吹かし、漁をしている人間たちを困らせました。
「人間たちは山の木々を切り、獣を獲りすぎている。少し困らせてやろう」
そう言うと、山の神様は木々を大きく成長させ、人間たちを暗い山に迷わせてしまいました。
その様子を空の神様は、ただ眺めているだけでした。
「どうしたんだ空の神よ。お前は何もしないのか?」
二人の神様に言われても、空の神様はただ空の上から人間たちを見守っているだけでした。
そんなある時でした。海をさ迷っていた人間が叫びました。
「太陽はいつも同じ方向から昇ってくる。そっちの方角に進んでいけば、いつか陸地が見えるかもしれない」
人間たちは一生懸命舟を漕ぎ、ついに陸地に辿り着きました。
山をさ迷っていた人間も叫びました。
「どんなに暗くても、月の明かりが私たちを照らしてくれる。月が昇る方角に進めば、いつかは山から出られるはずだ」
人間たちは懸命に木々をかき分け、ついに山から脱出しました。
それを見ていた二人の神様は、面白くありませんでした。
「よし、なら太陽と月の昇る位置を、勝手に動かしてしまえ」
二人の神様は太陽と月を、空の神様に黙って、勝手に時期によって昇る位置を変えてしまいました。それでも、空の神様は空の上から人間たちを見守っていました。
太陽と月の位置の違いに驚いている人間たちを見た二人の神様は満足げに頷き、居眠りをし始めました。
それにも関わらず、空の神様は太陽と月の位置を直そうとはしませんでした。
二人の神様が目覚めると、なんと人間たちは以前と変わらぬ、それ以上の暮らしをしていました。
「空の神よ。お前が何かしたのか?」
二人の神様は空の神様を問い詰めましたが、空の神様は人間を見守っているだけで、何もしていませんでした。代わりに、口を開きました。
「人間は、お前たちが太陽と月の位置を変えた事で、いつ魚が獲れるか、いつ木々に実がなるかを知ったようだぞ?」
二人の神様は大慌てで、空の上から人間たちを眺めました。
空の神様の言った通り、人間たちは太陽や月の位置から四季を予測し、その時々にあった暮らしを育んでいました。
それを見た二人の神様は、「もう人間を困らせるのは止めよう」と言いました。何故なら、人間は困らせれば困らせるほど、強くなっていく生き物だったからです。
それを聞いていた空の神様はようやく重い腰を上げ、夜に見える小さな星をたくさん打ち上げました。
「そんなもの、打ち上げてどうするんだ?」
二人の神様は口を揃えて言いました。そして、空の神様は口を開きました。
「私はずっと、空の上から人間たちを見守ってきた。空の上から私たち神々が人間を見つめてきたように、空の下から人間たちも、私たち神々を見つめていたのだ。私はもっと、人間たちを試してみたい」
しかし、空の神様が打ち上げた星々は勝手気ままに飛び散り、どれがどれだかわからなくなっていました。
「この中で一つだけ、動かない星を打ち上げた。人間は、これに気がつくだろうか?」
空の神様は少し笑いつつ、たった一つの動かない星に住み始めました。
空の神様は、他の神々が人間にあらゆる物事をしても動じる事無く、人間たちを見守っていました。
空の神様は何もしていないように見えましたが、一つだけ他の神々とは違ったことがありました。それは、人間を信じているという事です。
人間は神々が苦難を与えても、それを乗り越えて生きていく。だから自分が動かずとも、見守っているだけでいいと考えていたのです。
空の神様は今日も、いつか人間たちが自分のいる星を見つけてくれることを信じつつ、空の上から人間たちを見守っています。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!
夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!!
国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。
幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。
彼はもう限界だったのだ。
「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」
そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。
その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。
その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。
かのように思われた。
「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」
勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。
本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!!
基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。
異世界版の光源氏のようなストーリーです!
……やっぱりちょっと違います笑
また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)
艨艟の凱歌―高速戦艦『大和』―
芥流水
歴史・時代
このままでは、帝国海軍は合衆国と開戦した場合、勝ち目はない!
そう考えた松田千秋少佐は、前代未聞の18インチ砲を装備する戦艦の建造を提案する。
真珠湾攻撃が行われなかった世界で、日米間の戦争が勃発!米海軍が押し寄せる中、戦艦『大和』率いる連合艦隊が出撃する。
天威矛鳳
こーちゃん
歴史・時代
陳都が日本を統一したが、平和な世の中は訪れず皇帝の政治が気に入らないと不満を持った各地の民、これに加勢する国王によって滅ぼされてしまう。時は流れ、皇鳳国の将軍の子供として生まれた剣吾は、僅か10歳で父親が殺されてしまう。これを機に国王になる夢を持つ。仲間と苦難を乗り越え、王になっていく物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる