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4―6
「ほれ、早く起きんか?」
 朝早く、僕はキノジイの持っている木の棒で叩き起こされた。
「まだ、早いんじゃないの?」
「なに、早寝早起きがワシの信条じゃ。ワシの孫になるつもりがあるなら、毎日早起きせんか」
 僕は心の中で『昨日はごめんだって言っていたじゃないか』と呟きつつ、身体を起こした。
「で、何と言って謝るか決まったのか?」
キノジイに問われ、僕は口を開いた。
「僕は『元に戻してください』とは言わないよ」
僕の言葉に、キノジイは軽く驚いたようだ。
「ほう、それでは何と言うんじゃ?」
 キノジイ軽く笑いつつ、僕に尋ねてきた。
「謝るのは勿論だけど、最後に僕は元に戻るんじゃなくて、『新しい村の一員として、よろしくお願いします』って言うつもりだよ」
「ほう、新入りから始めるのか。この先大変じゃろうな」
キノジイが面白そうに笑った。
「大丈夫。だって、キノジイに相談するし、シキさんにも、みんなにも相談する。僕はもう、一人で悩んだりしないよ」
「そうか。なら、早く村に行くといい、今なら朝食の準備で、皆が起き出す頃じゃ」
 キノジイの言葉が終わるのと同時に、僕はキノジイを抱きかかえるようにして、外に出ようとした。
「こら、何をするんじゃ?」
「だって、キノジイも『村の一員』でしょ?」
 僕はキノジイを抱え、村の中心へと向かった。
 正直、僕は怖かった。受け入れてくれるかよりも、自分の言葉を上手く言えるか、本音で言えるかが心配だった。でも、冷たい朝の風が、僕の不安をかき消してくれるようだった。
「キノジイ」
「なんじゃ?」
「早く起こしてくれて、ありがとう」
「なら、早く降ろせ」
 僕はキノジイと一緒に、村の中心へ向かった。

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