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カラSide 4-3
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カラSide
4―3
「俺は、自分の妻と子を優先させたんだ。熊の肝は貴重で、いや、他にも病気や怪我をしている村人がいたにもかかわらず、俺は妻と子を優先させたんだ。しかも、自分には子供がいる。その考えを利用して、子熊を先に狙い、子熊を守る親熊を殺して、子熊も殺したんだ。そんな俺が酋長だなんて、どうしてあの時断らなかったのか。今でも後悔する時がある。こんな卑怯者に、どうして酋長なんて出来るんだよ?」
お父さんは叫び声とも悲鳴とも使に声をあげ、身体を地面に投げ出すようにして倒れ込んだ。
「俺はカラの言う様に、何も変わっちゃいない。汚い手で、自分の事を優先させるんだ。シキ、お前が俺を赦さないように。カラが俺を軽蔑するような、俺はそんな人間なんだ」
お父さんはうつ伏せに横たわったまま、泣くようにして叫んだ。僕は、何て声をかけたらいいのだろうか。今の話を聞いて、僕は頭の中の整理がつかなかった。
そんな中、シキさんだけうつ伏せになっているお父さんに向かって口を開いた。
「そんなの、どうでもいい」
シキさんはそう言いつつ、磯の海水を両手で掬い、無理やりお父さんの顔にかけた。
「う、鼻に、ゴホッゴホッ」
お父さんは海水が鼻に入ったのか、咽ていた。
「お父さん、大丈夫?」
僕が慌てかけよると、お父さんは鼻と口から海水を出していた。
「ヲンは、酋長の仕事をしていたと、俺は思っている」
シキさんは再び、海水を両手で掬った。
「だから、誰かに懺悔をして、罰を受けたいなら、俺がいくらでもやってやる」
シキさんはそう言うなり、再び海水をお父さんの顔に向けて浴びせつけ、再びお父さんは咽た。
「もし、ヲンが酋長をしている事を気に入らなかったら、とっくに反対している人がいる。でも、いない。だから、ヲンは酋長でいいと思う。今の話を聞いても、俺はヲンが酋長でいいと思う」
シキさんがまた海水を掬う前に、僕はシキさんの手を止めた。
「俺は、卑怯者だぞ?」
「なら、聞いて来い」
シキさんはお父さんに言うと、村の方を指した。
「酋長を辞めたいなら、今の理由を言えばいい。でも、みんな止めると思う」
シキさんはそう言って、村の方を見つめている。お父さんはシキさんの指した方を見て、僕の方を見た。
「お父さんは、シキさんとどうしていと思っているの?」
僕の問いに、お父さんは「すまなかったと思っている」と答えた。
「違うよ。子供の頃の話じゃなくて、これからどうしたいかを聞いているんだよ。今は嫌われているけど、これからはどうしたいの?」
僕が再び尋ねると、お父さんは「いや、その・・」と、いつもの煮え切らない表情になった。
「ヲンは酋長でいい。でも、今のお前に好感は無い」
シキさんはそう言って、海の方を眺めた。
「お父さん、『今の』だって」
僕がお父さんに言うと、お父さんは口を閉じ、何かを決めたかのような顔つきになった。
「俺は今から、12年前の真実を話してくる」
お父さんはそう言い、「カラを頼んだ」とシキさんに言ってから、村の方へ歩いていった。
「お父さん、大丈夫でしょうか?」
僕が不安そうに呟くと、シキさんは「俺の、知らない顔になった」と、短く答えた。
「それより、カラ。今日はどうするんだ?」
「どうするって?」
「寝る場所。ここで、寝るのか?」
海からの風は冷たく、ここで寝たら、体調を崩してしまいそうだった。
「カラ、過去は変えられない。俺も、そうだ。変えられないなら、明日を見ていくしかない」
シキさんは、お父さんの背中が見えなくなるまで見つめていた。
4―3
「俺は、自分の妻と子を優先させたんだ。熊の肝は貴重で、いや、他にも病気や怪我をしている村人がいたにもかかわらず、俺は妻と子を優先させたんだ。しかも、自分には子供がいる。その考えを利用して、子熊を先に狙い、子熊を守る親熊を殺して、子熊も殺したんだ。そんな俺が酋長だなんて、どうしてあの時断らなかったのか。今でも後悔する時がある。こんな卑怯者に、どうして酋長なんて出来るんだよ?」
お父さんは叫び声とも悲鳴とも使に声をあげ、身体を地面に投げ出すようにして倒れ込んだ。
「俺はカラの言う様に、何も変わっちゃいない。汚い手で、自分の事を優先させるんだ。シキ、お前が俺を赦さないように。カラが俺を軽蔑するような、俺はそんな人間なんだ」
お父さんはうつ伏せに横たわったまま、泣くようにして叫んだ。僕は、何て声をかけたらいいのだろうか。今の話を聞いて、僕は頭の中の整理がつかなかった。
そんな中、シキさんだけうつ伏せになっているお父さんに向かって口を開いた。
「そんなの、どうでもいい」
シキさんはそう言いつつ、磯の海水を両手で掬い、無理やりお父さんの顔にかけた。
「う、鼻に、ゴホッゴホッ」
お父さんは海水が鼻に入ったのか、咽ていた。
「お父さん、大丈夫?」
僕が慌てかけよると、お父さんは鼻と口から海水を出していた。
「ヲンは、酋長の仕事をしていたと、俺は思っている」
シキさんは再び、海水を両手で掬った。
「だから、誰かに懺悔をして、罰を受けたいなら、俺がいくらでもやってやる」
シキさんはそう言うなり、再び海水をお父さんの顔に向けて浴びせつけ、再びお父さんは咽た。
「もし、ヲンが酋長をしている事を気に入らなかったら、とっくに反対している人がいる。でも、いない。だから、ヲンは酋長でいいと思う。今の話を聞いても、俺はヲンが酋長でいいと思う」
シキさんがまた海水を掬う前に、僕はシキさんの手を止めた。
「俺は、卑怯者だぞ?」
「なら、聞いて来い」
シキさんはお父さんに言うと、村の方を指した。
「酋長を辞めたいなら、今の理由を言えばいい。でも、みんな止めると思う」
シキさんはそう言って、村の方を見つめている。お父さんはシキさんの指した方を見て、僕の方を見た。
「お父さんは、シキさんとどうしていと思っているの?」
僕の問いに、お父さんは「すまなかったと思っている」と答えた。
「違うよ。子供の頃の話じゃなくて、これからどうしたいかを聞いているんだよ。今は嫌われているけど、これからはどうしたいの?」
僕が再び尋ねると、お父さんは「いや、その・・」と、いつもの煮え切らない表情になった。
「ヲンは酋長でいい。でも、今のお前に好感は無い」
シキさんはそう言って、海の方を眺めた。
「お父さん、『今の』だって」
僕がお父さんに言うと、お父さんは口を閉じ、何かを決めたかのような顔つきになった。
「俺は今から、12年前の真実を話してくる」
お父さんはそう言い、「カラを頼んだ」とシキさんに言ってから、村の方へ歩いていった。
「お父さん、大丈夫でしょうか?」
僕が不安そうに呟くと、シキさんは「俺の、知らない顔になった」と、短く答えた。
「それより、カラ。今日はどうするんだ?」
「どうするって?」
「寝る場所。ここで、寝るのか?」
海からの風は冷たく、ここで寝たら、体調を崩してしまいそうだった。
「カラ、過去は変えられない。俺も、そうだ。変えられないなら、明日を見ていくしかない」
シキさんは、お父さんの背中が見えなくなるまで見つめていた。
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