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サキSide 7

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サキSide 7
 カラが是川に帰った日の夜、レイは満天の星空と満月の下で、南の方が見える体制で、海の向こうを眺めている。
「本当は、カラに帰ってほしくなかったんじゃないの?」
 私が尋ねると、レイは「少しだけ」と言い、言葉を続けた。
「カラにはちゃんと村に帰って、みんなを安心させてから、また来て欲しいな」
 レイは本心でそう言っているのだろう。私も、カラには是川で帰ってからじゃないと、本心で入江には滞在しない気がした。
 レイはしばらくして、背中の岩から身体を傾け、横になった。動く右手で身体を仰向けにして、空を見上げた。
「星って、どうして時期によって場所が違うんだろう?」
レイの言葉を聞き、私も隣に横になった。
「モニさんは、『お月様が、産んだ星たちの追いかけっこを眺めている』言っていたわね」
 私は、昔を思い出すように言った。
「でも、あまり動かない星もあるよね?」
 レイに言われ、私は「そうなの?」と、聞き返した。
 レイは左腕をつっかえ棒のようにして、北の方を向いた。
「北の方の星って、あまり動かないんだ。疲れているのかな?」
私も北の方を見た。でも、レイの言っている事が本当かは分からなかった。いや、本当だろう。レイは天気がいい夜は、寒くないように毛皮を身体にまいて、星を見ている。
 レイの目には何が見えているのだろうか。私はずっと、レイと星を見ていたかった。

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