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 朝早く僕が外に出ると、マオとカオがすでに起き出しており、僕を見つけると駆け寄ってきた。いや、駆け寄って来たというより、獲物を見つけた獣の様だと思った。
「それっ!」
 二人は掛け声をあげ、僕の顔と足元に手を伸ばし、僕を地に伏せさせ、昨日のように片腕ずつ締められ、僕は「痛いから、痛いって!」と、情けない声をあげてしまった。
「ズイ、今だ!」
 マオとカオのどちらの声かはわからなかったが、二人の視線の先にはズイがいた。
「圧し潰しちゃえ!」
 二人の声が重なり、ズイが僕に向かって走ってきた。二人の声から察するに、ズイは僕を全身で圧し潰すつもりなのだろう。
 僕は覚悟を決めたように目をつぶったが、いつまで経っても、僕の身体にズイの身体が落ちてくることは無かった。
「もう、勝手に何処にも行かないで・・」
 目を開けると、ズイの泣き顔が見えた。その顔つきは、冬に同い年の子が亡くなった時の顔つきだった。
 僕は全身に力を入れ、無理矢理マオとカオを引きはがした。そして、ズイの全身を包み込むように抱きしめて謝った。
「ごめん。悲しい思いをさせて」
 僕にはこれ以上、何も言うことが出来なかった。
 僕たちの喧騒に気がついたのか、入江の人たちも起き出し、是川から来た人たちも起き出した。
「是川の子供は、元気だな」
 ハムさんが僕を見て、言葉をかけてきた。
「とっとと帰りな。僕は、お前が嫌いだからな」
 ハムさんが言うと、マオとカオが「何を言うんだ」と言い、ハムさんと言い合いの喧嘩になった。
 僕は気まずさを感じつつ、是川から来た人たちを入江の人たちと一緒にもてなし、帰る日を迎えた。
「本当に、いいのか?」
 キドさんに再三尋ねられ、僕は何度も「帰ります」と答えた。
「カラを帰させないなら、入江で引き取るわよ?」
 入江にいる間、ずっと怒っていたキドさんにサキさんが本気で言うと、キドさんはまた怒り出した。
「本当にカラのことを思っているなら、入江で引き取るなんて言わないだろ?」
キッとした目つきでキドさんはサキさんを睨み、サキさんもキドさんを睨み返した。二人は初対面の時から睨み合い、滞在している間も睨み合いっぱなしだった。
「わかっているわよ。あなたがカラを好きだって事はね」
「何を言っているんだ。カラを入江で引き取りたいなんて、お前こそカラが好きなんじゃないのか?」
 二人の言い合いを見ていたレイが「カラは愛されているね」と、茶化してきた。
「だから、僕はカラが嫌いなんだ」
 ハムさんが、珍しく僕を名前で呼んだ。
「いつまで、嫌いなんですか?」
 僕が尋ねると、ハムさんは「無理に好きになろうとは思わない。お前は、僕に好きになって欲しいのか?」と、聞き返してきた。
「出来れば」
 僕が即答すると、ハムさんは「やっぱり、カラは嫌いだ」と言い、家に戻っていった。

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