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カラSide 3-1
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カラSide
3―1
入江で子供の仕事を続けているうちに、僕はどうして是川で班長としての仕事がつまらなく感じていたのだろうと、その答えが少しずつ分かってきた気がした。
僕は子供の仕事よりも、大人の仕事の方がやりがいのある、村の役に立つ仕事だと考えていたのだ。
でもそれは『自分にとって』やりがいのある仕事であり、他の子共たちの仕事を考えていなかったのだ。
トウさんの班長の仕事ぶりを見て、僕は自分自身が次第に恥ずかしくなってきた。僕がやるべきだった班長の仕事は、『立派な子供』になる事であり、それを年下の子共にも教えていく事だったのだ。
「ハウさんの言う様に、僕は村同士の交流を考えすぎていたのかもしれないなぁ。僕は自分の足元を見ていなかったんだ」
海岸の磯部で、草の蔦で釣りをしているレイに、懺悔をするような形で僕は呟いた。
「カラ、僕の隣で後悔されても困るんだけどなぁ」
レイは海面を見つつ、蔦の先に小エビが止まった瞬間に、右手でゆっくりと蔦を引っ張り、小エビを釣り上げた。蔦の先には小さな籠が付けられており、小エビはその中に入るようになっている。
「サキさんに、モニさんが『解決できない』って言っていたらしいけど、どう言う意味なんだろうね?」
僕は海面に撒いた小さな虫に寄ってきた小魚に、その小魚に寄ってきた大きめの魚を、モリを勢いよく投げて突いた。魚は身震いをしてから、海面に浮かんできた。
「あーあ、集まっていた小エビたちが逃げちゃった」
僕が投げたモリに驚き、他の生き物たちが逃げていってしまったのだ。
「いや、レイは十分に獲りすぎでしょ?」
レイは僕と違い、釣りで『待つ』という事が苦にならないようだ。小エビが来なくとも、ずっと海面を見続け、潮の流れが変わると、僕やムウに移動させてくれるよう頼み、場所を変えて、また待ち続けるのだ。
レイは『獲物を探す』のではなく、『獲物が来る場所を予測する』と言った方がいいだろう。
「だって、この小さなエビは焼いて食べると美味しいじゃん。お腹に溜まらないから、たくさん獲っても足りないくらいだよ」
レイは左腕で、小エビがたくさん入っている籠を揺らした。
「たぶん、モニさんにはモニさんなりの考えがあって言ったんだと思う。僕たちの考えは、サンおばさんがこの前モニさんに伝えていたし、僕たちはこれ以上どうしようもない。なら、出来ることはカラの言っていた通りの事なんじゃない?」
レイに言われ、僕は「立派な子供になる事、か」と呟いた。
「あ、漁から大人たちが帰って来たみたいだ」
レイが海の遠くを遠望しながら、僕に言った。
3―1
入江で子供の仕事を続けているうちに、僕はどうして是川で班長としての仕事がつまらなく感じていたのだろうと、その答えが少しずつ分かってきた気がした。
僕は子供の仕事よりも、大人の仕事の方がやりがいのある、村の役に立つ仕事だと考えていたのだ。
でもそれは『自分にとって』やりがいのある仕事であり、他の子共たちの仕事を考えていなかったのだ。
トウさんの班長の仕事ぶりを見て、僕は自分自身が次第に恥ずかしくなってきた。僕がやるべきだった班長の仕事は、『立派な子供』になる事であり、それを年下の子共にも教えていく事だったのだ。
「ハウさんの言う様に、僕は村同士の交流を考えすぎていたのかもしれないなぁ。僕は自分の足元を見ていなかったんだ」
海岸の磯部で、草の蔦で釣りをしているレイに、懺悔をするような形で僕は呟いた。
「カラ、僕の隣で後悔されても困るんだけどなぁ」
レイは海面を見つつ、蔦の先に小エビが止まった瞬間に、右手でゆっくりと蔦を引っ張り、小エビを釣り上げた。蔦の先には小さな籠が付けられており、小エビはその中に入るようになっている。
「サキさんに、モニさんが『解決できない』って言っていたらしいけど、どう言う意味なんだろうね?」
僕は海面に撒いた小さな虫に寄ってきた小魚に、その小魚に寄ってきた大きめの魚を、モリを勢いよく投げて突いた。魚は身震いをしてから、海面に浮かんできた。
「あーあ、集まっていた小エビたちが逃げちゃった」
僕が投げたモリに驚き、他の生き物たちが逃げていってしまったのだ。
「いや、レイは十分に獲りすぎでしょ?」
レイは僕と違い、釣りで『待つ』という事が苦にならないようだ。小エビが来なくとも、ずっと海面を見続け、潮の流れが変わると、僕やムウに移動させてくれるよう頼み、場所を変えて、また待ち続けるのだ。
レイは『獲物を探す』のではなく、『獲物が来る場所を予測する』と言った方がいいだろう。
「だって、この小さなエビは焼いて食べると美味しいじゃん。お腹に溜まらないから、たくさん獲っても足りないくらいだよ」
レイは左腕で、小エビがたくさん入っている籠を揺らした。
「たぶん、モニさんにはモニさんなりの考えがあって言ったんだと思う。僕たちの考えは、サンおばさんがこの前モニさんに伝えていたし、僕たちはこれ以上どうしようもない。なら、出来ることはカラの言っていた通りの事なんじゃない?」
レイに言われ、僕は「立派な子供になる事、か」と呟いた。
「あ、漁から大人たちが帰って来たみたいだ」
レイが海の遠くを遠望しながら、僕に言った。
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