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2―12
「これで、よかったのかなぁ?」
 レイが疑問と不安の混じった声を出した。僕も、同じ気持ちだった。
「良いも悪いも、結局は親子の問題だったんだ。ハウさんがレイやカラを嫌うようになったのは、ハウさんの妻が亡くなった春先からだ。そして、ハムの言動が変わったのも春先からだ。それに、巻き込まれる形でユウやカトと二人の両親がいたんだ。もう、僕たちに出来ることは何もない」
 僕はトウさんの言葉を聞き、「それはそうだけど」と呟いてから、「いや、違うよ」と再び口を開いた。
「僕はハムさんもカトもユウも、友達だと思っている。だから、これから何かが起きても、僕はみんなを助けたいと思う。何かあったら、理由を隠したりせずに話し合いたい」
 僕が強い口調で言うと、トウさんが「ははは」と、軽く笑った。
「それって、班長の僕が言うべき言葉だったのに、カラに取られちゃったよ」
 トウさんは苦笑いをしつつ、レイは「僕も、何があっても友達だよ」と口を開いた。
 僕たち三人がそのままゴウさんの家に行くと、家の前でサキさんと秋田から来た人が言い争っていた。いや、はたから見ると、微笑ましく見えた。
「臭いから美味しいのよ」
「臭すぎて食べられなかったら、どうしようもないだろ?」
 その様子を見ていたレイが「あの問題は、解決できそうにないね」と言い、トウさんも「好みの問題だけは、誰にも変えられないさ」と、二人の言い争いを楽し気に眺めていた。
 サキさんは変わったと、僕は思っている。自分の意見を自分で言い、その意見の中心には自分がいる。当たり前の話だが、以前のサキさんは中心にレイがいた。
「レイ、あんな風に言い争っているお姉さんはどう思う?」
 僕が少し茶化しながら聞くと、レイは「結婚相手が苦労しそうだね」と、冗談めかして笑った。

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