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 次の日からも、僕は子供たちと一緒にトウさんを班長として仕事をすることになった。「トウさん、僕たちの村では班長を固定せず、年下の子共にも任せて行ったこともあります。その結果、みなが自分の出来る事を考え、実行するようになりました」
「なるほど。でも、それだと僕に遠慮したり、顔を窺う子供もいるかもしれないぞ?」
「なら、トウさんは別に大人の仕事を経験していればいいと思いますよ。班長は一人ではなくて二人でもいいですし、最初の内は村から離れない場所で仕事をして、いつでも大人たちに助けを求められる所にいればいいと思います」
 僕の言葉にトウさんは頷き、「大人たちと話し合ってくる」と言った。僕がトウさんと話している間、ハムさんの視線が気になったけれど、気にしないことにした。僕はハムさんの考えにも、リウさんらの考えにも反対だったからだ。
 トウさんたちが子供の仕事をしている間に、僕はグエさんと約束した船に乗っての漁を手伝う事になった。
「網の投げ方が、難しいですね」
 僕は広がらず水面に落ちてしまった網を見つつ、残念そうに言った。
「そうだ。地面で使うのと違って、船の上では身体が揺れるんだ。俺も慣れるのに苦労したもんだ。ただ、慎重にやるよりも思いっきり投げた方が上手くいくぞ?」
 グエさんに言われ、僕は思いっきり網を放り投げてみた。
「お。広がったな」
 ゴウさんが声をあげたが、僕の投げた網はそのまま海に落ち、僕は手ぶらだった。
「ま、こういう時もあるさ」
 グエさんは苦笑しつつ、櫂で僕の投げ落してしまった網を回収してくれた。

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