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4―10
 三内には、太陽が海に沈む前に着いた。僕の腕はパンパンに膨れ上がっており、まるで二つの棒が、肩からぶら下がっている様な感覚だった。
「籠なら背負えるか?」
 ゴウさんに心配されつつ、僕は腕に紐を無理やり通す様な格好で籠を担いだ。この籠の中には、ミイなどの女の子が造った、小さな装飾品が入っている。
「去年、カラは三内に来ていなかったんだろ。何か、変わった物はあるか?」
 マクさんに尋ねられたけれど、一昨年と同じように、人だらけであった。
「変わっていません。本当に、何処からこんなに人が来るんでしょうか?」
 僕は腕を垂らしながら宿泊所に向かいつつ、マクさんに言った。
「そうだよな。それに、どうしてみんな同じ言葉を話せるんだろうな」
 マクさんの言葉に、僕も不思議に思った。 
「そうですよね。宿泊所で耳をすました事がありますけど、全く意味の分からない言葉を使っている人はいないように思えました」
 僕たちは荷を持ちつつ、宿泊所に入った。
 宿泊所の中も相変わらず人だらけで、容姿の異なる人たちで溢れていた。
「うーん。カラの言う通り、だいたい何を言っているのかわかるな」
荷物を降ろしながら、トウさんが言った。
「ちょっと、何処から何処まで人が来ているのか、三内を管理している人に尋ねて来てもいいですか?」
 僕がゴウさんに尋ねると、ゴウさんからは「腕は大丈夫なのか?」と心配されたが、僕は「足と耳と口は大丈夫です」と言い、この場を離れる許可を貰った。
「僕も一緒に行っていいか?」
 来年大人になるというトウさんも加わり、僕たちはハキさんを探すことにした。
「ハキさんって、どんな見た目の人だ?」 
 トウさんに尋ねられ、僕はハキさんの容姿を思い出そうとした。
「えーと、普通の人?」
「普通って、何だよ?」
 僕の曖昧な言葉に苦笑しつつ、トウさんが宿泊所の入り口にいた人に話しかけた。
「ハキか。祭壇の修理に行っているぞ」
 尋ねた人はハキさんと同じ村の人であったため、すぐにハキさんの居場所がわかった。
「祭壇って、海が見える丘にあるんだよな?」
 僕はトウさんの言葉に頷きつつ、二人で祭壇に向かった。

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