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カラSide 4-9

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カラSide
 4―9
 僕は是川の村が見えなくなるまで、大きな声で歌った。
「カラ、海風でのどを痛めるなよ?」
 グエさんから注意され、僕は口を閉じた。すると、自然と目から涙が流れてきた。
「今なら、引き返せるぞ?」
 僕はグエさんの言葉に「大丈夫です」と、自信を持ったような口ぶりで答えた。
「途中で三内を経由するんですよね?」
 僕は話題を変え、自分が泣いている事を、これ以上追及されないようにした。
「そうだな。さすがに一日中、夜中も船を漕ぎ続けることは出来ないな。それに、カラの村の装飾品が、他の村の人に気にいるかどうかも見極めないと駄目だからな」
 是川の村から出た船には、ほとんど食料品はなく、多くは是川や久慈村で造られた装飾品で占められている。
「入江に来たら、カラも釣りだけじゃなくて、丸木舟に乗って漁の手伝いをしてもらう事になる。たまに、海が荒れることがあるし、今の内から櫂の漕ぎ方を練習した方が良さそうだな」
グエさんは僕に櫂を渡し、僕は櫂を水中に入れた。すると、櫂は自然と後ろに流れるように、僕の手から逃げ出そうとした。
「しっかり櫂は掴まないと駄目だぞ。是川の海よりも、三内に行くまでの海流は流れが速いんだ。気を抜くと、櫂を持っていかれるぞ?」
僕は手に力を込め、波に逆らうようにして櫂を動かした。
「そうそう、中々上手いじゃないか」
 僕は「ヤンさんから教えてもらっていました」と言った。すると、僕の心の中でヤンさんの怒っている声が聞こえたような気がして、僕は櫂を漕ぐのに集中した。
「おいおい、そんなに気張っていたら、三内に着くまでに疲れ果ててしまうぞ?」
 グエさんに注意されたが、僕は疲れ果てて、何も考えられなくなった方がいいと思いつつ櫂を漕いだ。

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