『潮が満ちたら、会いに行く』

４－５

４―５
 入江から来たと思っていた船には、なんと垣ノ島からの船も一緒であった。
「三内から来た人たちから聞いてあったんだ。渡島から南の村々では、あまり魚が獲れないってな」
 垣ノ島の村人が籠から取り出したのは、多くの魚の干物だった。
「もちろん、交易品との交換だけどな」
 ソンと名乗った垣ノ島の村人は冗談半分、本気半分の様な言葉で僕たちに言った。
「大丈夫です。交易品となる装飾品は、たくさん用意してあります
お父さんは喜びつつ、ソンさんと握手を交わした。
「もう遅いので、交易品の交換は明日にしませんか？」
 ヤンさんが二人に駆け寄り、入江から来た人たちも「疲れました」と言いつつ、船から荷を下ろし始めた。
 僕も荷下ろしを手伝いつつ、誰が入江から来たのかを近くの人に尋ねた。
「今回はグエが船頭で、ああ、いつもここに来ている奴だ。俺が代表のゴウだ。他にはリウとマクに、来年から大人になるトウが主かな」
 ゴウさんの話を聞き、僕は「ゾンさんは来ていないのですか？」と尋ねた。すると、ゴウさんは顔が陰り「ゾンは去年、海から帰ってこなかった」と言い、そのまま荷物を小屋に置きに行った。
 一人残された僕は、『サキさんとレイはどうなったんだろう』という気持ちで一杯になった。
「カラ、早く運んでやりなさい」
お父さんに促され、僕は荷を小屋まで運び、小屋から出ると「今日はもう遅いから、明日の昼頃に交易品の交換を行う。酒宴は、帰る前日の夜に行おう」と、言われた。
 僕は今すぐにでもサキさんとレイの事を知りたかったが、入江から来た人たちは疲れている様で、案内した家からはすでにいびき声が聞こえていた。