『潮が満ちたら、会いに行く』

古代の誇大妄想家

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カラSide 4-1

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カラSide
 4―1
 大人の儀式が終わった次の日の夜、再び会議が開かれた。その中に、ジンさんとザシさんの姿が無かった。
「皆も聞いているだろうが、ジンとザシが久慈村付近の木の実の生る木などを維持・管理する事になった。突然かもしれないが、これは以前からある程度決まっていたんだが、久慈村では魚があまり獲れず、貯蔵も秋までしかないそうだ。それでジンとザシが、今年の秋には確実に木の実が生るように手伝う事になった」
 お父さんの言う通り、ザシさんの提案で久慈村付近の、今まで放置されていたドングリや栗の木の維持・管理を共同で行うことが決まっていた。
 しかし、この村から二人が当分いなくなるとは誰も考えていなかった。
「二人がいない事で、この村の大人が減り、こちらも食料不足にならないのでしょうか?」
 皆が心配する中、ナホさんが皆の一番聞きたいだろうことを発言した。
「それに関しては大丈夫だ。この村の食料の貯蔵は前回言った通りだ。そして、この村から二ツ森に行った時に同行したバクと言う、知っている人もいるだろう久慈村の酋長の息子らが再び二ツ森に行き、情報を得てきた。それによると、三内では魚が豊富に獲れ、渡島でも獲れている様だ。ただ、獲れる魚の種類が、いつもより時期が早いそうだ。三内の人によると、海が温かいとそうなるらしいんだが、詳しい事は俺にもよくわからない」
 お父さんはそこまで言ってから頭を掻き、皆を見渡した。
「えっと、一ついいでしょうか?」
声を出したのはヨウだった。
「僕の勘違いかもしれませんが、海鳥が南から北の方に飛んでいっています。たぶん、魚を追って、北の方に行っているのかもしれません」
 ヨウの発言に、数人の大人たちが「それなら説明がつくな」と、囁き合った。
海鳥の中には、魚の回遊に合わせて移動する種類もいる。ヨウが見たのがそれだとしたら、南の方で獲れる魚が北で獲れるという事態に説明がつくことになる。
「ヨウの言う通りかもな。ただ、いつ海の温かさや冷たさが変わるかはわからないそうだ。少なくとも、魚が獲れず、飢饉になるという事態は避けられると、俺は考えている」
 お父さんが言い終えると、続いてウドさんが声をあげた。
「俺とシキさんが山を見ましたが、今年は毛虫が大量に発生していました。その結果、毛虫が食べた葉を食べる小動物が北に逃げ、その小動物を食べる獲物も北に逃げているようです」
「ドングリ、栗の木、みな葉っぱが食べられてる」
 ウドさんに続き、シキさんも発言した。僕はシキさんの発言で、お父さんがどのような態度をとるか注目したけれど、特段変わりはなかった。
「秋の食料不足については、他の村も同様に危惧していた。良い情報となるかはわからないが、北の方では食料が豊富だということがわかっている」
「つまり、ここから北の方にある村との装飾品と食料の交換、という事になるのでしょうか?」
 ミイが小さな声だが、透き通るような声でお父さんに尋ねた。
「そういう事になる。久慈村に装飾品の材料となる貝殻などを渡すのと同時に、誰か装飾品造りに詳しい人を送りたい。誰か、やりたい人はいないか?」
 お父さんの問いかけに、真っ先にナホさんが手を挙げた。
「ナホ。当分久慈村を中心にして、他の村の女性たちと装飾品造りについて教え合い、造る事になるが、一人で大丈夫か?」
 お父さんが心配そうな声を出したが、もう一人手を挙げた女性がいた。
「私も行きますよ」
 エンさんが手を挙げたことによって、交易に使う装飾品造りの担当が決まった。
「二人には久慈村で、他の村の女性たちと装飾品造りを共同で行ってもらう。もちろん、この村でも独自に装飾品を造る事には変わりはないが、誰か中心となってくれる人はいないか?」
 お父さんの言葉が終わるか終わらないかの内に手を挙げたのは、お母さんだった。お父さんはお母さんを一目見て「決まりでいいな?」と言い、皆を見渡した。誰も反対の声をあげなかった。
「しかし、土器造りをする人が減ってしまいますよ?」
 ガイさんが声をあげ、妻のケイさんも少し不安そうな顔つきだった。
「それなら、漁に出る大人たちが代わりにやればええ。魚が獲れなさそうな時は村にすぐ帰り、造る事にしよう」
 ガンさんが声をあげ、じっと大人の男性たちを見渡した。
「もしかして、造り方を忘れた者がおるんじゃなかろうな?」
 ガンさんの冗談半分の声に、「大丈夫ですよ」と、少し声を引きつらせて答えた大人もいた。
「僕たち男の子供は、どうすればいいでしょうか?」
 僕がお父さんに声をかけると、お父さんは「いつも通りの仕事でいいが、いつもと違うところが少しでも見つかったら報告してくれ」と、僕にとって肩透かしな事を言った。
そんな僕の表情を察したのか、ウドさんが「海鳥を見て、獣を探し、山菜や木の実を付ける木を観察する事も重要な仕事だ」と囁いてきた。
「それはわかっていますけど」 
 僕は少し煮え切らない心持の中で、会議は終了した。

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