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第6部 カラSIDE 1―1
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第6部
カラSIDE
1―1
雪解けとともに、また暖かな日差しが村に差し込むようになった。そして、僕が子供の中で一番年上になった。
キドさんとコシさんが大人となり、子供の数は僕も含めて7人になった。去年7歳になった子供のうち、一人が冬の間に亡くなってしまった。7歳まで生きて亡くなるのは、少し珍しいと言えた。
僕が7歳になってから、子どもが亡くなったのは一人だけだった。食料も十分にある冬、僕たちは子供が死ぬ事は少ないだろうと考えていた。
それが油断だったのだろうか、僕たちの間には精神的な打撃を受けている子供が多数で、僕も少なからず落ち込んでいた。
「カラ、お前がこれから子供たちを引っ張って行くんだ。ただ、一人で抱え込まないようにするんだぞ」
亡くなった子供を再埋葬する時に、お兄ちゃんから言われた。お兄ちゃんも班長の時に、このような経験をしてきたのだろう。
誰よりも精神的に打撃を受けていたのは、去年から7歳になったズイとオクだった。再埋葬する時にも「まだ腐ってないから、生きているよ」と言い、亡くなった事を信じられない、信じたくない気持ちが現れていた。
今年、僕は12歳だった。僕の年上として、子供たちを引っ張ってくれる人がいなかった。
「別に、班長をカラ一人でやる必要もないし、二班に分ける必要もない。一つの班で、全員の目が届く範囲内で仕事をすればいいんじゃないか?」
お兄ちゃんから助言を受け、僕は子供たちと話し合った。特に反対意見も出ず、一つの班で仕事を行う事に決定した。
「でも、カラさんは色々な事がしたいんですよね?」
ヨウから尋ねられ、僕は「仕方ないさ」と答えた。
昨年から、久慈村近くの栗の木とドングリの木の維持・管理はウドさんとザシさんが率先して行った。二ツ森にはお兄ちゃんとホウさんが行き来し、魚の削り節と白い石を交換し、交流を深めた。他の村にも海岸沿いにヤンさんやロウさんが行き来し、是川で採れた交易品の原料となる貝殻や、二ツ森で得た白い石を渡した。現在、大人たちの手によって、村同士の交流が深まっているといっていい状態だった。
「子供の歳が下の子が多いと、あまり遠出も出来ませんし、磯部での貝や魚獲りか、山近くで山菜採りをしますか?」
ヨウの言うとおり、僕たちだけでは力不足という点を否めなかった。今までは年上の子供がいたおかげで、僕たちは安心して仕事をする事が出来たのだ。
問題なのは、外に出るのを恐がっている子がいる事だ。特に今年8歳になった、ズイとオクだ。二人は冬の間、同い年の子供が目の目で亡くなるのを見たらしい。
二人が必死に看病していても、助からなかったという現実が重くのしかかり、二人を臆病にさせていた。
僕は二人の恐がっている事の、無意味さを教える必要があると思った。少なくとも、病気になる時にはある程度の前兆があると、僕は考えている。早めの処置で、救える命もあるからだ。
例えば、だるかったり、食欲が無かったりする時だ。家族間だと顔を見ただけでわかる様だ。僕のお母さんも、僕の顔色が悪いと言った次の日に、僕は体調を崩す事が多い。お母さんはそれを見越して、精の付く物を事前にお父さんから持ってきてもらう様に頼んである。
僕も、一目見ただけで病気の前兆が分かるようになればいいと思った。毎朝子供たちの顔を見つめ、病気の前兆を確かめ、僕たち年上の子どもが見ていれば、子供の仕事をしていても安全だと言えるようになればいいと考えた。
カラSIDE
1―1
雪解けとともに、また暖かな日差しが村に差し込むようになった。そして、僕が子供の中で一番年上になった。
キドさんとコシさんが大人となり、子供の数は僕も含めて7人になった。去年7歳になった子供のうち、一人が冬の間に亡くなってしまった。7歳まで生きて亡くなるのは、少し珍しいと言えた。
僕が7歳になってから、子どもが亡くなったのは一人だけだった。食料も十分にある冬、僕たちは子供が死ぬ事は少ないだろうと考えていた。
それが油断だったのだろうか、僕たちの間には精神的な打撃を受けている子供が多数で、僕も少なからず落ち込んでいた。
「カラ、お前がこれから子供たちを引っ張って行くんだ。ただ、一人で抱え込まないようにするんだぞ」
亡くなった子供を再埋葬する時に、お兄ちゃんから言われた。お兄ちゃんも班長の時に、このような経験をしてきたのだろう。
誰よりも精神的に打撃を受けていたのは、去年から7歳になったズイとオクだった。再埋葬する時にも「まだ腐ってないから、生きているよ」と言い、亡くなった事を信じられない、信じたくない気持ちが現れていた。
今年、僕は12歳だった。僕の年上として、子供たちを引っ張ってくれる人がいなかった。
「別に、班長をカラ一人でやる必要もないし、二班に分ける必要もない。一つの班で、全員の目が届く範囲内で仕事をすればいいんじゃないか?」
お兄ちゃんから助言を受け、僕は子供たちと話し合った。特に反対意見も出ず、一つの班で仕事を行う事に決定した。
「でも、カラさんは色々な事がしたいんですよね?」
ヨウから尋ねられ、僕は「仕方ないさ」と答えた。
昨年から、久慈村近くの栗の木とドングリの木の維持・管理はウドさんとザシさんが率先して行った。二ツ森にはお兄ちゃんとホウさんが行き来し、魚の削り節と白い石を交換し、交流を深めた。他の村にも海岸沿いにヤンさんやロウさんが行き来し、是川で採れた交易品の原料となる貝殻や、二ツ森で得た白い石を渡した。現在、大人たちの手によって、村同士の交流が深まっているといっていい状態だった。
「子供の歳が下の子が多いと、あまり遠出も出来ませんし、磯部での貝や魚獲りか、山近くで山菜採りをしますか?」
ヨウの言うとおり、僕たちだけでは力不足という点を否めなかった。今までは年上の子供がいたおかげで、僕たちは安心して仕事をする事が出来たのだ。
問題なのは、外に出るのを恐がっている子がいる事だ。特に今年8歳になった、ズイとオクだ。二人は冬の間、同い年の子供が目の目で亡くなるのを見たらしい。
二人が必死に看病していても、助からなかったという現実が重くのしかかり、二人を臆病にさせていた。
僕は二人の恐がっている事の、無意味さを教える必要があると思った。少なくとも、病気になる時にはある程度の前兆があると、僕は考えている。早めの処置で、救える命もあるからだ。
例えば、だるかったり、食欲が無かったりする時だ。家族間だと顔を見ただけでわかる様だ。僕のお母さんも、僕の顔色が悪いと言った次の日に、僕は体調を崩す事が多い。お母さんはそれを見越して、精の付く物を事前にお父さんから持ってきてもらう様に頼んである。
僕も、一目見ただけで病気の前兆が分かるようになればいいと思った。毎朝子供たちの顔を見つめ、病気の前兆を確かめ、僕たち年上の子どもが見ていれば、子供の仕事をしていても安全だと言えるようになればいいと考えた。
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