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 次の日の朝、お母さんはいつも通りに朝食の準備をしていた。僕とお兄ちゃん、お父さんは昨日の夜、ずっと四人で話し合っていたはずなのに、どうしてお母さんだけ寝不足になっていないんだろうと不思議に思った。
「カラ、適当に大きめの貝を採ってきてくれるかしら」
「わかった」
 僕は家を飛び出し、昨日よりも涼しい朝の風を浴びつつ砂浜に向かった。砂浜には、ガイさんがいた。
「おはようございます」
 僕が挨拶をすると、ガイさんも「おはよう」と返してきた。
「昨日、夜遅くまで灯が見えていたけど何かあったのか?」
 僕は見られていたのかという思いと、今の自分が抱いている感情を誰かに理解してほしいという思いがあり、思い切って昨日の夜の話をガイさんに話してみた。
「なるほど、男は馬鹿か。うん、確かにそうかもしれないな」
 ガイさんは何かを思い出すような仕草をしながら、僕に言った。
「何か思い当たる事とかあるんですか?」
「そうだなぁ。俺の場合は、何となく見栄をはっちゃう事があったな。お腹が空いているのに『俺は腹が減っていないから、お腹の子の分まで食べてくれ』って、イケが産まれる前に言っていたな」
「それで、どうなったんですか?」
僕の問いかけに、ガイさんは少し恥ずかしそうにしながら「すぐにバレたさ」と答えた。
「ケイから『あなたが死んじゃったら、泣くのは私だけじゃないのよ』って怒られたよ」
「イケの妹の、イサちゃんが産まれる時はどうだったんですか?」
「前回の反省を生かして、俺は素直に『お腹が空きました』って言ったよ」
 ガイさんは笑いながら砂を掘り、貝を掘り出した。
「どうして男は馬鹿なんでしょうね」
 僕は自分の事を、少し棚に上げつつ尋ねてみた。
「さあね、でもそれが必要だからだと思うよ」
「必要だからって、どういう事ですか?」
 ガイさんは二つの貝を手に取り、持っていた小さな石刀で割った。同じ種類の貝なのに、中身は少しばかり異なっていた。
「こっちがオスで、こっちがメスだ。植物は分からないけど、獣や魚、貝にもオスとメスがある。その理由は分からないけど、数を増やす上では、オスとメスが無い方が簡単だと思わないか?」
 ガイさんに言われ、わかった様な、わからないような気もした。
「オスとメスが出会わなければ、子供は産まれない。なら、オスとメスが無く子供を産むことが出来れば、簡単に数は増えるんじゃないか。そうならない理由が何かあって、男は馬鹿なんじゃないかな?」
ガイさんもよくわかっていないような口ぶりで話を終え、割った貝を籠に入れて帰っていった。
「男は馬鹿か。じゃあ、女の人はどうなんだろう?」
 僕は呟きつつも、これは女の人には聞いちゃいけないという、本能的な何かが頭の中で鳴り響いていた。

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