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カラSIDE 2―3
しおりを挟むカラSIDE
2―3
僕は何となしに、浜辺をぶらついた。ダロからのよだれを海で洗い流し、風が濡れている身体を冷たくした。頭も冷えればいいのにと、僕は思った。
「カラ、さっきダロが機嫌よく歩いていたけど、何かあったのか?」
いつの間にか、貝を獲っているキドさんとコシさんと出会った。
「うん、顔中を舐められた」
「なるほど。ダロは顔を舐めるのが好きだからな」
キドさんは笑いながら僕の顔を撫で、「もうべたついてないな」と言った。
「カラ、何かあったの。ダロは自分から舐めまわす時もあるけど、何か悩んだりしている人の顔を舐めたりもするよ?」
コシさんが心配そうに、僕の顔を覗き込んだ。
「何でもないです」
僕が答えると、キドさんは「嘘つけ」と言い、僕を後ろから羽交い絞めにした。結局、僕は先ほどまでお父さんとお母さんから、男女の営みについて聞かされた事を話した。
「そうか。僕も初めは驚いたけど、コシは知っていたんだよな」
「え、そうなんですか。誰から聞いたんですか?」
僕が詰め寄るように尋ねると、コシさんは顔を赤くした。
「えーと、夜中におしっこしに外に出たら、見ちゃったんだ」
コシさんはその時の事を思い出したのか、さらに顔を赤くした。
「誰だったんですか?」
僕がさらに追及すると、キドさんが「それ以上は聞かないでやってやれ」と、僕を諌めた。たぶん、聞いてはまずい何かなのだろう。
「僕は結婚すれば、子供が勝手に出来るって思っていました」
僕が正直に言うと、コシさんは「僕も」と言い、キドさんは「僕は獣が何か変な事やっているなって見た事があって、父さんと母さんから聞いたら納得したな」と言った。
「キドさんとコシさんって、結婚について考えた事がありますか?」
僕が尋ねると、二人とも「あんまりない」と答えた。
「いつかはする事になると思う。でも、どうやったら結婚できるかもよくわからないよね」
コシさんが苦笑しながら言った。
「こう言う時って、誰に聞けばいいんだろうな。父さんや母さんには何となく聞き辛いし。他の大人たちにも聞き辛い。ジンさんかイバさんが結婚していたら、聞けたかもしれないなぁ」
キドさんの言葉に、僕たちは頷いた。
「何を話しているんですかー?」
砂浜で話している僕たちを見つけたのか、ヨウとイケが駆け寄って来た。
「何かやるんですか?」
ヨウが期待を込めた目で、僕たちを見てきた。
「ヨウやイケには、まだ早いよな」
キドさんの言葉に僕たちが頷くと、イケは「ヨウさんが速すぎるって事ですか?」と、ヨウを見ながら文句を言った。
「泳ぐ速さじゃないよ」
僕は喧嘩になりそうな二人を引き離しつつ、明日は何処で、何をしようかの相談をする事にした。
大人になれば、やらないといけない事が増えて、自分のやりたい事が出来なくなる。結婚すれば、もっと出来なくなるだろうと、僕は考えている。
だからこそ、今のうちからやりたい事をやっておきたい。ずっと、子供のままでいるわけにはいかないのだから。
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