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 三内には、太陽が海に沈む少し前に着いた。
「え、こんなに人っているの?」
 ナホさんが、僕らここに来た子供が言った事と同じ呟きをもらした。
「海の魚がいなくなったりしないのか?」
 キドさんも、同じような呟きを漏らした。
 僕は二人に、自分の経験と眼前の光景を話しつつ、大人らと一緒に宿泊所へと向かった。
 宿泊所は去年と変わりなく、大勢の人間で敷詰めあっていた。
「私たちと、何だか皮膚の色が違う人たちがいるわ。変な装飾品を付けている人もいるし」
 ナホさんの目線の先には、入れ墨をした人や、巨大な耳飾りをした女性たちの姿があった。
「よく見ておくんだ。自分たちが使う物だけが、交易品となる装飾品になるとは限らないんだ」
 お父さんがナホさんに話しかけている。お父さんは西から来た人や、さらに南から来た人たちの体つきや、装飾品の説明をしていた。
「食べるものも、僕たちとは違うのか?」
「うーん、獲れる獣や魚の種類は違っても、僕たちが食べない物を食べるって所は無いみたいです。僕たちの持ってきた交易品の漆を食べる人はいませんし、貝の殻を食べる人も、僕の知る限りはいません」
 僕の説明にキドさんは「それは、どうやっても食べられないだろう?」と言いつつも、どこか上の空だ。
「あのドロドロした臭いものってのは、ここでも食べられるのか?」
「以前、三内を管理している人に尋ねましたが、村ごとに好き嫌いがあって、食べない所の方が多いらしいです」
 僕たちは大勢の人がいる中、どこから来た人たちなのかを予想し合った。
「でも、手足が多かったりする人はいないんだな。肌の色とか髪の毛とか、装飾品は違っても、みんな同じ人間なんだな」
 キドさんは何気なく言ったようだけど、僕はその事を意識した事は無かった。人間はみな手が二本で足も二本で、頭は一つと思っていた。
「管理人の人たちに、聞いてみようかな」
 僕が呟くと、キドさんは「そういう人たちとも、仲良くしたいのか?」と、少し気味悪げに尋ねてきた。どうやらキドさんは、僕が頭の二つある様な人と仲良くなりたがっていると勘違いしたようだ。それでも、僕は「まずは、話しあってみないと」と言った。
 僕自身、手足がタコみたいに多くある人と仲良く出来る自信は無かったし、最初は気味が悪いと感じてしまうかもしれない。だけど、まずは話しあってみないとだめだと考えている。

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