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数日後、大人らの会議内容は二ツ森との交流の事と、これからの周辺の村との交流、女性を三内や入江に同行させることなど多岐にわたっていた。
「問題は、入江に誰が行くかだな」
入江に行きたいという子供の数は多く、最初に発案したナホさんは確定として、他の女性や子供は「自分も行きたい」と、先を争う様に大人たちに言った。
「僕は行きたい。レイに謝らないといけないし、僕は何のために頑張るのか自分で考えて、自分の中で答えを出したいんだ」
僕の発言に、大人らは僕の言いたい事がわからなそうな顔をしていたけど、事情を知っているお兄ちゃんが「俺からもお願いします。カラは俺たちとは違って、自分から大人になろうとしているんです」と言ってくれた。
誰でも、15歳になれば大人になる。僕は自分のしようとしている事が『大人になる』事につながるのかは分からなかった。けれど、お兄ちゃんは僕の事を考えてくれて、キドさんも他の子供たちに「今回だけは、カラに譲ってやってくれ」と言ってくれた。キドさんもまだ、入江に行った事がないのにもかかわらず、僕に譲ってくれたのだ。
「お願いします」
僕は他の大人たち、子供たちに向かって言った。
僕は入江に行きたい。好奇心や対抗心でもなく、『自分自身のため』という自分勝手な我儘かもしれなかった。
「どうしても、行きたいのか?」
お父さんの声色は、何だか恐いものであった。僕だけが、三年連続で三内や入江へと行っているからだ。僕だけを優遇させる事は、酋長という立場上難しいだろう。
「僕は今まで、自分がどうして生きてきたのか、どう生きていきたいのか考えてきませんでした。そして、自分勝手な考えで生きてきました。でも、それだとだめだって気がついて、僕はこのままだと『責任』を持てないんです。僕は『責任』を自分から負うために、
『覚悟』を持つために、入江に行きたいんです」
冬にキノジイから聞かれた『覚悟があるのか』という言葉を思い出し、ようやく僕は分かった気がした。
僕に足りない物。それは、自分自身が『生きる』という事だ。誰かのために生きたり頑張ったりするのではない。自分のために生きて、頑張り、その責任を取る覚悟が、僕には足りなかったのだ。
僕はレイに対して、自分勝手な思い込みを自分自身に重ね、何のために頑張るのか考えずに生きてきた。それではだめなのだ。どのような考え方が、答えとして正しいのかは分からない。だからこそ、僕は入江に行かなければならないのだ。
「お願いします」
僕は再び、村のみんなに頼んだ。そして、お父さんは「わかった」と、短く答えた。
僕の必死の言葉で、誰も反対する人はいなかった。
それから他に、どの子供を連れていくかの議題に移った。マオとカオは「二人で行きたい」と言い、自分たちから辞退した。
「だって、まだ上手く泳げないんだもん」
「ヨウさんみたいに、泳げるようになったら行くよ」
そして、コシさんが「キドが行きなよ。本当は行きたくてウズウズしているんだから」と言い、キドさんは「カラに譲るって言っただろ」と言うものも、ヨウは「僕は、マオとカオの二人の泳ぎの特訓に付き合うから」と辞退し、イケからも「行ってください。楽しい所ですよ」と言われ、最終的に「みんながそう言うなら」と、喜色を隠せない顔で答えた。
「じゃあ、子供はキドとカラ、そしてナホの三人で行くぞ。ナホは船に乗るのは初めてだろうから、まず俺たちと一緒に船に乗って、身体が持つか確認してからにするぞ」
お父さんの発言に、ナホさんは「船くらい大丈夫よ」と、明るい声で言った。
数日後、大人らの会議内容は二ツ森との交流の事と、これからの周辺の村との交流、女性を三内や入江に同行させることなど多岐にわたっていた。
「問題は、入江に誰が行くかだな」
入江に行きたいという子供の数は多く、最初に発案したナホさんは確定として、他の女性や子供は「自分も行きたい」と、先を争う様に大人たちに言った。
「僕は行きたい。レイに謝らないといけないし、僕は何のために頑張るのか自分で考えて、自分の中で答えを出したいんだ」
僕の発言に、大人らは僕の言いたい事がわからなそうな顔をしていたけど、事情を知っているお兄ちゃんが「俺からもお願いします。カラは俺たちとは違って、自分から大人になろうとしているんです」と言ってくれた。
誰でも、15歳になれば大人になる。僕は自分のしようとしている事が『大人になる』事につながるのかは分からなかった。けれど、お兄ちゃんは僕の事を考えてくれて、キドさんも他の子供たちに「今回だけは、カラに譲ってやってくれ」と言ってくれた。キドさんもまだ、入江に行った事がないのにもかかわらず、僕に譲ってくれたのだ。
「お願いします」
僕は他の大人たち、子供たちに向かって言った。
僕は入江に行きたい。好奇心や対抗心でもなく、『自分自身のため』という自分勝手な我儘かもしれなかった。
「どうしても、行きたいのか?」
お父さんの声色は、何だか恐いものであった。僕だけが、三年連続で三内や入江へと行っているからだ。僕だけを優遇させる事は、酋長という立場上難しいだろう。
「僕は今まで、自分がどうして生きてきたのか、どう生きていきたいのか考えてきませんでした。そして、自分勝手な考えで生きてきました。でも、それだとだめだって気がついて、僕はこのままだと『責任』を持てないんです。僕は『責任』を自分から負うために、
『覚悟』を持つために、入江に行きたいんです」
冬にキノジイから聞かれた『覚悟があるのか』という言葉を思い出し、ようやく僕は分かった気がした。
僕に足りない物。それは、自分自身が『生きる』という事だ。誰かのために生きたり頑張ったりするのではない。自分のために生きて、頑張り、その責任を取る覚悟が、僕には足りなかったのだ。
僕はレイに対して、自分勝手な思い込みを自分自身に重ね、何のために頑張るのか考えずに生きてきた。それではだめなのだ。どのような考え方が、答えとして正しいのかは分からない。だからこそ、僕は入江に行かなければならないのだ。
「お願いします」
僕は再び、村のみんなに頼んだ。そして、お父さんは「わかった」と、短く答えた。
僕の必死の言葉で、誰も反対する人はいなかった。
それから他に、どの子供を連れていくかの議題に移った。マオとカオは「二人で行きたい」と言い、自分たちから辞退した。
「だって、まだ上手く泳げないんだもん」
「ヨウさんみたいに、泳げるようになったら行くよ」
そして、コシさんが「キドが行きなよ。本当は行きたくてウズウズしているんだから」と言い、キドさんは「カラに譲るって言っただろ」と言うものも、ヨウは「僕は、マオとカオの二人の泳ぎの特訓に付き合うから」と辞退し、イケからも「行ってください。楽しい所ですよ」と言われ、最終的に「みんながそう言うなら」と、喜色を隠せない顔で答えた。
「じゃあ、子供はキドとカラ、そしてナホの三人で行くぞ。ナホは船に乗るのは初めてだろうから、まず俺たちと一緒に船に乗って、身体が持つか確認してからにするぞ」
お父さんの発言に、ナホさんは「船くらい大丈夫よ」と、明るい声で言った。
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