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 二人は二ツ森の住人で、今年は海の近くに住んでいるとのことだった。
「ほら、ここが湖だって言ったじゃないですか」
 女の子たちに二ツ森の村まで案内してもらった僕たちの中で、バクさんが真っ先に口を開いた。
「ほっほっほ、ここの湖をよく知らん者からすれば、ここは湖ではなく海に見えるかもしれんのう」
 この村の酋長が笑いながら、バクさんの肩を叩いた。僕たちがあまりにも疑い、かつ喧嘩腰になっていたと、先ほどの女の子たちが報告したようで、酋長はこの辺りの地形について説明した。
「この辺りは、潮が満ちると湖はしょっぱくなって、潮が引くとしょっぱくなくなるんじゃ。山の方に行けば、完全にしょっぱくなくなる湖じゃ。ところで、お前さんは何処かで会った事がある気がするのう?」
 二ツ森の酋長が、バクさんの顔を見ながら言った。
「そうです。以前、助けていただいたバクです」
 バクさんが礼儀を正して言うと、村の人たちが笑いだした。
「ああ、思い出したぞ。三内から山を越えてきて、途中で喉が渇いて動けなくなった者か。この村に運ぶと『水がたくさんある』と叫んで、湖の水を飲み干さんとばかりに飲みこんで、飲み過ぎて寝込んだ者の名がバクだったが、元気にしておったか。今回はちゃんと、水を持ってきておるか?」
 バクさんは今思い出したかのように、顔を赤くした。
「こんなやつに、俺たちは先頭を任せていたのか」
 ホウさんが力無く呟いた。僕も含め、たぶん皆が同じ気持ちだっただろう。
「いやいや、そんな事は無いぞ。こやつがおらんかったら、お主らが二ツ森に来る事は無かった。ワシらも長年、この湖のそばで暮しておったから、他の村の事をほとんど知らず、この男から多くの事を聞き、様々な物事を学んだんじゃ」
 酋長は本心で言っているように見え、ウドさんとホウさんはようやく、怒りの矛先を治めた。
「ところで、この村にどんな用件があって来たんじゃ?」
 酋長の言葉に「俺から話します」と、お兄ちゃんが声をあげた。
 お兄ちゃんが説明をしている間、僕は周りにいる人たちを見た。僕たちよりも分厚い植物の繊維で作った服を着ており、毛皮を付けている人はほとんどいなかった。土器類は装飾がほとんどなく、入江よりも北の人たちが使うと聞いている、円筒型のものだった。
「なるほど。この村と交易ではなく、ひとまず『挨拶』といったところかな?」
「はい。俺たちも、まだ知らない村々がたくさんあります。互いに助け合っていくために、多くの村と親交を深めたいのです」
 お兄ちゃんが酋長と話し、酋長は「よかろう」と言い、即決した。
「驚く事ではない。ワシらもこの湖だけで生活する事は、同じ事の繰り返しではないかという若い者の意見も出てきた所じゃ。ワシらは長く山の神と共にあったが、海の神とも共に生きる時が来たのかもしれん」
 二ツ森の酋長は満足げに言い、お兄ちゃんと固い握手を交わした。
 こうして、僕たちは二ツ森の村との交流をする事となった。

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