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カラSide 5-1
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カラSIDE
5―1
サキさんの勾玉に影響されたのか、ナホさんたち女の子も精力的に、装飾品造りに励むようになった。その代り、小さな子供たちが退屈そうになり、僕や去年まで小さな子供だったマオとカオが、代わる代わる子守りをするようになった。
「石を割ったら石が出来て」
「その石を割ったらもっと小さな石が出来て」
「最後は何も無くなりましたー」
二人はレイがやったというように、脆い石を割って石器を造ろうとしているようだ。だけど、割った石から出てくるのは脆い石ばかりで、固い部分が出てくる事は無かった。レイが使った石は、入江でしかとれない石なのだろうか。
小さな子供たちも脆い石なので簡単に割る事ができ、遊ぶようにして石を割っている。
「おかしいなぁ」
「おかしいよねぇ」
マオとカオは割り過ぎて、砂の様になっている石を摘まみながら言い合っている。僕は木を倒した時にとれた、白い石を磨いている。
レイに、新しい石器を見せるためだ。
「カラさん、その石何処かに無いかな」
「海の中にも無かったって、ヨウさんが言っていたよ」
「え、ヨウが海の中で石を探していたの?」
僕が二人に尋ねると、二人は「うん」と頷いた。
ヨウは入江に行き、湖に入って泳いだ後から一段と、泳ぐのが上手になった。
「湖はなんだかよく沈みますけど、海はあまり沈みません。むしろ、潜りにくいです」
ヨウは、ヤンさんから海の潜り方を習い始めており、僕は回想にふけった。
「海にはみんなの魂があって、僕たちを溺れさせないように守っているから、潜りにくいんじゃないでしょうか?」
イケの独特な意見に、ヤンさんは首をひねった。
「そうかもしれないな。魚も自由に海の中を動き回れるんだ。みんなが溺れないように、人間たちの魂が海の中で、俺たちを溺れさせないようにしているのかもな」
ヤンさんがイケの言葉に頷いていると、ヨウは「じゃあ、どうして貝は砂の中に潜っているんでしょうか?」と、ヤンさんに続けざまに尋ねた。
「えーと、どうしてだろうな?」
ヤンさんは答えに窮し、イケも「そういえば、そうですね」と、考え込む仕草をした。
僕も考え込んでいた時、ウドさんとイバさんが山から帰ってきて、僕たちの所にやって来た。
「ウドはどう思う?」
ヤンさんはヨウの疑問を、そのままウドさんに尋ねた。
「なんだそんなことか。そんなの、魂が冬眠しているからだろ?」
ウドさんは、さも当たり前の様に答えた。
「どういう事ですか?」
ヨウがウドさんに尋ねた。
「動物も植物も、冬には土の中で冬眠するだろ。貝には海に還った魂が一時的に冬眠しているから、砂の中にいるんだ」
ウドさんの言葉に、ヤンさんとヨウは「なるほど」と頷いた。
「ウドさん、それってガンさんが言っていた事じゃーー」
イバさんの言葉を遮るように、ウドさんはイバさんの肩を抱いて村に帰っていった。
僕はそんなことがあったなと回想を終えるた。僕は湖に入った事が無いけれど、ヨウの言う様に泳ぎにくいのだろうか。
僕が考え込んでいると、マオとカオが「みんなが帰ってきましたよー」と声をあげた。二人の目線の先には、キドさんとコシさんらがいた。
「ああ、たくさん採れたよ」
二人は背中に大きな籠を背負い、中には大量の植物の蔓が入っていた。
「これだけあれば、十分だろう」
子供たちについていったイバさんが、満足そうに言った。
「イバさんも、一緒に採ってくれたら良かったのに」
コシさんが口を尖らせて言うと、イバさんは「いざという時、誰かがすぐに動けないといけないだろ?」と言った。
どうやらイバさんは、僕たち子どもに仕事を任せ、自分は見守っていた様だ。
イバさんの事だから、自分だけさぼる様なことはせず、目の見えないところで手助けをしていたのだろう。その証拠に、キドさんとコシさんが背負っている籠は、イバさんが先日造っていた物だった。
「ヨウとイケはどうしたんですか?」
「二人は川辺で蔦を洗っている時に獲れたカニを、先に村に戻らせて茹でてもらっている。そろそろ、お腹が空く頃だろう?」
イバさんの話を聞き、マオとカオのお腹がグウという音が鳴った。
「まずは、小さな子供たちから食べるんだぞ?」
イバさんが軽く、二人を制した。
5―1
サキさんの勾玉に影響されたのか、ナホさんたち女の子も精力的に、装飾品造りに励むようになった。その代り、小さな子供たちが退屈そうになり、僕や去年まで小さな子供だったマオとカオが、代わる代わる子守りをするようになった。
「石を割ったら石が出来て」
「その石を割ったらもっと小さな石が出来て」
「最後は何も無くなりましたー」
二人はレイがやったというように、脆い石を割って石器を造ろうとしているようだ。だけど、割った石から出てくるのは脆い石ばかりで、固い部分が出てくる事は無かった。レイが使った石は、入江でしかとれない石なのだろうか。
小さな子供たちも脆い石なので簡単に割る事ができ、遊ぶようにして石を割っている。
「おかしいなぁ」
「おかしいよねぇ」
マオとカオは割り過ぎて、砂の様になっている石を摘まみながら言い合っている。僕は木を倒した時にとれた、白い石を磨いている。
レイに、新しい石器を見せるためだ。
「カラさん、その石何処かに無いかな」
「海の中にも無かったって、ヨウさんが言っていたよ」
「え、ヨウが海の中で石を探していたの?」
僕が二人に尋ねると、二人は「うん」と頷いた。
ヨウは入江に行き、湖に入って泳いだ後から一段と、泳ぐのが上手になった。
「湖はなんだかよく沈みますけど、海はあまり沈みません。むしろ、潜りにくいです」
ヨウは、ヤンさんから海の潜り方を習い始めており、僕は回想にふけった。
「海にはみんなの魂があって、僕たちを溺れさせないように守っているから、潜りにくいんじゃないでしょうか?」
イケの独特な意見に、ヤンさんは首をひねった。
「そうかもしれないな。魚も自由に海の中を動き回れるんだ。みんなが溺れないように、人間たちの魂が海の中で、俺たちを溺れさせないようにしているのかもな」
ヤンさんがイケの言葉に頷いていると、ヨウは「じゃあ、どうして貝は砂の中に潜っているんでしょうか?」と、ヤンさんに続けざまに尋ねた。
「えーと、どうしてだろうな?」
ヤンさんは答えに窮し、イケも「そういえば、そうですね」と、考え込む仕草をした。
僕も考え込んでいた時、ウドさんとイバさんが山から帰ってきて、僕たちの所にやって来た。
「ウドはどう思う?」
ヤンさんはヨウの疑問を、そのままウドさんに尋ねた。
「なんだそんなことか。そんなの、魂が冬眠しているからだろ?」
ウドさんは、さも当たり前の様に答えた。
「どういう事ですか?」
ヨウがウドさんに尋ねた。
「動物も植物も、冬には土の中で冬眠するだろ。貝には海に還った魂が一時的に冬眠しているから、砂の中にいるんだ」
ウドさんの言葉に、ヤンさんとヨウは「なるほど」と頷いた。
「ウドさん、それってガンさんが言っていた事じゃーー」
イバさんの言葉を遮るように、ウドさんはイバさんの肩を抱いて村に帰っていった。
僕はそんなことがあったなと回想を終えるた。僕は湖に入った事が無いけれど、ヨウの言う様に泳ぎにくいのだろうか。
僕が考え込んでいると、マオとカオが「みんなが帰ってきましたよー」と声をあげた。二人の目線の先には、キドさんとコシさんらがいた。
「ああ、たくさん採れたよ」
二人は背中に大きな籠を背負い、中には大量の植物の蔓が入っていた。
「これだけあれば、十分だろう」
子供たちについていったイバさんが、満足そうに言った。
「イバさんも、一緒に採ってくれたら良かったのに」
コシさんが口を尖らせて言うと、イバさんは「いざという時、誰かがすぐに動けないといけないだろ?」と言った。
どうやらイバさんは、僕たち子どもに仕事を任せ、自分は見守っていた様だ。
イバさんの事だから、自分だけさぼる様なことはせず、目の見えないところで手助けをしていたのだろう。その証拠に、キドさんとコシさんが背負っている籠は、イバさんが先日造っていた物だった。
「ヨウとイケはどうしたんですか?」
「二人は川辺で蔦を洗っている時に獲れたカニを、先に村に戻らせて茹でてもらっている。そろそろ、お腹が空く頃だろう?」
イバさんの話を聞き、マオとカオのお腹がグウという音が鳴った。
「まずは、小さな子供たちから食べるんだぞ?」
イバさんが軽く、二人を制した。
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