『潮が満ちたら、会いに行く』

古代の誇大妄想家

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4―2 10年前の事実

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4―2
10年前の事実
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 この年は、雪解けの時期から何かがおかしかった。雪解けが遅いと思ったら、一気に溶け出し、暖かくなったのだ。暖かくなったので、村人たちは食料を探し始めた。
「何処にも山菜がないよ?」
 ジンが、班長に泣きながら報告していた。子供たちは、いつも山菜が採れる場所に行ったのに、ほとんど採れなかったのだ。
 ならば海に行こうと、子供たちは磯に行った。
「貝がちっちゃくて、他に何もいないよ」
 イバが小粒の貝を食べようとし、ガンさんに怒られていた。小粒の貝まで獲ってしまえば、貝が無くなってしまうかもしれないからだ。
「お腹が空いたよう」
 息子のアラが、お腹を空かして泣きそうになっている。私自身も妊娠しており、このままではお腹の中の赤ん坊が、無事に産まれてくるか不安だった。
「くそう、魚が全く獲れなかった」
 お父さんがモリや網を家の隅に投げ出し、横になった。みなが空腹で、気が立っていた。
 この時の酋長は、ガンさんの息子のスガさんだった。スガさんは食料を求め、周辺の村々にも足を運んだ。しかし、どの村も食料がとれず、みな飢えていた。
 そこで、今まで貯蔵しておいたドングリなどの保存食を掘り起こす事になった。何かあった時のために、採ったドングリは一部を村の近くに埋めて、もしもの時に掘り起こす事と決まっていた。
 村の大人の男たちは山に入り、獲物を数日かけて、山中を懸命に探しまわった。その間の事だった。さらに悪い事に、村では病気も流行った。健康な大人の男性は山に入っていたため、少数の男性と共に、女性らが交易品や装飾品を食料と交換できないかと、三内に向かう事になった。
 三内では食糧不足の危機意識は無かったという。三内を管理している村の人によると、渡島との間の海では魚はいつものように獲れていたらしい。ただ、獲れる魚の種類が違っていたようだ。
 女性らは交易品と食料を交換し、是川に戻ってきた。しかし、交易品と交換で得た食料だけでは、村人全員のお腹を満たす事は出来なかった。
気温が上がり、毎日が暑くなった頃、食料配分をどうするかで村はもめていた。主に、狩りをおこなう男性にたくさん食べてもらい、獲物を獲って来るか。子供や赤ん坊を育てている女性に食べてもらうかだ。
「みな焦るな。食べれる物は、ワシが一番知っておる。子供らは任せておけ」
 タケさんは子供たちを連れ、毎日山の近くを歩き回り、食べられる薬草や木の皮等を集めた。味は不味いが、贅沢を言っている暇は無かった。
 そのうち、暑さと空腹で動けない者が増えた。子供たちよりも、大人に元気が無かった。キノジイが子供たちに、薬草を食べさせていたおかげだろうか。
 残った食料やわずかに獲れた獲物は、女性らに回す事になった。大人の男性らは空腹に耐えつつ、山に入った。それをただ見ていられるほど、是川の女性らはやわではなかった。
「私たちだけで三内に行って、交易品と精の付く物を交換してきましょう」
 スガの妻のイレが中心となって、女性らに呼び掛けた。女性らの多くは空腹のままで山や海に向かっている夫を見て、心を痛めていた。
 

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