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 その日の午後から、僕はロウさんとイケと一緒に入江の村や湖を回り、翌日は大人たちと一緒にアザラシを見に行った。群れから逸れていた一頭のアザラシがいたため、大人たちは慎重に近づき、そのアザラシをヤリで仕留めた。その中の一本は、僕がレイに見せた石器が付いているものだ。
「レイが酷い事を言ったようだ。すまない」
 レイのお父さんであるゾンさんが、僕に謝った。あの後、レイはサキさんと一緒に家に戻り、翌日からは石器や土器作りを、普段通りに造り出したらしい。
「稀に、レイは怒りだす時があるんだ」
 ゾンさんはそう言っていたけど、僕はその怒りだす時には何か理由がある気がした。その事をサキさんに尋ねてみると、サキさんは「自分に出来ない物事を見ると、機嫌が悪くなるの」と、悲しそうに言った。今回の事は、僕の話を聞いて起きた出来事だろう。
「僕のせいでしょうか?」
 僕の言葉に、サキさんは肯定も否定もせず、ただ「レイの事を、嫌いにならないであげて」と言った。僕は「嫌いにはなりません」と、言葉を続けた。
 僕の造った石器はゾンさんが使い、アザラシを仕留めた。
「今までで一番深く刺さって、中々抜けなかったぞ」
 ゾンさんは嬉しそうに僕に言った。でも、僕はその石器をレイに使って欲しかったのだ。どう使って欲しかったのかはわからないけど、今の僕にはもう、石器を上手く造れる自信が無くなっていた。
造ろうと思えば造れそうだけど、造る気力がわかなかった。

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