上 下
24 / 44
極甘彼氏を喜ばせる方法

優しい恋人とおねだり

しおりを挟む
 家に着くなり、またなし崩しに――そう予想していたのに、伊上は以前のようにがっつくことはせず、紳士的に天希を風呂へと促した。
 少しばかり拍子抜けではあったが、別段あのシチュエーションが良かったわけではない。

 たまに、くらいであれば、一方的にめちゃくちゃにされるのもいい。それはそれで盛り上がるものがある。
 向こうがしたいと望めば、応えたい気持ちもあった。だが天希は、どちらかと言えばノーマルなセックスが好みだ。

「あまちゃん、なに見てるの?」

「ハンバーグのレシピ。予習してた。けど作るのは明日だな」

 ベッドの上でタブレットを眺めていた天希は、聞こえた声に顔を上げる。すると風呂から上がった伊上が、上半身裸のまま近づいてくるところだった。
 その姿を目に留めて、天希の胸はドキリと高鳴る。程よく鍛えられた男性らしい身体は、相変わらず色気すら感じた。

「予定は夜でもいい?」

「うん。……明日、怒られんの?」

「いや、大丈夫じゃないかな。あの人の長話を聞いて、ちょっとお酒に付き合ったら帰ってくるよ」

「そっか」

 じっと見つめていると、傍まで来た伊上はベッドの端に腰かけて、天希の額にキスを落とす。くすぐったい感触に首をすぼめれば、首筋にキスが下りてきた。

「さっきから、そんなに見つめてどうしたの?」

「ん、格好いい身体してんなぁと思って。やっぱり俺もちょっと、鍛えたいかも」

「あまちゃんも綺麗に腹筋割れてて、いい感じの肉付きだよ。触り心地がいい」

「ぁっ、胸ばっかり触んなよ」

「あまちゃんのおっぱい、すごくおいしそうでいいよね」

 Tシャツの上から、大きな手に胸を揉みしだかれて、天希は恥ずかしさに頬を染める。身体の割に胸が大きいのは、少しばかりコンプレックスだった。
 鍛えると余計に発達してしまって、筋トレはほどほどくらいに、留めるようにしている。

「あ、あんまり揉むなっ」

「女の子みたいに大きくなったりするかな?」

「知るか! 馬鹿!」

 徐々に伊上の手が遠慮がなくなってきて、Tシャツをたくし上げられた。柔らかな天希の胸を直に鷲掴みすると、彼は形が変わるくらい激しくもてあそぶ。
 胸自体は性感帯ではないけれど、時折胸の尖りが手のひらで擦られると、甘い疼きを感じ始める。

「ん、……ぁ」

 何度も押し潰すようにされて、天希は無意識に腰が揺れ、足をもじもじと擦り合わせてしまった。それに気づいた伊上に薄く笑みを浮かべられ、恥ずかしさが込み上がる。

「可愛いね。気持ちいいんだ?」

「ちがっ」

 揶揄する恋人を睨み付けるが、まったく効果がない――どころか仰向けに転がされて、容易く自由を奪われた。
 手にしていたタブレットがベッドから滑り落ち、視線を向けるけれど、すぐに彼へ意識を引き戻される。

 濡れた舌先で尖りをくすぐられる、それだけでゾクゾクとしてしまい、天希は刺激を求めるように胸を突き出していた。

「あまちゃんはお尻の次に、ここが好きだよね」

「ひぁ、んっ……」

「可愛い声、出ちゃったね」

 両方いっぺんに指先できつくつままれると、疼きが広がって身体をのけ反らせてしまうくらい感じる。
 尖りをいじられているだけなのに、天希はスウェットを押し上げるほど熱を昂ぶらせ、じわりと股間にシミが広がった。

「やだ、そこ、……ばっかり」

「でも気持ちいいんだよね?」

 少し痛いくらいに指先でこね回されて、天希の腰がビクビクと跳ねた。片方だけでも相当感じてしまうのだが、両方となると声が抑えられなくなる。
 泣きすがるような天希の甘い声に、伊上は笑みを深くした。

「あまちゃんの声、ほんと可愛いな。乳首、そんなにいい?」

「……ふぁっ、ん、きもち、い、いけど。ぁんっ、なんで、そうマニアック」

「乳首責めはちっともマニアックじゃないと思うけど」

「んっ、もっとふつーなの」

「仕方がないなぁ。じゃあ一回これでイってから」

 無理、そう言おうと思ったのに、指で押し潰され、小さな粒に齧り付かれただけで、下着がぐっしょりと濡れた。身体に気持ちがまったくついてきておらず、天希は自分の反応に驚く。
 伸ばされた手に濡れたものを握り込まれて、初めて自分がイってしまったことに気づいた。

「あまちゃん、今日は随分と早いね」

 唇を優しく塞がれ、吐き出したものを塗り込めるようにされて、また熱が昂ぶり出す。いつもはもう少し快感を味わう余裕があるのに、いまの天希は導火線に火がついたようで、優しく触れられるだけで感じる。

「変なことされてないよね?」

「へ、変なことって?」

 ふっと恋人の声が一段低くなり、天希は目を瞬かせる。変なことをしているのはほかでもない彼だ。
 だが言っているのは、そういうことではないのだろう。しかし快感で痺れている頭では、まともに考えごとができない。

「あのエロ親父どもに、変なことされなかった? 盛られてない?」

「……ん? あっ! ない、ない! なにもされてねぇよ。ちょっと変な雰囲気だったけど、あんたが来たし」

「へぇ、されそうな雰囲気はあったんだね」

「あ、いや、俺なんかをどうこうしようっていう物好きは、あんたくらいしか」

「あまちゃんはわかってないな。君ほど可愛い子、僕は知らないよ」

「ぁ、……ん、あんた、目が悪い」

 ふいに首筋に唇が触れて、胸の音が駆け足をし始める。さらに愛撫するように身体の上を滑らされると、天希の肌は瞬く間に赤く染められていく。
 普通がいい、という言葉を律儀に聞いてくれる恋人は、とことん天希に甘い。

 唇の感触と、時折触れる舌の感触に、天希はうっとりと目を細める。さらに余すことなく身体を撫でられて、心地良い快感に肩を震わせた。

「これでも両目とも2.0あるよ」

「そういうことじゃねぇよ。……んぁっ」

 小さく笑った天希を咎めるみたいに、尖りを囓られた。やわやわと歯を立てたあと、伊上はひくんと震えた天希の身体に、きつく吸いついて痕を刻む。
 皮膚の薄いところに何度も繰り返されて、また増やされたのがわかった。最近の伊上はやたらと痕を残したがる。

 そのおかげで、あの時キスマークを見られて興奮された――と、言うのは止めておこう。ぼんやり天希はそんなことを考える。

「僕は可愛いものと綺麗なものが好きかな」

「そういや、細身の美人が好き、なんだって?」

「……たまたま、そういうのが多かっただけの話だよ」

「ふぅん」

 ここでそれは違うとか、そんなことはないんだとか、言い訳しないところが伊上らしい。だがそう言われたら、逆に気持ちがもやつく。
 さっぱりしているこの性格が、天希は好きだなと思う。

「信じてないの?」

「そういうわけじゃねぇよ。……あっ、そこも、つけんの?」

 するりとスウェットごと下着を脱がされて、太ももを掴まれる。這わされる舌にゾクゾクとすれば、内ももが震えた。
 ここにつけられる時が、天希は一番感じてしまうのだ。その先を想像して唾を飲み込むと、付け根の傍にきつく吸いつかれた。

 声を上げてしまいそうになり、天希が両手で口を塞げば、わざと何度もそこばかりに唇を寄せられる。
 一体いくつ残すつもりだろう、そう思うほど触れられて、昂ぶったものからだらだらと蜜が伝い落ちた。

「あまちゃんの身体ってほんとにエッチだね」

「……あ、あんたが……そう、したんだろ」

「僕しか知らない身体って、そそられるね」

「なぁ、もう、挿れて」

「お尻、疼いてきちゃった?」

「はや、く、……ぁっ」

 両脚を開かされて尻の奥を撫でられる。それだけで天希は期待が膨らみ、そこが疼くのが自分でもわかった。先走りでぬかるんだ場所に指を含まされると、さらに欲しくなる。

 身を屈めた伊上に頬へ口づけられて、天希はその次を待った。だがベッドサイドの引き出しから、ゴムとローションが取り出される音がすると、腹の奥がキュンとし始める。

 疼きが増す感覚に待ちきれず、自分で孔に指を這わせ、濡れたそこに天希は指を押し込めた。動かすたびにくちくちと水音がして、興奮が高まる。

「可愛いなぁ。我慢、できなくなっちゃったんだ」

「それ、早く挿れて」

 スウェットの下で昂ぶっている、伊上の熱を前に天希は息を飲む。しかし早く欲しくて指を抜こうとすると、それを押し止められた。
 じっと見つめてくる視線に、天希は身体が熱くなる。

「あまちゃんが自分でしてるところ、もっと見たいな。ちゃんと脚、開いて見せてよ」

「や、やだ」

「一人の時、そうやってしてるんだ? 続き、してごらん。僕へのプレゼントだと思って、ほら」

「そ、それ、ずるいぞ」

 まじまじと見られて、とっさに膝を閉じようとするが、それを制されて、また脚を開かされる。欲を浮かべた眼差しに、天希は身体が火照ってたまらなくなった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ド陰キャが海外スパダリに溺愛される話

NANiMO
BL
人生に疲れた有宮ハイネは、日本に滞在中のアメリカ人、トーマスに助けられる。しかもなんたる偶然か、トーマスはハイネと交流を続けてきたネット友達で……? 「きみさえよければ、ここに住まない?」 トーマスの提案で、奇妙な同居生活がスタートするが……… 距離が近い! 甘やかしが過ぎる! 自己肯定感低すぎ男、ハイネは、この溺愛を耐え抜くことができるのか!?

オメガ転生。

BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。 そして………… 気がつけば、男児の姿に… 双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね! 破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

ACCOMPLICE

子犬一 はぁて
BL
欠陥品のα(狼上司)×完全無欠のΩ(大型犬部下)その行為は同情からくるものか、あるいは羨望からくるものか。  産まれつき種を持たないアルファである小鳥遊駿輔は住販会社で働いている。己の欠陥をひた隠し「普通」のアルファとして生きてきた。  新年度、新しく入社してきた岸本雄馬は上司にも物怖じせず意見を言ってくる新進気鋭の新人社員だった。彼を部下に据え一から営業を叩き込むことを指示された小鳥遊は厳しく指導をする。そんな小鳥遊に一切音を上げず一ヶ月働き続けた岸本に、ひょんなことから小鳥遊の秘密を知られてしまう。それ以来岸本はたびたび小鳥遊を脅すようになる。  お互いの秘密を共有したとき、二人は共犯者になった。両者の欠陥を補うように二人の関係は変わっていく。 ACCOMPLICEーー共犯ーー ※この作品はフィクションです。オメガバースの世界観をベースにしていますが、一部解釈を変えている部分があります。

処理中です...