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獣人の国ロザハール
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獣人が治める国、ロザハールは大陸の南に位置する気候が穏やかな土地だ。
十二の国が居を構える大陸に大小流れる河川の一部が、王都の西部を横断し運河として切り拓かれているので、商船が停泊できるほどの船着き場がある。
様々な人がやってくる船着き場周辺は、朝から晩まで活気があり、西地区は中心街の洗練された雰囲気とは違った趣があった。
船着き場からほど近い場所にある宿屋の二階から、人の流れを見ていたリトは、好奇心に満ちあふれた水色の瞳を輝かせる。
明け方を知らせる朝焼けが広がった空の下、店の前の通りはたくさんの人が歩いていた。これから船着き場へ向かう人、船を下りてきた人もいるだろうか。
朝一番に王宮へ出仕する勤め人もいるかもしれない。
三ヶ月ほど前まで、リトは数えるほどの人しかいない村で過ごしていたため、大通りを行き交う人たちは見ているだけでわくわくした。
獣人の国と言われるだけあって、国に住む獣人は人口の約五割を占める。残りは人族との混血で、見た目に獣化が現れていない者が三割、純粋な人族が二割。
育った村もロザハール国内であったのだが、生まれてこの方、リトは獣人という存在を知らなかった。
国では獣人について幼いうちに教会で習うらしいけれど、村が小さすぎて教会が機能しておらず、十九歳のいま、リトは初めて彼らを目にしたのだ。
「なんというか、獣人さんたちは神秘的だよなぁ」
姿形が人族とさほど変わらない獣人たちだけれど、耳や尻尾、肌や瞳などに人族と明らかに違う特徴を持っていて、それがリトには魅力的に映る。
建国当初は半人半獣という言葉にふさわしい、獣に近い姿を持った獣人も多かったと聞く。またそこにも魅力を感じてしまい、近頃は宿泊客と交流をするのが楽しくて仕方がない。
「いけない。部屋の掃除を終わらせたら食堂の手伝いをお願いって、女将さんに言われてたんだった」
開け放していた窓から冷たい風が吹き込み、うっかりと外の魅力に取り憑かれていたリトは、我に返って窓辺から離れる。
本来の目的を遂行すべく、壁に立てかけた掃除用具を手に取ると、板張りの床を綺麗に掃き、調度品を拭いて、シーツや枕カバーを廊下の籠に放り込む。
風の〝スキル〟でも使えたら、一瞬で終わる作業だったけれど、魔力無しだと言われているリトはすべてが手作業だ。
今日は客が退出済みの十部屋がリトの担当なので、のんびりしていると階下にある食堂の準備に加われない。慌てたリトはほかの部屋も大急ぎで済ますと、籠を両手で抱えた。
ほっそりとした体のどこにそんな力が、と言われやすいリトだが力仕事は得意で、籠いっぱいに積み重ねたシーツの山を持って、軽やかに階段を駆け下りる。
「りっちゃん、掃除は終わった? 洗濯場はいま丁度やってるところだから」
「はい! 終わりました! じゃあ、お願いしてきます」
一階へ下りると宿屋の女将であるハンナが、厨房の入り口から顔を覗かせた。微かに香ってくる朝餉の匂いが差し迫った時刻を知らせる。
この宿屋は船着き場から近いゆえに宿泊客が途切れず、四十もある部屋は常に満室だ。西地区が朝から晩まで賑やかであれば、ここも同様である。
ごった返す食堂の手伝いに遅れてはならないと、リトは駆け足で洗濯場へ向かった。
「おはようございます!」
「りっちゃん、おはよう」
「相変わらず見かけによらない力持ち」
「ほんと、わたしたちよりずっと華奢に見えるのにねぇ」
広い洗濯場につくと、山のように積み上がった洗い物に囲まれる、十人ほどの女性たちが楽しそうに作業をしている。
彼女たちはリトを見ると快活な笑顔で挨拶を返してくれ、いつものように抱えた籠を見て顔を見合わせた。
初めの頃は驚き慌てられたものだが、いまとなってはこうして笑い話になる程度だ。
リトの見た目は、風が吹いたら飛びそうなほど華奢に見えるらしく、色白な肌が余計に中性的で儚げにも見えるようだった。
くすんだペパーミント色の髪が影響しているのか、森妖精さんかと思ったと皆に言われた。
森妖精とは名のとおり森に住む妖精で、普段は人の目から隠れて暮らしているが、森に迷った人間を助けてくれる優しい妖精だ。
優しすぎて悪い人間に捕まえられてしまった過去があり、いまでは滅多に人の前に現れなくなった幻の妖精でもある。
妖精はともかく実際問題として、リトはこれまで粗食生活で過ごし、日に焼けない体質なだけで、昔から日の下を走り回っていた健康体だ。証拠に頬や鼻の頭にそばかすが散っている。
大人になって少し薄れてきたが、雪の如く白い肌なので、顔の茶色いそばかすがよく目立つ。
「そっちの左端の桶に入れておいて、これから回すから」
「はい」
洗濯場にはたくさんの桶が並んでいる。腰より高い深さの桶には水が張っており、グルグルと洗濯物と一緒に旋回していた。
水を操るスキルで自動的に洗濯をする様子を初めて見た時、リトはいたく感動をした。育った村では洗濯と言えばたらいで手洗いが基本で、寒さが厳しい季節は大変だったのだ。
ロザハールではこうした〝スキル〟を持つ者が多くいて、スキル持ちは獣人の血を引いている証しだと聞いた。
見た目は人族と変わらない者でも、系譜を辿った先に獣人の祖先がいれば、発現する可能性が高い。
「汚れが酷い物はなかった?」
「大丈夫です」
指示された桶に洗濯物を投入していると、この桶の担当だろう女性がリトに並び立つ。いくら自動洗浄でも、汚れ落ちしにくい場合は手洗いは必須。
とはいえ宿屋の洗濯物をすべて手で洗う作業と比べたら、微々たる苦労だろう。
「もう少しで国王陛下の生誕祭があるから、船着き場はますます混雑するわね」
「人が増えると商売にはいいけど、行儀の悪い客も紛れ込むし、善し悪しよね」
「国王陛下ってどんな方ですか?」
聞こえた言葉にリトが勢いよく振り向くと、その先にいた二人は目を丸くしたのち、ふふっと小さく笑った。
新米の同僚が、すっかり獣人に魅せられているのを知っている彼女たちは、キラキラと瞳を輝かせるリトの様子に微笑ましそうな顔をする。
「国王陛下、獣王さまはもうすぐで二十六歳になる年若いお方よ。けれど獣人の始祖である獅子ロザハールさまと同じ姿をお持ちだから、生まれながらの王様なの。獅子にふさわしく威厳があり、二年前の戦では先陣を切って敵国を一掃された実力の持ち主」
「武力だけでなく知力にも優れ、陛下が譲位されて六年経ついま、国の施策もかなり柔軟になったわ」
「へぇ、すごいお方なんですね」
「そしてなによりもお美しい方なのよ! あれほど魅力的な男性はなかなかいないわ」
きゃあきゃあと陛下の容姿で盛り上がり始めた彼女たちにリトは苦笑しつつ、疑問がふと頭に浮かんだ。
「陛下は結婚されていないんですか? ……って、あれ?」
ぽつんと呟いたリトの言葉がやけに響いた。急にしんとした空気に、結婚は禁句だったろうかと焦りが湧く。
国民が誇らしげに語るほどの、素晴らしい王様であれば伴侶が、番がすでにいてもおかしくないというのに。
「陛下の番さまは、見つかっていないのよ」
「見つかっていない? 好みがうるさいとか?」
表情を曇らせる彼女らの反応にリトはますます訝しく思う。獣人にとっての番は人族の伴侶よりも深い関係だと聞いた。
獣人のほとんどが番った相手と生涯を共にし、番が亡くなってもほかの人へ心を移さずに、後追いする者もいるのだとか。
「そっか、りっちゃんは王族獣人の番について知らないのね」
「王族は普通の獣人と違うんですか?」
「そう、王族獣人は生まれながらにして番が決まっているのよ。先に番が生まれていれば生まれた時から、あとから生まれたら生まれた瞬間、体に〝番紋〟と呼ばれる紋様が現れるの。それは番になる相手も同様よ」
「見つかってないってことは」
「陛下に番紋が現れたとお触れが出てから二十年、番が名乗り出ていないの」
「そんなことって」
「わりとあるみたいなのよね。番が人族だと、獣人に嫁がせるのが嫌で隠してしまったり、ほかの相手と婚約させてしまったりするみたい」
ロザハールは獣人の国として有名であり、国民は獣人と慣れ親しんで育っているものの、他国の影響で獣人批判、差別意識を持った者も少なからずいる。
新興貴族よりも古くからある人族の家門のほうが、そういった意識を持つ者が増えているらしく、頭の痛い問題のようだ。
裏方で客の目に触れない場合を除き、この宿で働く第一条件が容姿に獣人の要素がほとんどないことであるのは、獣人を厭う客だけでなく、働く者が迫害を受けないようにする配慮だと聞いた。
「番に会えないのも悲しいけど、出会ってもいない相手と番になるのが決まっているのって、どんな気持ちなんだろう」
人族、獣人の影響が少ない者にはなかなか理解できない感覚だ。
獣人の本能として番を選ぶならともかく、魂で紐付けられた関係で、決められた相手しか受け入れられないのだとして――愛せなかったら、愛されなかったら――そこに本人の意志はあるのだろうか。
番に出会えないせいで、二十年も一人きりのまだ見ぬ王に、リトはどこか同情に似た感情が湧いた。
十二の国が居を構える大陸に大小流れる河川の一部が、王都の西部を横断し運河として切り拓かれているので、商船が停泊できるほどの船着き場がある。
様々な人がやってくる船着き場周辺は、朝から晩まで活気があり、西地区は中心街の洗練された雰囲気とは違った趣があった。
船着き場からほど近い場所にある宿屋の二階から、人の流れを見ていたリトは、好奇心に満ちあふれた水色の瞳を輝かせる。
明け方を知らせる朝焼けが広がった空の下、店の前の通りはたくさんの人が歩いていた。これから船着き場へ向かう人、船を下りてきた人もいるだろうか。
朝一番に王宮へ出仕する勤め人もいるかもしれない。
三ヶ月ほど前まで、リトは数えるほどの人しかいない村で過ごしていたため、大通りを行き交う人たちは見ているだけでわくわくした。
獣人の国と言われるだけあって、国に住む獣人は人口の約五割を占める。残りは人族との混血で、見た目に獣化が現れていない者が三割、純粋な人族が二割。
育った村もロザハール国内であったのだが、生まれてこの方、リトは獣人という存在を知らなかった。
国では獣人について幼いうちに教会で習うらしいけれど、村が小さすぎて教会が機能しておらず、十九歳のいま、リトは初めて彼らを目にしたのだ。
「なんというか、獣人さんたちは神秘的だよなぁ」
姿形が人族とさほど変わらない獣人たちだけれど、耳や尻尾、肌や瞳などに人族と明らかに違う特徴を持っていて、それがリトには魅力的に映る。
建国当初は半人半獣という言葉にふさわしい、獣に近い姿を持った獣人も多かったと聞く。またそこにも魅力を感じてしまい、近頃は宿泊客と交流をするのが楽しくて仕方がない。
「いけない。部屋の掃除を終わらせたら食堂の手伝いをお願いって、女将さんに言われてたんだった」
開け放していた窓から冷たい風が吹き込み、うっかりと外の魅力に取り憑かれていたリトは、我に返って窓辺から離れる。
本来の目的を遂行すべく、壁に立てかけた掃除用具を手に取ると、板張りの床を綺麗に掃き、調度品を拭いて、シーツや枕カバーを廊下の籠に放り込む。
風の〝スキル〟でも使えたら、一瞬で終わる作業だったけれど、魔力無しだと言われているリトはすべてが手作業だ。
今日は客が退出済みの十部屋がリトの担当なので、のんびりしていると階下にある食堂の準備に加われない。慌てたリトはほかの部屋も大急ぎで済ますと、籠を両手で抱えた。
ほっそりとした体のどこにそんな力が、と言われやすいリトだが力仕事は得意で、籠いっぱいに積み重ねたシーツの山を持って、軽やかに階段を駆け下りる。
「りっちゃん、掃除は終わった? 洗濯場はいま丁度やってるところだから」
「はい! 終わりました! じゃあ、お願いしてきます」
一階へ下りると宿屋の女将であるハンナが、厨房の入り口から顔を覗かせた。微かに香ってくる朝餉の匂いが差し迫った時刻を知らせる。
この宿屋は船着き場から近いゆえに宿泊客が途切れず、四十もある部屋は常に満室だ。西地区が朝から晩まで賑やかであれば、ここも同様である。
ごった返す食堂の手伝いに遅れてはならないと、リトは駆け足で洗濯場へ向かった。
「おはようございます!」
「りっちゃん、おはよう」
「相変わらず見かけによらない力持ち」
「ほんと、わたしたちよりずっと華奢に見えるのにねぇ」
広い洗濯場につくと、山のように積み上がった洗い物に囲まれる、十人ほどの女性たちが楽しそうに作業をしている。
彼女たちはリトを見ると快活な笑顔で挨拶を返してくれ、いつものように抱えた籠を見て顔を見合わせた。
初めの頃は驚き慌てられたものだが、いまとなってはこうして笑い話になる程度だ。
リトの見た目は、風が吹いたら飛びそうなほど華奢に見えるらしく、色白な肌が余計に中性的で儚げにも見えるようだった。
くすんだペパーミント色の髪が影響しているのか、森妖精さんかと思ったと皆に言われた。
森妖精とは名のとおり森に住む妖精で、普段は人の目から隠れて暮らしているが、森に迷った人間を助けてくれる優しい妖精だ。
優しすぎて悪い人間に捕まえられてしまった過去があり、いまでは滅多に人の前に現れなくなった幻の妖精でもある。
妖精はともかく実際問題として、リトはこれまで粗食生活で過ごし、日に焼けない体質なだけで、昔から日の下を走り回っていた健康体だ。証拠に頬や鼻の頭にそばかすが散っている。
大人になって少し薄れてきたが、雪の如く白い肌なので、顔の茶色いそばかすがよく目立つ。
「そっちの左端の桶に入れておいて、これから回すから」
「はい」
洗濯場にはたくさんの桶が並んでいる。腰より高い深さの桶には水が張っており、グルグルと洗濯物と一緒に旋回していた。
水を操るスキルで自動的に洗濯をする様子を初めて見た時、リトはいたく感動をした。育った村では洗濯と言えばたらいで手洗いが基本で、寒さが厳しい季節は大変だったのだ。
ロザハールではこうした〝スキル〟を持つ者が多くいて、スキル持ちは獣人の血を引いている証しだと聞いた。
見た目は人族と変わらない者でも、系譜を辿った先に獣人の祖先がいれば、発現する可能性が高い。
「汚れが酷い物はなかった?」
「大丈夫です」
指示された桶に洗濯物を投入していると、この桶の担当だろう女性がリトに並び立つ。いくら自動洗浄でも、汚れ落ちしにくい場合は手洗いは必須。
とはいえ宿屋の洗濯物をすべて手で洗う作業と比べたら、微々たる苦労だろう。
「もう少しで国王陛下の生誕祭があるから、船着き場はますます混雑するわね」
「人が増えると商売にはいいけど、行儀の悪い客も紛れ込むし、善し悪しよね」
「国王陛下ってどんな方ですか?」
聞こえた言葉にリトが勢いよく振り向くと、その先にいた二人は目を丸くしたのち、ふふっと小さく笑った。
新米の同僚が、すっかり獣人に魅せられているのを知っている彼女たちは、キラキラと瞳を輝かせるリトの様子に微笑ましそうな顔をする。
「国王陛下、獣王さまはもうすぐで二十六歳になる年若いお方よ。けれど獣人の始祖である獅子ロザハールさまと同じ姿をお持ちだから、生まれながらの王様なの。獅子にふさわしく威厳があり、二年前の戦では先陣を切って敵国を一掃された実力の持ち主」
「武力だけでなく知力にも優れ、陛下が譲位されて六年経ついま、国の施策もかなり柔軟になったわ」
「へぇ、すごいお方なんですね」
「そしてなによりもお美しい方なのよ! あれほど魅力的な男性はなかなかいないわ」
きゃあきゃあと陛下の容姿で盛り上がり始めた彼女たちにリトは苦笑しつつ、疑問がふと頭に浮かんだ。
「陛下は結婚されていないんですか? ……って、あれ?」
ぽつんと呟いたリトの言葉がやけに響いた。急にしんとした空気に、結婚は禁句だったろうかと焦りが湧く。
国民が誇らしげに語るほどの、素晴らしい王様であれば伴侶が、番がすでにいてもおかしくないというのに。
「陛下の番さまは、見つかっていないのよ」
「見つかっていない? 好みがうるさいとか?」
表情を曇らせる彼女らの反応にリトはますます訝しく思う。獣人にとっての番は人族の伴侶よりも深い関係だと聞いた。
獣人のほとんどが番った相手と生涯を共にし、番が亡くなってもほかの人へ心を移さずに、後追いする者もいるのだとか。
「そっか、りっちゃんは王族獣人の番について知らないのね」
「王族は普通の獣人と違うんですか?」
「そう、王族獣人は生まれながらにして番が決まっているのよ。先に番が生まれていれば生まれた時から、あとから生まれたら生まれた瞬間、体に〝番紋〟と呼ばれる紋様が現れるの。それは番になる相手も同様よ」
「見つかってないってことは」
「陛下に番紋が現れたとお触れが出てから二十年、番が名乗り出ていないの」
「そんなことって」
「わりとあるみたいなのよね。番が人族だと、獣人に嫁がせるのが嫌で隠してしまったり、ほかの相手と婚約させてしまったりするみたい」
ロザハールは獣人の国として有名であり、国民は獣人と慣れ親しんで育っているものの、他国の影響で獣人批判、差別意識を持った者も少なからずいる。
新興貴族よりも古くからある人族の家門のほうが、そういった意識を持つ者が増えているらしく、頭の痛い問題のようだ。
裏方で客の目に触れない場合を除き、この宿で働く第一条件が容姿に獣人の要素がほとんどないことであるのは、獣人を厭う客だけでなく、働く者が迫害を受けないようにする配慮だと聞いた。
「番に会えないのも悲しいけど、出会ってもいない相手と番になるのが決まっているのって、どんな気持ちなんだろう」
人族、獣人の影響が少ない者にはなかなか理解できない感覚だ。
獣人の本能として番を選ぶならともかく、魂で紐付けられた関係で、決められた相手しか受け入れられないのだとして――愛せなかったら、愛されなかったら――そこに本人の意志はあるのだろうか。
番に出会えないせいで、二十年も一人きりのまだ見ぬ王に、リトはどこか同情に似た感情が湧いた。
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