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番外編
kissのタイミング side 幸太
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俺の恋愛初心者特有のヘタレっぷりには、俺自身も困っている。
“お試し”期間も含めれば、もう3ヶ月近く付き合っているのに、少し恋人らしいことをしようとするにも相当な勇気がいる。
つぐみを躊躇なく抱きよせられるようになったのも、つい最近のこと。
しかも、最初は何となく察してくれたつぐみの一言のお陰あってのこと…。
だから、kissは自分から自力で何としてもしたいと思っていた。
そう…思っていたのだが…何度となく頑張ってみたものの、半端ない緊張感に連敗を期していた。
どうしようも無くなり熊にも相談してみたが、そんなことを相談する時点で呆れられた。
『他の同年代の男なら、もうとっくに次の段階に行ってる筈だぞ?』
…分かってる…分かってるんだ。
俺が慎重になり過ぎてるって分かってる!
『勢いに任せてしまえば、楽にキスぐらい出来るだろう?』
と、熊に言われたけど、勢い任せて“お試し”だなんて口走って失敗し、一度はつぐみと別れる羽目になった俺は、二度とバカな失敗をしてつぐみと離れたくないという、自己強迫に陥っていた。
4つ歳上のつぐみには、少ないながらもそれなりに恋愛経験がある…。
しかも、キスには嫌な想い出もあるという。
だからこそ、せめて嫌な想い出を払拭出来るように、ちゃんとしたキスをしたいと思うのに、ヘタレの俺はいつも十数?しか離れていないつぐみの唇に近付いていけない。
その分…募る愛しさから、髪や顔へのキスが止まらなくなるのは許して欲しい。
今のところ、優しいつぐみはそれを嫌がることなく受け入れてくれているけど、最近スキンシップ中、つぐみの上目使いの大きな瞳が困った様に歪むことが増えた。
“今日こそは!!”
何度目かの決意を胸に、一緒に食事の後片付けをしていたキッチンから先に戻り、隣につぐみ専用の座布団をおいてお茶を淹れた。
キッチンの明かりを消して戻ってきたつぐみは、俺の隣にある座布団を見てちょっと恥ずかしそうに笑う。
それはスキンシップOKの暗黙の了解。
隣に座ったつぐみの腰を引き寄せて、ギュッと抱きしめ、いつもの様につぐみの頭に頬擦りする。
鼻孔を擽るつぐみのシャンプーの香りを胸いっぱいに吸い込んで、つむじにキスをする。
ゆっくり愛しさを込めて、つぐみのウェーブヘア掬って髪に、そして柔い頬に唇を落とす。
擽った気に少し赤みを帯びた顔で、恥ずかしげに微笑むつぐみが可愛くて堪らない。
「…つぐみ…可愛い…」
俺に身体を預けて、キュッと抱きつくつぐみの柔らかさと温かい体温を感じるだけで幸せな気持ちになる。
ふと、ポッと目許を赤らめたつぐみが、上目使いで俺を見つめる。
今が…多分…いや、絶対にkissをするタイミングなんだと思う。
だけど、あと数十cmの距離につぐみの唇があるのに、今日も俺の首は油切れした様に上手く動いてはくれない…。
つぐみの大きな瞳が何時ものように困った様に歪む。
(今日も俺はダメなのか…)
そう思った時だった。
俺の膝の上で横座りしていたつぐみが、少し腰を浮かせて座布団に戻ってしまった。
離れてしまった体温を寂しく思っていると、膝を跨ぐように座りなおし、首に腕を回してギュッと抱きついてきた。
いつもより密着度の上がった体勢に困惑していると、つぐみは俺の首筋に顔を埋めて、まるで猫みたいな仕草でぐりぐり頭を擦り付ける。
「つぐみ?」
「…」
頭を擦り付けるのを止めて、俺の胸にピタッとくっついてしまったつぐみの顔を覗き込む。
俯いているつぐみの表情は前髪に隠れてしまっている為、全ては見えない。
ただ、ムゥッと小さな唇を尖らせているのだけが見えた。
(…もしかして…つぐみ拗ねてる??)
俺は無意識にその唇に唇を寄せた。
そう、本当に無意識に…。
拗ねたつぐみをあやすように軽く吸い付いて、直ぐに離した。
つぐみは驚いた様に俺を上目遣いで見つめる。
今度はその瞳を見つめ、込み上げてくる愛しさを唇に乗せる。
啄む様なキスが、深いkissに変わるのにはそう時間はかからなかった。
つぐみの唇にそっと舌先で触れれば、つぐみは小さく開いてそれを受け入れてくれた。
ザラリとした柔らかい熱に触れれば、その感触の気持ち良さに直ぐに夢中になった。
「ふっ…ん…」
甘く鼻から抜けてくるつぐみの声が、少しずつ俺の理性を焼いていく。
それ以上をねだるような熱を自分の腰のあたりに感じた俺は、名残惜しく思いながらつぐみを俺から守るために静かに唇を離した。
「やっとkissしてくれた…」
「ゴメン…」
つぐみを抱きしめながら、俺は謝った。
「いつも大切にしてくれてありがとう。でも…もう少し私を信じて欲しい。」
「ん?信じてるよ?」
「だって…幸太くんはいつも“初めて”を気にしてるんだもん。上手くkiss出来なくても…幸太くんを嫌いになったりしないよ?」
(そっか…つぐみが拗ねたのは…)
愛しい…ただそれだけの気持ちだけがあれば良かったんだ。
俺は一人で何を怖がっていたんだろう…。
「つぐみを信じてない訳じゃないんだ。俺がヘタレなだけ。」
「…もう簡単に幸太くんから離れたりしないから安心して下さい!」
拗ねて見せるつぐみの唇に、また俺は引き寄せられる。
…多分、恋愛において…いや…つぐみに関してヘタレなのは、これからも変わらないと思う。
先は…どうなるか分からない。
だけど、つぐみの側にいるために、俺はカッコ悪く悩み続けるのかも知れない。
それでもいい…。
つぐみがいつまでも俺の側にいてくれるなら…。
Fin
“お試し”期間も含めれば、もう3ヶ月近く付き合っているのに、少し恋人らしいことをしようとするにも相当な勇気がいる。
つぐみを躊躇なく抱きよせられるようになったのも、つい最近のこと。
しかも、最初は何となく察してくれたつぐみの一言のお陰あってのこと…。
だから、kissは自分から自力で何としてもしたいと思っていた。
そう…思っていたのだが…何度となく頑張ってみたものの、半端ない緊張感に連敗を期していた。
どうしようも無くなり熊にも相談してみたが、そんなことを相談する時点で呆れられた。
『他の同年代の男なら、もうとっくに次の段階に行ってる筈だぞ?』
…分かってる…分かってるんだ。
俺が慎重になり過ぎてるって分かってる!
『勢いに任せてしまえば、楽にキスぐらい出来るだろう?』
と、熊に言われたけど、勢い任せて“お試し”だなんて口走って失敗し、一度はつぐみと別れる羽目になった俺は、二度とバカな失敗をしてつぐみと離れたくないという、自己強迫に陥っていた。
4つ歳上のつぐみには、少ないながらもそれなりに恋愛経験がある…。
しかも、キスには嫌な想い出もあるという。
だからこそ、せめて嫌な想い出を払拭出来るように、ちゃんとしたキスをしたいと思うのに、ヘタレの俺はいつも十数?しか離れていないつぐみの唇に近付いていけない。
その分…募る愛しさから、髪や顔へのキスが止まらなくなるのは許して欲しい。
今のところ、優しいつぐみはそれを嫌がることなく受け入れてくれているけど、最近スキンシップ中、つぐみの上目使いの大きな瞳が困った様に歪むことが増えた。
“今日こそは!!”
何度目かの決意を胸に、一緒に食事の後片付けをしていたキッチンから先に戻り、隣につぐみ専用の座布団をおいてお茶を淹れた。
キッチンの明かりを消して戻ってきたつぐみは、俺の隣にある座布団を見てちょっと恥ずかしそうに笑う。
それはスキンシップOKの暗黙の了解。
隣に座ったつぐみの腰を引き寄せて、ギュッと抱きしめ、いつもの様につぐみの頭に頬擦りする。
鼻孔を擽るつぐみのシャンプーの香りを胸いっぱいに吸い込んで、つむじにキスをする。
ゆっくり愛しさを込めて、つぐみのウェーブヘア掬って髪に、そして柔い頬に唇を落とす。
擽った気に少し赤みを帯びた顔で、恥ずかしげに微笑むつぐみが可愛くて堪らない。
「…つぐみ…可愛い…」
俺に身体を預けて、キュッと抱きつくつぐみの柔らかさと温かい体温を感じるだけで幸せな気持ちになる。
ふと、ポッと目許を赤らめたつぐみが、上目使いで俺を見つめる。
今が…多分…いや、絶対にkissをするタイミングなんだと思う。
だけど、あと数十cmの距離につぐみの唇があるのに、今日も俺の首は油切れした様に上手く動いてはくれない…。
つぐみの大きな瞳が何時ものように困った様に歪む。
(今日も俺はダメなのか…)
そう思った時だった。
俺の膝の上で横座りしていたつぐみが、少し腰を浮かせて座布団に戻ってしまった。
離れてしまった体温を寂しく思っていると、膝を跨ぐように座りなおし、首に腕を回してギュッと抱きついてきた。
いつもより密着度の上がった体勢に困惑していると、つぐみは俺の首筋に顔を埋めて、まるで猫みたいな仕草でぐりぐり頭を擦り付ける。
「つぐみ?」
「…」
頭を擦り付けるのを止めて、俺の胸にピタッとくっついてしまったつぐみの顔を覗き込む。
俯いているつぐみの表情は前髪に隠れてしまっている為、全ては見えない。
ただ、ムゥッと小さな唇を尖らせているのだけが見えた。
(…もしかして…つぐみ拗ねてる??)
俺は無意識にその唇に唇を寄せた。
そう、本当に無意識に…。
拗ねたつぐみをあやすように軽く吸い付いて、直ぐに離した。
つぐみは驚いた様に俺を上目遣いで見つめる。
今度はその瞳を見つめ、込み上げてくる愛しさを唇に乗せる。
啄む様なキスが、深いkissに変わるのにはそう時間はかからなかった。
つぐみの唇にそっと舌先で触れれば、つぐみは小さく開いてそれを受け入れてくれた。
ザラリとした柔らかい熱に触れれば、その感触の気持ち良さに直ぐに夢中になった。
「ふっ…ん…」
甘く鼻から抜けてくるつぐみの声が、少しずつ俺の理性を焼いていく。
それ以上をねだるような熱を自分の腰のあたりに感じた俺は、名残惜しく思いながらつぐみを俺から守るために静かに唇を離した。
「やっとkissしてくれた…」
「ゴメン…」
つぐみを抱きしめながら、俺は謝った。
「いつも大切にしてくれてありがとう。でも…もう少し私を信じて欲しい。」
「ん?信じてるよ?」
「だって…幸太くんはいつも“初めて”を気にしてるんだもん。上手くkiss出来なくても…幸太くんを嫌いになったりしないよ?」
(そっか…つぐみが拗ねたのは…)
愛しい…ただそれだけの気持ちだけがあれば良かったんだ。
俺は一人で何を怖がっていたんだろう…。
「つぐみを信じてない訳じゃないんだ。俺がヘタレなだけ。」
「…もう簡単に幸太くんから離れたりしないから安心して下さい!」
拗ねて見せるつぐみの唇に、また俺は引き寄せられる。
…多分、恋愛において…いや…つぐみに関してヘタレなのは、これからも変わらないと思う。
先は…どうなるか分からない。
だけど、つぐみの側にいるために、俺はカッコ悪く悩み続けるのかも知れない。
それでもいい…。
つぐみがいつまでも俺の側にいてくれるなら…。
Fin
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