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本編
困ったカフェラテ
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ふんわりと香る珈琲の香り。
そして、熱いスチームでミルクを泡立てる音。
仕事終わりの待ちわびた至福!
クリッとした大きな瞳を細めて、彼は笑顔でそれを私には差し出した。
「お待たせしました!トールのカフェラテです!」
受け取りカウンターのテーブルに置かれたマグカップを見た瞬間、手が止まる。
「…ありがとう。」
(まただ…)
私は曖昧に笑みを作りながら、マグカップを受け取った。
いつもの壁際の席に着いて、マグカップの中をこっそり覗く。
今日も彼の淹れたカフェラテには、ふんわりと淡くハートの模様が浮かび上がって、私の手元にやって来た。
(他の人が淹れてもこんな模様にならないのに…。)
ちなみに、私がいつも贔屓にしているカフェは、大手チェーンのカフェなので、ラテアートのサービスなどは存在していない。
最初は偶然の産物だと思ってラッキー♪とか思いながら画像を撮って、SNSにUPしたけど、これだけ度重なると…色々と考えてしまう…。
幾つかの大学を有する学生街とも言える駅のターミナルビルの1階に、2年ちょっと前に新しく出来たその店は、私にとっては帰宅前のガス抜き、若しくは意地でも家に仕事を持ち帰りたくない私の最後の足掻きの場。
そんな私のテリトリーに彼がアルバイトで入ったのは、1年前の春。
当時は少し重ための黒い前髪に黒縁の眼鏡をかけた初々しい純朴そうな笑顔を見せていた彼は、今やカフェの店員として清潔感を損なわない程度のダークブラウンの髪になり、透いて横分けに流した前髪から覗く瞳には、コンタクトレンズを着用するようになった。
今年の春の肌寒い日、いつも通りフラフラと疲れた身体を引きずりながらカフェに立ち寄り、彼のイメチェンを目の当たりにした私は…。
(おぅ…君も都会に染まるかぁ…。)
なんて心の中でオッサンぽく思っていたのだが…。
「いらっしゃいませ!いつも、ご利用ありがとうございます!」
「!?」
イメチェンした彼はカウンター越しに立った私の姿を見るなり、初めてそんな言葉をかけてきて、私は思わず目を瞠って彼を見た。
「…ビックリ…いつも私が来るの覚えて下さっているんですね。」
「はい!」
彼のはにかむ様な笑顔は、仕事帰りで化粧が半分以上剥げかけてる私には眩し過ぎる…。
しかもその日はここで仕事をこなして帰るつもりでいたので、長居する予定だったから尚のこと。
とりあえず、いつものカフェラテを注文して、暖色系の明かりが灯るペンダントライトの下で、私のカフェラテを淹れる彼の姿をこっそり眺めていた。
(うん…磨けば輝くと思ったが…やはりなぁ…君はイケメンの原石だったか…。)
まぁ…イケメンだからどうということも無いのだけども…。
強いていうなら私の仕事疲れを癒してくれる、目の保養が増えるぐらいだ。
「今日は寒いですから、温かいカフェラテを飲みながらゆっくりしていってください!」
ふんわり泡立ったミルクの様に甘く柔らかい笑顔とそんな彼の言葉に、更に癒された…。
あれ以来、カフェで彼と目線が合えば軽く挨拶ぐらいはするようになった。
彼のあの日カウンター越しに交わした言葉がキッカケで、他の店員も私を常連扱いするようになり、今までよりもゆったり寛げるようになった気がする。
仕事をテキパキこなす彼の姿は、他の女性客からも注目されているようで、今や彼は“看板ムスメ”ならぬ“看板イケメン”になっている。
バリスタスタイルの彼が店内を闊歩すれば、女性客の溜め息が漏れるぐらいだ。
そのせいか?
前は半々だった店員の男女比率は2対4と圧倒的に女子率の多くなった。
まぁ…元々カフェなんだから女の子の店員が多くても不思議はないし、常連の私としてはちゃんと仕事をしてくれれば、女の子が増えても特に文句はない。
同世代の可愛い女の子の店員さんと笑顔で会話しているところを見ると、やっぱりただの偶然か、常連の私への彼なりのサービスなのかも知れないと思う。
ハート模様のカフェラテをそっと含みながら、私はそう結論付けて、目の前の仕事の書類に目を向けた。
そして、熱いスチームでミルクを泡立てる音。
仕事終わりの待ちわびた至福!
クリッとした大きな瞳を細めて、彼は笑顔でそれを私には差し出した。
「お待たせしました!トールのカフェラテです!」
受け取りカウンターのテーブルに置かれたマグカップを見た瞬間、手が止まる。
「…ありがとう。」
(まただ…)
私は曖昧に笑みを作りながら、マグカップを受け取った。
いつもの壁際の席に着いて、マグカップの中をこっそり覗く。
今日も彼の淹れたカフェラテには、ふんわりと淡くハートの模様が浮かび上がって、私の手元にやって来た。
(他の人が淹れてもこんな模様にならないのに…。)
ちなみに、私がいつも贔屓にしているカフェは、大手チェーンのカフェなので、ラテアートのサービスなどは存在していない。
最初は偶然の産物だと思ってラッキー♪とか思いながら画像を撮って、SNSにUPしたけど、これだけ度重なると…色々と考えてしまう…。
幾つかの大学を有する学生街とも言える駅のターミナルビルの1階に、2年ちょっと前に新しく出来たその店は、私にとっては帰宅前のガス抜き、若しくは意地でも家に仕事を持ち帰りたくない私の最後の足掻きの場。
そんな私のテリトリーに彼がアルバイトで入ったのは、1年前の春。
当時は少し重ための黒い前髪に黒縁の眼鏡をかけた初々しい純朴そうな笑顔を見せていた彼は、今やカフェの店員として清潔感を損なわない程度のダークブラウンの髪になり、透いて横分けに流した前髪から覗く瞳には、コンタクトレンズを着用するようになった。
今年の春の肌寒い日、いつも通りフラフラと疲れた身体を引きずりながらカフェに立ち寄り、彼のイメチェンを目の当たりにした私は…。
(おぅ…君も都会に染まるかぁ…。)
なんて心の中でオッサンぽく思っていたのだが…。
「いらっしゃいませ!いつも、ご利用ありがとうございます!」
「!?」
イメチェンした彼はカウンター越しに立った私の姿を見るなり、初めてそんな言葉をかけてきて、私は思わず目を瞠って彼を見た。
「…ビックリ…いつも私が来るの覚えて下さっているんですね。」
「はい!」
彼のはにかむ様な笑顔は、仕事帰りで化粧が半分以上剥げかけてる私には眩し過ぎる…。
しかもその日はここで仕事をこなして帰るつもりでいたので、長居する予定だったから尚のこと。
とりあえず、いつものカフェラテを注文して、暖色系の明かりが灯るペンダントライトの下で、私のカフェラテを淹れる彼の姿をこっそり眺めていた。
(うん…磨けば輝くと思ったが…やはりなぁ…君はイケメンの原石だったか…。)
まぁ…イケメンだからどうということも無いのだけども…。
強いていうなら私の仕事疲れを癒してくれる、目の保養が増えるぐらいだ。
「今日は寒いですから、温かいカフェラテを飲みながらゆっくりしていってください!」
ふんわり泡立ったミルクの様に甘く柔らかい笑顔とそんな彼の言葉に、更に癒された…。
あれ以来、カフェで彼と目線が合えば軽く挨拶ぐらいはするようになった。
彼のあの日カウンター越しに交わした言葉がキッカケで、他の店員も私を常連扱いするようになり、今までよりもゆったり寛げるようになった気がする。
仕事をテキパキこなす彼の姿は、他の女性客からも注目されているようで、今や彼は“看板ムスメ”ならぬ“看板イケメン”になっている。
バリスタスタイルの彼が店内を闊歩すれば、女性客の溜め息が漏れるぐらいだ。
そのせいか?
前は半々だった店員の男女比率は2対4と圧倒的に女子率の多くなった。
まぁ…元々カフェなんだから女の子の店員が多くても不思議はないし、常連の私としてはちゃんと仕事をしてくれれば、女の子が増えても特に文句はない。
同世代の可愛い女の子の店員さんと笑顔で会話しているところを見ると、やっぱりただの偶然か、常連の私への彼なりのサービスなのかも知れないと思う。
ハート模様のカフェラテをそっと含みながら、私はそう結論付けて、目の前の仕事の書類に目を向けた。
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