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幕間2
日和の別荘3
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目が覚めると、部屋はすっかり明るくなっていた。眠る前は全く見えなかった物体の輪郭が今ははっきりと見える。
普段寝ないベッドだから眠るのに苦戦すると思っていたが杞憂だったらしい。それだけ疲れていたのだろう。
今何時だろう。
横になっている向きとは反対方向にスマホが置かれている。僕は寝返りを打つことで近づくことにした。
すると、すぐに邪魔が入る。背中に物が触れて僕の行動を妨げたのだ。このまま仰向けになろうものならベッドから落ちるほど端にいるためすぐ後ろに壁があるのはおかしい。それに壁にしては柔らかすぎる。
「あ……起きたみたいだね」
不意に耳元で聞き馴染みのある声が聞こえる。反射的に距離を取ろうとして思わずベッドから落ちる。
「いたたた……」
元の状態から半回転して落下。左腕を打ちつける形となる。
「文也、大丈夫!?」
先ほどと同じ声の主が僕を呼ぶ。
「なんとか……それよりも、なんで日和がここ……に……?」
痛みを堪えながら僕が寝ていたベッドの方を向く。そこで見た光景に僕は目を瞬かせた。
僕の視界が捉える日和の上半身は明らかに肌の露出度が高かった。白色の布で胸の部分が隠されているだけだ。綺麗な肌が窓から差し込む日に当たって光っている。
「なんで下着姿?」
もしかして僕は何か変なことをしてしまったのだろうか。全く記憶にない。
「下着じゃないよ。水着だよ」
日和はベッドから降りて僕の足元に立つ。ミニスカートのようなフリルのついたものを着ている。もちろん色は白で統一されている。
「ああ、なるほど」
僕が寝ている間、他の人たちは庭のプールを楽しんでいたらしい。
「似合ってるかな?」
起き上がったタイミングで日和が聞いてくる。照れくさいのか頬を赤らめた。
「すごく似合ってるよ。ちょっと刺激的なくらい……」
あまり直視するのは憚られるので視線を背ける。部屋にある掛け時計は11時過ぎを示していた。目覚ましをかけるつもりだったが、結局いつもと変わらない時間に起きてしまったな。
「私の水着姿は直視できないか。文也は可愛いね」
日和はベッドに上がり、僕の視界に無理やり入ってくる。目を背けるためにベッドに座ると、彼女もまた隣に座った。
「もうプールで遊ばなくていいの?」
「私はただ他の子達が遊ぶのを見ていただけだから」
だから水着が濡れていなかったのか。
「水着を着たのは文也に見てもらいたかったからなんだけど、本人はぐっすり眠って降りて来ないし」
「ごめんね」
僕がそう言うと不意に両方のこめかみを手で覆われる。そのまま引っ張られ、視線を日和に向けられた。綺麗な形をした二つの丘が逆さになって僕の前に現れる。その下には大きくなった砂時計があった。
「ごめんねと思うならじっくり見てね。じゃないと、私の着損だから」
「……もう十分見たから」
「この姿を見れるのはこれで最後かもしれないよ?」
「じゃあ、写真撮ろうか?」
「私の意図を汲み取ってよ」
それから数分、日和の水着を強制的に見せられることとなった。顔を解放されてからようやく自由の身になる。日和の方を見ると、彼女は胸元を両腕で隠していた。今になって自分の行動に恥ずかしさを覚えたらしい。遅過ぎやしないだろうか。
「文也っていつもこの時間まで寝てるの?」
「そうだね。起きた時は正午近くになっていることが多い」
「であれば学校生活は大変そうだね」
「そう感じてくれるならありがたいよ。加えてこれだけ寝ても午後4時くらいになったら、また眠くなるんだから勘弁して欲しいんだけどね。過剰に寝るだけならまだしも、帳尻を合わせるように全く眠れない日もあるからね」
「ははは……本当に大変なんだね」
「まあ、もう何十年も付き合ってきたから慣れたけど。じゃあ、僕たちも下に行こっか」
行く準備をするために立ち上がる。
「あ、ちょっと待って」
移動しようとした瞬間、日和に手を掴まれた。勢いよく引っ張られ、再び元の位置に戻される。
「ど、どうしたの?」
強引に戻されたことに驚く。只事ではないみたいだ。
「えっと……実は文也に一つ尋ねたいことがあって」
日和はベッドに置いた自分のスマホを手に取り、操作を始める。
尋ねたいこととは一体なんだろう。記憶を探っていると目の前にスマホの画面が現れる。
「これって……」
僕は思わず目を丸くした。スマホの画面にはSNSのアプリが映し出されており、そこでは『大宮茜』と言う名前で検索をかけられていた。
「昨日言ってた文也の親友ってこの中にいる?」
日和はスマホの横から顔を出して聞いてくる。
どうやら昨日の奏さんとの話を聞かれてしまっていたようだ。一番聞かれたらまずい人物に聞かれてしまった。それも、まさかSNSで検索をかけてしまうとは。
「その……特に他意はないんだよ。ほら、茜って言うからには女の子だよね? なら、文也の彼女として親友の女の子の情報は知っておいた方がいいかなと思って。今後のためにも」
日和は僕の親友のことを僕の母親かなにかだと思っているのだろうか。女の子の親友がいたとして自分の彼女をその子に紹介するみたいなことは起こらない気がするけど。
さて、どうしたものか。一応スマホの画面の中にはいるっちゃいる。『大宮茜』という名前の中では一番の知名度を誇っているから。
だが、あるからと言って指をさしていいものか。ここは「ない」と言ったり、画像のないアイコンアカウントを指さすのが賢明ではないだろうか。
ただ、SNSで検索かけるくらい日和は僕の親友について気になっているのだ。ここで無難にやり過ごしても、何とか大宮さんに会おうとしてくるだろう。
いつかは絶対ボロが出る。ならここは真実を言ってしまった方がいいに違いない。四宮先生に汚名がつかない程度に。
「日和、落ち着いて聞いてもらっていい?」
僕が尋ねると、日和は目を丸くする。
「うん……」
「僕の言っていた『大宮茜』は……一番……上にいる人なんだ」
今後の自分の人生に関わるであろう出来事のため、言い淀まずにはいられなかった。僕は今、地上100メートルにある細長い橋の上を渡り始めた。
「一番上の人……」
スマホを自身に向け、操作し始める日和。その顔が一気に赤く染まる。湯気が出そうな勢いだ。おそらくプロフィール欄に書かれた文言を読んでしまったのだろう。
「文也の友達って……えと……あの……」
「ちょっと待って!」
日和が言おうとした単語を無理やり止める。
「彼女は親友じゃないんだ。もっと言えば顔見知りでもない」
「えっ……じゃあ……」
「実は、和光さんとその手の話をしていた時に奏さんが教室にやってきてね。そこで、和光さんが口を滑らせたから僕が慌てて『大宮茜さんが親友である』と言う設定を作ったんだ」
ごめん、和光さん。僕は心の中で何度も唱えながら説明する。ここにいないメンバーで僕と大きな交流があるのは四宮先生か和光さんしかいない。前者は使えないため、必然的に後者に行かざるを得ない。
「わ、和光さんが……それよりも、文也って和光さんとそんな話を教室でするくらい仲がいいんだ。というか、教室で異性とそんな話できちゃうんだ」
あらぬ誤解を抱かれてしまったが、背に腹は変えられない。
「つまり、話題に出るってことはこの人は文也が好きな人、それとも和光さんが好きな人?」
再びスマホの画面を見せられる。もうこれ以上、和光さんを傷つけるわけにはいかないな。
「えっと……僕の好きな人です」
回答を得て、日和は「ふーん」と言いながらスマホの画面を操作する。それから「ふふっ」と朗らかに笑う。
「文也ってお姉さんっぽい人が好きなんだね」
日和は不敵な笑みを浮かべていた。その表情は四宮先生を連想させた。
普段寝ないベッドだから眠るのに苦戦すると思っていたが杞憂だったらしい。それだけ疲れていたのだろう。
今何時だろう。
横になっている向きとは反対方向にスマホが置かれている。僕は寝返りを打つことで近づくことにした。
すると、すぐに邪魔が入る。背中に物が触れて僕の行動を妨げたのだ。このまま仰向けになろうものならベッドから落ちるほど端にいるためすぐ後ろに壁があるのはおかしい。それに壁にしては柔らかすぎる。
「あ……起きたみたいだね」
不意に耳元で聞き馴染みのある声が聞こえる。反射的に距離を取ろうとして思わずベッドから落ちる。
「いたたた……」
元の状態から半回転して落下。左腕を打ちつける形となる。
「文也、大丈夫!?」
先ほどと同じ声の主が僕を呼ぶ。
「なんとか……それよりも、なんで日和がここ……に……?」
痛みを堪えながら僕が寝ていたベッドの方を向く。そこで見た光景に僕は目を瞬かせた。
僕の視界が捉える日和の上半身は明らかに肌の露出度が高かった。白色の布で胸の部分が隠されているだけだ。綺麗な肌が窓から差し込む日に当たって光っている。
「なんで下着姿?」
もしかして僕は何か変なことをしてしまったのだろうか。全く記憶にない。
「下着じゃないよ。水着だよ」
日和はベッドから降りて僕の足元に立つ。ミニスカートのようなフリルのついたものを着ている。もちろん色は白で統一されている。
「ああ、なるほど」
僕が寝ている間、他の人たちは庭のプールを楽しんでいたらしい。
「似合ってるかな?」
起き上がったタイミングで日和が聞いてくる。照れくさいのか頬を赤らめた。
「すごく似合ってるよ。ちょっと刺激的なくらい……」
あまり直視するのは憚られるので視線を背ける。部屋にある掛け時計は11時過ぎを示していた。目覚ましをかけるつもりだったが、結局いつもと変わらない時間に起きてしまったな。
「私の水着姿は直視できないか。文也は可愛いね」
日和はベッドに上がり、僕の視界に無理やり入ってくる。目を背けるためにベッドに座ると、彼女もまた隣に座った。
「もうプールで遊ばなくていいの?」
「私はただ他の子達が遊ぶのを見ていただけだから」
だから水着が濡れていなかったのか。
「水着を着たのは文也に見てもらいたかったからなんだけど、本人はぐっすり眠って降りて来ないし」
「ごめんね」
僕がそう言うと不意に両方のこめかみを手で覆われる。そのまま引っ張られ、視線を日和に向けられた。綺麗な形をした二つの丘が逆さになって僕の前に現れる。その下には大きくなった砂時計があった。
「ごめんねと思うならじっくり見てね。じゃないと、私の着損だから」
「……もう十分見たから」
「この姿を見れるのはこれで最後かもしれないよ?」
「じゃあ、写真撮ろうか?」
「私の意図を汲み取ってよ」
それから数分、日和の水着を強制的に見せられることとなった。顔を解放されてからようやく自由の身になる。日和の方を見ると、彼女は胸元を両腕で隠していた。今になって自分の行動に恥ずかしさを覚えたらしい。遅過ぎやしないだろうか。
「文也っていつもこの時間まで寝てるの?」
「そうだね。起きた時は正午近くになっていることが多い」
「であれば学校生活は大変そうだね」
「そう感じてくれるならありがたいよ。加えてこれだけ寝ても午後4時くらいになったら、また眠くなるんだから勘弁して欲しいんだけどね。過剰に寝るだけならまだしも、帳尻を合わせるように全く眠れない日もあるからね」
「ははは……本当に大変なんだね」
「まあ、もう何十年も付き合ってきたから慣れたけど。じゃあ、僕たちも下に行こっか」
行く準備をするために立ち上がる。
「あ、ちょっと待って」
移動しようとした瞬間、日和に手を掴まれた。勢いよく引っ張られ、再び元の位置に戻される。
「ど、どうしたの?」
強引に戻されたことに驚く。只事ではないみたいだ。
「えっと……実は文也に一つ尋ねたいことがあって」
日和はベッドに置いた自分のスマホを手に取り、操作を始める。
尋ねたいこととは一体なんだろう。記憶を探っていると目の前にスマホの画面が現れる。
「これって……」
僕は思わず目を丸くした。スマホの画面にはSNSのアプリが映し出されており、そこでは『大宮茜』と言う名前で検索をかけられていた。
「昨日言ってた文也の親友ってこの中にいる?」
日和はスマホの横から顔を出して聞いてくる。
どうやら昨日の奏さんとの話を聞かれてしまっていたようだ。一番聞かれたらまずい人物に聞かれてしまった。それも、まさかSNSで検索をかけてしまうとは。
「その……特に他意はないんだよ。ほら、茜って言うからには女の子だよね? なら、文也の彼女として親友の女の子の情報は知っておいた方がいいかなと思って。今後のためにも」
日和は僕の親友のことを僕の母親かなにかだと思っているのだろうか。女の子の親友がいたとして自分の彼女をその子に紹介するみたいなことは起こらない気がするけど。
さて、どうしたものか。一応スマホの画面の中にはいるっちゃいる。『大宮茜』という名前の中では一番の知名度を誇っているから。
だが、あるからと言って指をさしていいものか。ここは「ない」と言ったり、画像のないアイコンアカウントを指さすのが賢明ではないだろうか。
ただ、SNSで検索かけるくらい日和は僕の親友について気になっているのだ。ここで無難にやり過ごしても、何とか大宮さんに会おうとしてくるだろう。
いつかは絶対ボロが出る。ならここは真実を言ってしまった方がいいに違いない。四宮先生に汚名がつかない程度に。
「日和、落ち着いて聞いてもらっていい?」
僕が尋ねると、日和は目を丸くする。
「うん……」
「僕の言っていた『大宮茜』は……一番……上にいる人なんだ」
今後の自分の人生に関わるであろう出来事のため、言い淀まずにはいられなかった。僕は今、地上100メートルにある細長い橋の上を渡り始めた。
「一番上の人……」
スマホを自身に向け、操作し始める日和。その顔が一気に赤く染まる。湯気が出そうな勢いだ。おそらくプロフィール欄に書かれた文言を読んでしまったのだろう。
「文也の友達って……えと……あの……」
「ちょっと待って!」
日和が言おうとした単語を無理やり止める。
「彼女は親友じゃないんだ。もっと言えば顔見知りでもない」
「えっ……じゃあ……」
「実は、和光さんとその手の話をしていた時に奏さんが教室にやってきてね。そこで、和光さんが口を滑らせたから僕が慌てて『大宮茜さんが親友である』と言う設定を作ったんだ」
ごめん、和光さん。僕は心の中で何度も唱えながら説明する。ここにいないメンバーで僕と大きな交流があるのは四宮先生か和光さんしかいない。前者は使えないため、必然的に後者に行かざるを得ない。
「わ、和光さんが……それよりも、文也って和光さんとそんな話を教室でするくらい仲がいいんだ。というか、教室で異性とそんな話できちゃうんだ」
あらぬ誤解を抱かれてしまったが、背に腹は変えられない。
「つまり、話題に出るってことはこの人は文也が好きな人、それとも和光さんが好きな人?」
再びスマホの画面を見せられる。もうこれ以上、和光さんを傷つけるわけにはいかないな。
「えっと……僕の好きな人です」
回答を得て、日和は「ふーん」と言いながらスマホの画面を操作する。それから「ふふっ」と朗らかに笑う。
「文也ってお姉さんっぽい人が好きなんだね」
日和は不敵な笑みを浮かべていた。その表情は四宮先生を連想させた。
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