79 / 99
2章:千丈真奈(部員を5人集めよ)
イベント予行演習
しおりを挟む
学校を出た僕らは最寄りのファミレスに足を運んだ。
店員さんにドリンクバーを注文する。千丈先輩だけは追加でパフェを頼んだ。
「へー、星宮さんはコーヒーを飲むんですね」
ドリンクコーナーでは、日和と僕と千丈先輩はジュースの出る機械を交代で使っていた。だが、星宮さんだけは隣の温かい飲み物に表示されたコーヒーを入れていた。
「カフェイン中毒ですから。とは言っても、ミルクと砂糖がないと飲めないんですけどね」
星宮さんはコーヒーを注いだカップを受け皿に乗せる。そこにさらに砂糖とミルクを加えた。コーヒーを持つ星宮さんの姿は様になっていた。
ふと、後ろから視線を感じる。振り向いて見ると日和の姿があった。穏やかな笑みを浮かべてこちらを見ている。
「何かあった?」
「うんうん。ただ、二人の関係が不思議だなと思ってね。近そうに見えるし、遠そうにも見えるっていうか」
「……僕は日和のこと」
「皆まで言わなくても分かってる。だからこそ、星宮さんのことを気にかけてあげてね」
「……何かあった?」
日和は星宮さんに対して敵意を持っていると思っていた。しかし、今は全く敵意を全く感じない。何かがあったとしか思えない。
「あの子。きっと私たちと同じ気がするの。だから気を使ってあげたいというか、気を使ってほしいというか……」
気持ちが反映されたのか曖昧な言葉を並べる。
でも、なんとなく気持ちは察した。さっきの星宮さんの謝罪から何かを察知したようだ。
「分かった」
会話を終え、僕たちは席に戻った。
千丈先輩から「遅かったね」と言われたが、先ほどの話はせず、雑に誤魔化した。千丈先輩は気にしなかったが、星宮さんは訝しんだ。
「それで、今からは何をやるんですか?」
追求されるのは面倒だと考え、千丈先輩に話を促す。
「イベントの予行練習だよ」
うまく乗っかってもらえた。彼女は鞄から『イベント告知』の知らせを取り出してテーブルの上に置いた。
「ここにあるゲームの予行練習をしようと思ってね。まずは『NGワードゲーム』からやろうか」
タイムテーブルにある『ゲームコーナ』の一番上に記載された文字を指さして言う。
「定番のゲームですね」
星宮さんがボソッと呟く。
「ルールは一般的なやつと同じですか?」
「やることは一緒だね。違う点があるとすればポイント制ってところかな」
「「「ポイント制?」」」
『NGワードゲーム』では聞き慣れない制度だ。
「そんなに難しいルールじゃないよ。喋った人に1ポイント入るってだけ。例えば最上くんが喋ります。最上くんの話を受けてひよちゃんが喋ります。ひよちゃんの話を受けてさらに最上くんが喋ります。この場合、最上くんには2ポイント、ひよちゃんには1ポイントが入るって感じ。長々と話すんじゃなくて、如何に会話のキャッチボールができるかがポイントを増やすコツだよ。ただし、NGワードを言ってしまったら持ち点が0になってしまうので気をつけてね」
なるほど。このルールなら、必勝法である『喋らない』が通じない。よくできたルールだと思った。
「3ゲームやって一番ポイントを持っている人が勝ち。NGワードを決めるのは時計周りで自分の前の人ってことにしよう」
現在の座っている位置は僕の向かいに日和、隣に星宮さん、対角線上に千丈先輩となっている。つまり、僕→日和→千丈先輩→星宮さん→僕と言った形になる。
「あと、NGワードは代名詞を除く名詞ね。それと、NGワードが被ったらやり直しね」
『でも』や『私』と言った頻繁なワードは使えないわけか。
この四人で話す内容としては言遊部についてだろう。それもイベントあるいはポスターについてだと思われる。
だが、言遊部関連の単語が書かれることは察しがつくだろう。そのため、言遊部関連に出てくるが、予想がつかない単語を書く必要がある。
『杏子』
これだな。
飯塚先輩の名前であれば、察しがつきにくいし、言遊部の話題で上がる可能性も高い。それに誘導がしやすい。
全員決まったところで千丈先輩が用意してくれたルーズリーフにNGワードを書いて三角形に折ってから日和に渡す。
日和は『杏子』、千丈先輩は『結花』、星宮さんは『イベント』と書かれていた。僕の持っているスマホの画面を見た日和と千丈先輩は眉を上げた。驚いている様子だが、一体何が書かれているのだろうか。
星宮さんの方を見ると、彼女は笑みを浮かべて僕を見ていた。始まるのを楽しみにしている雰囲気がある。
「では、用意ができたので」
千丈先輩は咳払いをして一拍おく。それから陽気に声を発した。
「NGワードゲーム開始!」
店員さんにドリンクバーを注文する。千丈先輩だけは追加でパフェを頼んだ。
「へー、星宮さんはコーヒーを飲むんですね」
ドリンクコーナーでは、日和と僕と千丈先輩はジュースの出る機械を交代で使っていた。だが、星宮さんだけは隣の温かい飲み物に表示されたコーヒーを入れていた。
「カフェイン中毒ですから。とは言っても、ミルクと砂糖がないと飲めないんですけどね」
星宮さんはコーヒーを注いだカップを受け皿に乗せる。そこにさらに砂糖とミルクを加えた。コーヒーを持つ星宮さんの姿は様になっていた。
ふと、後ろから視線を感じる。振り向いて見ると日和の姿があった。穏やかな笑みを浮かべてこちらを見ている。
「何かあった?」
「うんうん。ただ、二人の関係が不思議だなと思ってね。近そうに見えるし、遠そうにも見えるっていうか」
「……僕は日和のこと」
「皆まで言わなくても分かってる。だからこそ、星宮さんのことを気にかけてあげてね」
「……何かあった?」
日和は星宮さんに対して敵意を持っていると思っていた。しかし、今は全く敵意を全く感じない。何かがあったとしか思えない。
「あの子。きっと私たちと同じ気がするの。だから気を使ってあげたいというか、気を使ってほしいというか……」
気持ちが反映されたのか曖昧な言葉を並べる。
でも、なんとなく気持ちは察した。さっきの星宮さんの謝罪から何かを察知したようだ。
「分かった」
会話を終え、僕たちは席に戻った。
千丈先輩から「遅かったね」と言われたが、先ほどの話はせず、雑に誤魔化した。千丈先輩は気にしなかったが、星宮さんは訝しんだ。
「それで、今からは何をやるんですか?」
追求されるのは面倒だと考え、千丈先輩に話を促す。
「イベントの予行練習だよ」
うまく乗っかってもらえた。彼女は鞄から『イベント告知』の知らせを取り出してテーブルの上に置いた。
「ここにあるゲームの予行練習をしようと思ってね。まずは『NGワードゲーム』からやろうか」
タイムテーブルにある『ゲームコーナ』の一番上に記載された文字を指さして言う。
「定番のゲームですね」
星宮さんがボソッと呟く。
「ルールは一般的なやつと同じですか?」
「やることは一緒だね。違う点があるとすればポイント制ってところかな」
「「「ポイント制?」」」
『NGワードゲーム』では聞き慣れない制度だ。
「そんなに難しいルールじゃないよ。喋った人に1ポイント入るってだけ。例えば最上くんが喋ります。最上くんの話を受けてひよちゃんが喋ります。ひよちゃんの話を受けてさらに最上くんが喋ります。この場合、最上くんには2ポイント、ひよちゃんには1ポイントが入るって感じ。長々と話すんじゃなくて、如何に会話のキャッチボールができるかがポイントを増やすコツだよ。ただし、NGワードを言ってしまったら持ち点が0になってしまうので気をつけてね」
なるほど。このルールなら、必勝法である『喋らない』が通じない。よくできたルールだと思った。
「3ゲームやって一番ポイントを持っている人が勝ち。NGワードを決めるのは時計周りで自分の前の人ってことにしよう」
現在の座っている位置は僕の向かいに日和、隣に星宮さん、対角線上に千丈先輩となっている。つまり、僕→日和→千丈先輩→星宮さん→僕と言った形になる。
「あと、NGワードは代名詞を除く名詞ね。それと、NGワードが被ったらやり直しね」
『でも』や『私』と言った頻繁なワードは使えないわけか。
この四人で話す内容としては言遊部についてだろう。それもイベントあるいはポスターについてだと思われる。
だが、言遊部関連の単語が書かれることは察しがつくだろう。そのため、言遊部関連に出てくるが、予想がつかない単語を書く必要がある。
『杏子』
これだな。
飯塚先輩の名前であれば、察しがつきにくいし、言遊部の話題で上がる可能性も高い。それに誘導がしやすい。
全員決まったところで千丈先輩が用意してくれたルーズリーフにNGワードを書いて三角形に折ってから日和に渡す。
日和は『杏子』、千丈先輩は『結花』、星宮さんは『イベント』と書かれていた。僕の持っているスマホの画面を見た日和と千丈先輩は眉を上げた。驚いている様子だが、一体何が書かれているのだろうか。
星宮さんの方を見ると、彼女は笑みを浮かべて僕を見ていた。始まるのを楽しみにしている雰囲気がある。
「では、用意ができたので」
千丈先輩は咳払いをして一拍おく。それから陽気に声を発した。
「NGワードゲーム開始!」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
高校では誰とも関わらず平穏に過ごしたい陰キャぼっち、美少女たちのせいで実はハイスペックなことが発覚して成りあがってしまう
電脳ピエロ
恋愛
中学時代の経験から、五十嵐 純二は高校では誰とも関わらず陰キャぼっちとして学校生活を送りたいと思っていた。
そのため入学試験でも実力を隠し、最底辺としてスタートした高校生活。
しかし純二の周りには彼の実力隠しを疑う同級生の美少女や、真の実力を知る謎の美人教師など、平穏を脅かす存在が現れ始め……。
「俺は絶対に平穏な高校生活を守り抜く」
そんな純二の願いも虚しく、彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。
やがて純二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。
実力を隠して平穏に過ごしたい実はハイスペックな陰キャぼっち VS 彼の真の実力を暴きたい美少女たち。
彼らの心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。
陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。
電脳ピエロ
恋愛
藤堂 薫は大学で共に行動している陽キャグループの男子2人、大熊 快児と蜂羽 強太から理不尽に追い出されてしまう。
ひとりで気ままに大学生活を送ることを決める薫だったが、薫が以前関わっていた陽キャグループの女子2人、七瀬 瑠奈と宮波 美緒は男子2人が理不尽に薫を追放した事実を知り、彼らと縁を切って薫と積極的に関わろうとしてくる。
しかも、なぜか今まで関わりのなかった同じ大学の美女たちが寄ってくるようになり……。
薫を上手く追放したはずなのにグループの女子全員から縁を切られる性格最悪な男子2人。彼らは瑠奈や美緒を呼び戻そうとするがことごとく無視され、それからも散々な目にあって行くことになる。
やがて自分たちが女子たちと関われていたのは薫のおかげだと気が付き、グループに戻ってくれと言うがもう遅い。薫は居心地のいいグループで楽しく大学生活を送っているのだから。
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
となりに美少女が引っ越してきた
プーヤン
恋愛
人間を信用することが出来なくなり、晴れてクラス内でボッチとなった僕。そんな僕の隣の家に急に美少女が引っ越してきた。そして、同じ学校にも転校してきて……
その女の子はピアノの才能にも恵まれており、何故か僕と関わることになる。
ピアノの英才教育を受けて育った高飛車な女の子と拗らせ系ボッチの物語。
昔、書いてた短編の連載版です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる