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2章:千丈真奈(部員を5人集めよ)

イベント予行演習

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 学校を出た僕らは最寄りのファミレスに足を運んだ。
 店員さんにドリンクバーを注文する。千丈先輩だけは追加でパフェを頼んだ。

「へー、星宮さんはコーヒーを飲むんですね」

 ドリンクコーナーでは、日和と僕と千丈先輩はジュースの出る機械を交代で使っていた。だが、星宮さんだけは隣の温かい飲み物に表示されたコーヒーを入れていた。

「カフェイン中毒ですから。とは言っても、ミルクと砂糖がないと飲めないんですけどね」

 星宮さんはコーヒーを注いだカップを受け皿に乗せる。そこにさらに砂糖とミルクを加えた。コーヒーを持つ星宮さんの姿は様になっていた。

 ふと、後ろから視線を感じる。振り向いて見ると日和の姿があった。穏やかな笑みを浮かべてこちらを見ている。

「何かあった?」

「うんうん。ただ、二人の関係が不思議だなと思ってね。近そうに見えるし、遠そうにも見えるっていうか」

「……僕は日和のこと」

「皆まで言わなくても分かってる。だからこそ、星宮さんのことを気にかけてあげてね」

「……何かあった?」

 日和は星宮さんに対して敵意を持っていると思っていた。しかし、今は全く敵意を全く感じない。何かがあったとしか思えない。

「あの子。きっと私たちと同じ気がするの。だから気を使ってあげたいというか、気を使ってほしいというか……」

 気持ちが反映されたのか曖昧な言葉を並べる。
 でも、なんとなく気持ちは察した。さっきの星宮さんの謝罪から何かを察知したようだ。

「分かった」

 会話を終え、僕たちは席に戻った。
 千丈先輩から「遅かったね」と言われたが、先ほどの話はせず、雑に誤魔化した。千丈先輩は気にしなかったが、星宮さんは訝しんだ。

「それで、今からは何をやるんですか?」

 追求されるのは面倒だと考え、千丈先輩に話を促す。

「イベントの予行練習だよ」

 うまく乗っかってもらえた。彼女は鞄から『イベント告知』の知らせを取り出してテーブルの上に置いた。

「ここにあるゲームの予行練習をしようと思ってね。まずは『NGワードゲーム』からやろうか」

 タイムテーブルにある『ゲームコーナ』の一番上に記載された文字を指さして言う。

「定番のゲームですね」

 星宮さんがボソッと呟く。

「ルールは一般的なやつと同じですか?」

「やることは一緒だね。違う点があるとすればポイント制ってところかな」

「「「ポイント制?」」」

『NGワードゲーム』では聞き慣れない制度だ。

「そんなに難しいルールじゃないよ。喋った人に1ポイント入るってだけ。例えば最上くんが喋ります。最上くんの話を受けてひよちゃんが喋ります。ひよちゃんの話を受けてさらに最上くんが喋ります。この場合、最上くんには2ポイント、ひよちゃんには1ポイントが入るって感じ。長々と話すんじゃなくて、如何に会話のキャッチボールができるかがポイントを増やすコツだよ。ただし、NGワードを言ってしまったら持ち点が0になってしまうので気をつけてね」

 なるほど。このルールなら、必勝法である『喋らない』が通じない。よくできたルールだと思った。

「3ゲームやって一番ポイントを持っている人が勝ち。NGワードを決めるのは時計周りで自分の前の人ってことにしよう」

 現在の座っている位置は僕の向かいに日和、隣に星宮さん、対角線上に千丈先輩となっている。つまり、僕→日和→千丈先輩→星宮さん→僕と言った形になる。

「あと、NGワードは代名詞を除く名詞ね。それと、NGワードが被ったらやり直しね」

『でも』や『私』と言った頻繁なワードは使えないわけか。
 この四人で話す内容としては言遊部についてだろう。それもイベントあるいはポスターについてだと思われる。

 だが、言遊部関連の単語が書かれることは察しがつくだろう。そのため、言遊部関連に出てくるが、予想がつかない単語を書く必要がある。

『杏子』

 これだな。
 飯塚先輩の名前であれば、察しがつきにくいし、言遊部の話題で上がる可能性も高い。それに誘導がしやすい。

 全員決まったところで千丈先輩が用意してくれたルーズリーフにNGワードを書いて三角形に折ってから日和に渡す。

 日和は『杏子』、千丈先輩は『結花』、星宮さんは『イベント』と書かれていた。僕の持っているスマホの画面を見た日和と千丈先輩は眉を上げた。驚いている様子だが、一体何が書かれているのだろうか。

 星宮さんの方を見ると、彼女は笑みを浮かべて僕を見ていた。始まるのを楽しみにしている雰囲気がある。

「では、用意ができたので」

 千丈先輩は咳払いをして一拍おく。それから陽気に声を発した。

「NGワードゲーム開始!」
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