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2章:千丈真奈(部員を5人集めよ)

ポスター掲示

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「「「おぉぉぉぉ!」」」

 掲示板に貼られたポスターを見て、僕と日和と千丈先輩は感嘆の声を上げた。星宮さんだけはリアクションが薄かった。

 ここ数日間、話し合いを続けてようやく形になったポスターだ。努力の結晶が募っているだけあって完成したものを目の当たりにすると感動を覚える。あとでもう一度結花にお礼を言っておこう。

「これぞポスターって感じだね」

 千丈先輩は感動のあまり目尻に涙を浮かべていた。

「結花ちゃんの言うとおり目立つものにして正解だね。明日の朝はきっとみんなが注目してくれると思うよ」

 日和もポスターに目を奪われながら口を動かす。

「イベント告知のチラシも結花にお願いしてたんですね」

 僕は千丈先輩が持っている紙の束に視線を送った。
 B6サイズの用紙が百枚ほど束ねてある。そこにはイベントを知らせる告知が描かれていた。日時、場所、内容が記載されている。

「うん。本当は私がプリントする予定だったんだけどね。結花ちゃんには本当に頭が上がらないよ」

 結花は千丈先輩にチラシを渡す際に「試し刷りしたついでに枚数分刷った」と言っていた。

 おそらく、それは建前だ。
 本当は早めに告知できるように自分の方で刷っておいたのだろう。

 千丈先輩が刷った場合、今夜刷って、翌日の部活でみんなに渡し、翌々日の朝にチラシ配りを行うこととなる。しかし、結花が刷れば、今このタイミングで渡し、翌日にチラシ配りを行うことができる。

 1日早く行動ができれば、イベントを告知できる範囲はより広くなるはずだ。それを見越して自分の方で刷ったのだろう。

「それにしても、いつの間に内容はおろかタイムテーブルまで決まったんですね」

「文也が寝てる間にみんなで考えたの」

「最上さん、サボりはあんまり良くないんじゃないですか?」

 後ろにいた星宮さんが僕に対してボソッと呟く。
 彼女は冷たい表情をしていた。仕方ない。僕の持病を知らない状態で今の話を聞けば誰だってそう思う。知っていても、そう思う奴がいるくらいなんだから。

「うんうん、違うよ。星宮さん。文也は障害ゆえに仕方なく寝ちゃうの。私たちが思っている以上に、強い睡魔に襲われちゃうんだよ」

 日和が優しく訂正した。
 優しいながらも声音にはほんの少しだけ冷たい感情が垣間見える。

「ご、ごめんなさい。障害持ちだったんですね」

 星宮さんは日和が発した負のオーラを感じたのか慌てて弁明する。

「別に気にしなくて良いですよ。言われ慣れているんで」

 流石に僕までムスッとするわけにはいかない。宥めるように愛想よく振舞った。

「……すみません。私の軽率な発言で最上さんを傷つけてしまって」

 だが、予想に反して、星宮さんは一層落ち込んだ様子で僕に応えた。何か気に障っただろうかと戸惑い、反射的に頰を掻いた。

「それじゃあ、ポスターもチラシも準備も完了したことだし、明日から早速イベント告知を始めていこう。飯塚さんはソフトテニス部だから流石にチラシ配りをさせるわけにはいかないか。じゃあ、ここにいる三人に振り分けるね」

 僕たちのギスギスした様子に水を差すようにして、千丈先輩は三つの紙束を僕たちに渡す。彼女もまた僕たちに配ったのと同じ分量を手に持っていた。

「イベント開催は来週の水曜日だから、火曜日までに全部のチラシを配り切るよ」

 今日は木曜日。3日で30枚だから1日あたり10枚配ればいい。難しいことではないだろう。それに、僕は一年だから千丈先輩や日和に比べて配りやすい。

「わ、私もやるんですか?」

 星宮さんもまた紙束をもらっていた。
 自分にまわってくることはないと思っていたのか心底驚いていた。

「もちろん。星宮さんにも手伝ってもらえるとすごく嬉しいな」

 純粋無垢な笑みを浮かべる千丈先輩に、星宮さんは断ることができずにいた。

「もし、一人が不安なら文也と一緒に配ったら?」

 困っていた星宮さんに手を差し伸べたのは意外にも日和だった。嫌な気持ちは一切ない穏やかな表情を浮かべている。

「いいんですか?」

 星宮さんは僕と日和を交互に見る。
 どっちに聞いたか分からない。ひとまず僕は「いいよ」と答えておいた。日和は頷くだけだった。

「じゃあ、頑張ります」

「ありがと! じゃあ、話がまとまったところで、この後の活動は校外でやろう」

 千丈先輩の指示に従い、僕らは学校を後にした。
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