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チキンナゲットへ送る弔い
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仕事終わりの悟は生きる喜びを失っていた。
ただ呼吸をし、仕事に行き、家に帰り眠る。その日々の繰り返し。それが人間社会で生きるということだった。
「俺は借金もあるし、このままただ生きることに何の価値があるんだろう。」
「笑っちゃうよ。借金して大学に行って小さな会社で働くのに何百万も背負わなきゃいけないなんてさ。どうやって日々の生活を楽しむってんだい。」
家に帰って鬱憤を晴らすためにファーストフード店へ足を向ける。
ナゲットからハンバーガー、コーラ、ポテトにアイスクリーム。とにかく目についたものを注文して、持ち帰る。
人目を気にせず、ドカ食いをする。虚しいかもしれないが、これしか感情の発散の方法がわからなかった。
そして出会いは突然だった。
それは歩道の端に落ちていたのは鳩の死骸。
だただた、そこには日常の空間に屍があった。
ああ、痛ましい。大地を飛びたかったであろう鳩はただそこにいた。
俺は無意識に立ち止まり、「お冥福をお祈りします。安らかにお眠りください。」と手を合わせる。
ふと自分の持っていた袋が目に入る。買ったばかりのチキンナゲット。これを俺は食う。
俺が鳩に手を合わせるのはおかしいな。
そして歩き出す。なんだか鳩の周りには死への恐怖が見えない粒子となって充満しているように見える。いつもは心にベールを掛けて見えなくしているの大きなそれが、剝がされて漂っているようだった。
はあ、なんだかこの道を通るの嫌だな。
と言っても毎日死体を食ってるのに今更か。っはは。
俺は毎日、他の生き物の死体を貪り食って生きてきたのだよな。
そして明日も他の死体を齧り付いて、歯で刻み、己の細胞の糧になる。
そうか俺は生きてるんだ。
帰路に就く彼の足取りは淡々とだが、確かものへと変わっていた。
ただ呼吸をし、仕事に行き、家に帰り眠る。その日々の繰り返し。それが人間社会で生きるということだった。
「俺は借金もあるし、このままただ生きることに何の価値があるんだろう。」
「笑っちゃうよ。借金して大学に行って小さな会社で働くのに何百万も背負わなきゃいけないなんてさ。どうやって日々の生活を楽しむってんだい。」
家に帰って鬱憤を晴らすためにファーストフード店へ足を向ける。
ナゲットからハンバーガー、コーラ、ポテトにアイスクリーム。とにかく目についたものを注文して、持ち帰る。
人目を気にせず、ドカ食いをする。虚しいかもしれないが、これしか感情の発散の方法がわからなかった。
そして出会いは突然だった。
それは歩道の端に落ちていたのは鳩の死骸。
だただた、そこには日常の空間に屍があった。
ああ、痛ましい。大地を飛びたかったであろう鳩はただそこにいた。
俺は無意識に立ち止まり、「お冥福をお祈りします。安らかにお眠りください。」と手を合わせる。
ふと自分の持っていた袋が目に入る。買ったばかりのチキンナゲット。これを俺は食う。
俺が鳩に手を合わせるのはおかしいな。
そして歩き出す。なんだか鳩の周りには死への恐怖が見えない粒子となって充満しているように見える。いつもは心にベールを掛けて見えなくしているの大きなそれが、剝がされて漂っているようだった。
はあ、なんだかこの道を通るの嫌だな。
と言っても毎日死体を食ってるのに今更か。っはは。
俺は毎日、他の生き物の死体を貪り食って生きてきたのだよな。
そして明日も他の死体を齧り付いて、歯で刻み、己の細胞の糧になる。
そうか俺は生きてるんだ。
帰路に就く彼の足取りは淡々とだが、確かものへと変わっていた。
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