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29 はじめての夜会
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(アルベルティーヌside)
初めての夜会はとてもキラキラとして見えた。
「お姉さま!ヒールは大丈夫ですか?痛くなったら言ってくださいね……?」
「ありがとうシャリー。私は別邸の周りを結構歩いていたから脚は意外と丈夫なのよ」
──あちらこちらから視線を感じる。
先日の王前裁判の当事者だからか、噂されているのが聞こえてくるわ……
「お姉さま、大丈夫です!勝手に言わせておけばいいのですわ!それに話している内容も大方同情されているようですし、害も無いですから気にしないのが一番ですわ!」
扇で顔を隠しつつもフンっと鼻を鳴らす、侯爵令嬢らしからぬ表情のシャリーがおかしくて自然と笑顔になった。
「シャリーは可愛いのに、そんな顔をしては勿体ないわ……!」
「──っ、そうです!お姉さまは笑顔でいればいいんですっ!何にも悪くないんですから!堂々と胸を張っていましょう!」
シャリーは明るく朗らかでふわふわ系の可愛らしい容姿だが、言いたいことはしっかりと言う、はつらつとした女の子。
──お母さま、見ておられますか?
体が弱くてきょうだいを産んであげられないことを、よく謝っておられましたが……
今は、コリンヌとシャリーという、とても優しい素敵な義妹が二人もいるのですよ。
──ザワッ
最後に王族の方たちが入場してくると、一段と音楽が盛り上がり、場が一気に華やかになった。
アルフォンス王太子殿下もクロヴィス殿下も今日も麗しいわ……ね?
「──あ……れ……?」
「お姉さま?どうなされたのです?」
あれは……見間違い?私の目がちょっとおかしくなってしまったのかしら?
「──ねぇ、シャリー?クロヴィス殿下の騎士服の胸元……金色で縁取られた……緑色のリボンが見えたりしないかしら……?」
「ええ!リボンを着けていらっしゃいますね……あら?お姉さまの髪のリボン……?」
──どういうこと……?あのリボンはたしかにお別れした時にクロちゃんの首に結ばれていたのに……?
気に入ってクロちゃんから奪い取ったのかしら?でも殿下はそんなお方には見えないし……
それにお値段も高くはない普通のリボンですもの……どうして……?
クロヴィス殿下のリボンのことが気になって、その後の会話は少し上の空になってしまった。
「うん。久しぶりと言っていたが、しっかり踊れるじゃないか!──お、王子様が迎えに来たようだ」
ファーストダンスをシリル様と踊り終えると、クロヴィス殿下がこちらにやってくるのが見えた。
──やっぱりどう見ても、クロちゃんと同じリボンですわよね……?
すると、クロヴィス殿下は低めの、しかしよく通る声でダンスを誘ってきた。
「アルベルティーヌ嬢、先日はクロを助けていただきありがとう。良ければ二曲目を踊ってくれないか?」
「──はい、喜んで」
誘われたのはいいけれど……沈黙が続く。
「──あのっそのリボンって……」
「ああ、気づいてもらえたか?俺が初めて好きな女性から贈られた宝物のリボンなんだ」
──えっ……?
「三週間世話になった」
クロヴィス殿下は、耳元で囁いて、にっと少し意地悪そうな顔をした。
…………?
三週間……お世話……?
「っっっ!?も、もしかしてクロちゃんって……」
「俺だ」
「すっ……好きな女性って……」
「君だ」
「──ほら。この傷、ベルのおかげで塞がった」
器用に少し手袋を捲って見せられた手の甲には、銃で撃たれたような新しい傷があった。
「仕事でシュメルに行った帰りだったんだ。まさか撃たれるとは思わなかった。拾ってくれたのがベルで本当に良かった」
クロちゃん……人間味のある鷹さんだとばかり思っていたけれど、中身が人間なら当たり前よね……!
中身がクロヴィス殿下だったなんて……!
それからは驚きのあまり、ダンスはよく覚えていない。
でも、きっと幼少期から身に染み込ませたステップだもの、間違わなかった……はず……!
クロヴィス殿下の顔が近づいてきて、耳元でこそっと囁かれた。
「──まぁ、ちょっと王家の秘密でね。ここで詳しく話すわけにはいかない。この曲が終わったら、ちょっと抜け出さないか」
「──オーバン卿、アルベルティーヌ嬢を少しお借りしても?」
「人の目がある所であれば構わないさ。僕は挨拶回りでもしてくるよ。行っておいで」
初めての夜会はとてもキラキラとして見えた。
「お姉さま!ヒールは大丈夫ですか?痛くなったら言ってくださいね……?」
「ありがとうシャリー。私は別邸の周りを結構歩いていたから脚は意外と丈夫なのよ」
──あちらこちらから視線を感じる。
先日の王前裁判の当事者だからか、噂されているのが聞こえてくるわ……
「お姉さま、大丈夫です!勝手に言わせておけばいいのですわ!それに話している内容も大方同情されているようですし、害も無いですから気にしないのが一番ですわ!」
扇で顔を隠しつつもフンっと鼻を鳴らす、侯爵令嬢らしからぬ表情のシャリーがおかしくて自然と笑顔になった。
「シャリーは可愛いのに、そんな顔をしては勿体ないわ……!」
「──っ、そうです!お姉さまは笑顔でいればいいんですっ!何にも悪くないんですから!堂々と胸を張っていましょう!」
シャリーは明るく朗らかでふわふわ系の可愛らしい容姿だが、言いたいことはしっかりと言う、はつらつとした女の子。
──お母さま、見ておられますか?
体が弱くてきょうだいを産んであげられないことを、よく謝っておられましたが……
今は、コリンヌとシャリーという、とても優しい素敵な義妹が二人もいるのですよ。
──ザワッ
最後に王族の方たちが入場してくると、一段と音楽が盛り上がり、場が一気に華やかになった。
アルフォンス王太子殿下もクロヴィス殿下も今日も麗しいわ……ね?
「──あ……れ……?」
「お姉さま?どうなされたのです?」
あれは……見間違い?私の目がちょっとおかしくなってしまったのかしら?
「──ねぇ、シャリー?クロヴィス殿下の騎士服の胸元……金色で縁取られた……緑色のリボンが見えたりしないかしら……?」
「ええ!リボンを着けていらっしゃいますね……あら?お姉さまの髪のリボン……?」
──どういうこと……?あのリボンはたしかにお別れした時にクロちゃんの首に結ばれていたのに……?
気に入ってクロちゃんから奪い取ったのかしら?でも殿下はそんなお方には見えないし……
それにお値段も高くはない普通のリボンですもの……どうして……?
クロヴィス殿下のリボンのことが気になって、その後の会話は少し上の空になってしまった。
「うん。久しぶりと言っていたが、しっかり踊れるじゃないか!──お、王子様が迎えに来たようだ」
ファーストダンスをシリル様と踊り終えると、クロヴィス殿下がこちらにやってくるのが見えた。
──やっぱりどう見ても、クロちゃんと同じリボンですわよね……?
すると、クロヴィス殿下は低めの、しかしよく通る声でダンスを誘ってきた。
「アルベルティーヌ嬢、先日はクロを助けていただきありがとう。良ければ二曲目を踊ってくれないか?」
「──はい、喜んで」
誘われたのはいいけれど……沈黙が続く。
「──あのっそのリボンって……」
「ああ、気づいてもらえたか?俺が初めて好きな女性から贈られた宝物のリボンなんだ」
──えっ……?
「三週間世話になった」
クロヴィス殿下は、耳元で囁いて、にっと少し意地悪そうな顔をした。
…………?
三週間……お世話……?
「っっっ!?も、もしかしてクロちゃんって……」
「俺だ」
「すっ……好きな女性って……」
「君だ」
「──ほら。この傷、ベルのおかげで塞がった」
器用に少し手袋を捲って見せられた手の甲には、銃で撃たれたような新しい傷があった。
「仕事でシュメルに行った帰りだったんだ。まさか撃たれるとは思わなかった。拾ってくれたのがベルで本当に良かった」
クロちゃん……人間味のある鷹さんだとばかり思っていたけれど、中身が人間なら当たり前よね……!
中身がクロヴィス殿下だったなんて……!
それからは驚きのあまり、ダンスはよく覚えていない。
でも、きっと幼少期から身に染み込ませたステップだもの、間違わなかった……はず……!
クロヴィス殿下の顔が近づいてきて、耳元でこそっと囁かれた。
「──まぁ、ちょっと王家の秘密でね。ここで詳しく話すわけにはいかない。この曲が終わったら、ちょっと抜け出さないか」
「──オーバン卿、アルベルティーヌ嬢を少しお借りしても?」
「人の目がある所であれば構わないさ。僕は挨拶回りでもしてくるよ。行っておいで」
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