人間不信の黒鷹王子は捨てられ令嬢に手懐けられる

poi

文字の大きさ
上 下
17 / 33

17 接触を図ろうと思う

しおりを挟む
 (クロヴィスside)


 王都の外れに借りたアパートメントの一室に防音魔法を二重に掛け、三人はお互いの調査結果を照らし合わせていた。


 コリンヌに再び接触を図り新たな証拠を手に入れた。

 「父の隠してある手紙の一部です。こちらは母が物忘れの薬を飲ませた後の物で、父に読まれる前に母が回収したものです。母と父に見つからないように数通しか持ち出せませんでしたが、こちらはお役に立つでしょうか?」

 ──アングラード侯爵……軍務副長官……大物じゃないか……

 「コリンヌ嬢助かる。これがあれば証拠になる」

 「私にはこれくらいしかできません。私と母はいくら罰せられても構いません。しかし姉は私たち家族の被害者です……殿下……どうかお姉さまをよろしくお願い致します」


 ────


 一方、マニエ家の森について調べていたアルノーも色々と調べが進んでいた。

 まずクロヴィスの読み通り隠蔽魔法は隣国シュメルの魔法で間違いなかった。そして驚くべきことに、これまた厳重に隠蔽された転移魔法陣まであった。

 転移魔法陣はおそらくこの研究所・栽培施設と使用者を繋ぐ陣。
 軽く分析したが、使用者本人の魔力でしか動かない、登録型の陣のようだった。


 シュメルとの関係について調べると、デボラは子爵家の次女で、シュメルの薬学専門科に留学していた才女だった。

 アルノーは密偵は専門外なのだが、シュメルに赴いた。
 そして、持ち前のコミュニケーション能力と酒の強さで魔術師と接触を図ったところ、思いがけずに魔法薬学の専門家とも知り合いになった。


 研究所で見つけた薬のサンプルらしきものを見せると、すごい勢いで食いついた。

 『──素晴らしい!これはどちらで?これは魔術師や貴族の夢の薬ですよ!!!!おそらくまだ途中なのでしょうが、開発者はさぞ優秀に違いない!!これが完全に完成して、安定して製造できたなら叙爵ものの快挙ですよ!』



 「──結論から言いますと、デボラもまた被害者なところがありますね。彼女も処罰は免れませんが、現時点でかなりの研究結果を残しているだろうことが予測されます。平民に落として国外追放するのは我が国にとって損ですから、何らかの役職を与え、我々の目に届く範囲で監視しながら飼うのが一番かと」

 「たしかに、それだけ優秀ならば国外追放したところで、シュメルで研究者になるだろうな。引く手数多だろう」


 アルノーと二人頷きあった。


 ────


 「二人とも俺のわがままに付き合ってもらい感謝する。デボラがどうやらこちら側ということで……接触を図ろうと思う」

 ──アルベルティーヌはどうしようか……
 タイミングを見てオーバン卿に根回ししておくか……いや、一番はベルの気持ちが大事だよな。


 クロヴィスが考えていることがお見通しだったのか、エリクは提案した。

 「あのさぁ、もうおそらくアルベルティーヌ嬢を傷つけることはなさそうだし……アルベルティーヌ嬢を隠して同席させたら?デボラには森の研究所に転移してもらえばいいじゃん?」

 「まぁこちらで調べたことと、デボラの視点での話との擦り合わせの機会は欲しい。それはありだな。アルベルティーヌも、デボラの話を聞いた上で、自分がどうしたいか考える時間が要るだろうしな」


 ──はいっ!

 それまで黙って聞いていたアルノーが元気に手を挙げて提案した。

 「では、僕が擦り合わせを行いますので、エリク先輩はアルベルティーヌ嬢を上手いこと連れてきて隠してもらっていいですか?僕が上手いことデボラの話を引き出すんで!」

 「──おい待て!何故そこに俺が入っていない」

 「いや、殿下はせっかく人間の姿に戻れたんですし、運命の女性と再会するなら、それこそ感動的な!運命的な!ドラマティックな再会が良いじゃないですか!?」


 アルノーの突飛な提案に深く皺を寄せ、眉間を指でグリグリと揉みこんだ。

 「あのな……感動的な、運命的な再会、ドラマティックな再会ってなんだよ……まず俺はベルのことを気にしつつも自分のことで精一杯でずっと放置してしまっていたんだぞ?……そんな男が今更愛する資格なんてないだろ」


 俯いた俺にエリクは痛烈なデコピンを喰らわせた。

 「愛する資格だなんだって、お前それは逃げだろ。反省しているんならこの件ビシッと締めて、振り向かせて生涯愛し尽くしてやる!くらいの気概を見せろ」

 「エリク先輩の言う通りですよ!一番大事なのはアルベルティーヌ嬢の気持ちじゃないですか!──まっ、僕は演出は無理なので、エリク先輩が考えてくれますよ!」


 ──逃げだと言われても、俺はずっと何もしてやれなかったのに、今更どうやって顔を合わせればいいのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

すり替えられた公爵令嬢

鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。 しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。 妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。 本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。 完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。 視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。 お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。 ロイズ王国 エレイン・フルール男爵令嬢 15歳 ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳 アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳 マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳 マルゲリーターの母 アマンダ パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト アルフレッドの側近 カシュー・イーシヤ 18歳 ダニエル・ウイロー 16歳 マシュー・イーシヤ 15歳 帝国 エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(皇帝の姪) キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹) 隣国ルタオー王国 バーバラ王女

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】ダメな私、こんな人生もありだよね?

青井 海
恋愛
奥手な私は、穏やかで話しやすい人が好き。 失敗を重ねながら新たな恋を経験していく。 しかしダメっぷりはいつまで経っても変わらない。 私って見る目がないのかな…… こんな人生もありだよね? 私は私の好きに生きる。 中学生から社会人まで。 進路に関する話やストーカー的な表現あり。 ※番外編を追加しました。

夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。 そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。 実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。 悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。 しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。 そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。

りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。 やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか 勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。 ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。 蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。 そんな生活もううんざりです 今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。 これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

お姉様のお下がりはもう結構です。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。 慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。 「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」 ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。 幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。 「お姉様、これはあんまりです!」 「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」 ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。 しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。 「お前には従うが、心まで許すつもりはない」 しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。 だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……? 表紙:ノーコピーライトガール様より

処理中です...