7 / 33
7 断じて下心などない
しおりを挟む
(クロヴィスside)
邸に来てから早くも十日が経った。
今日も朝食から、傷の手当て、そしてアルベルティーヌにくっつき畑めぐり、そしてペレット作りのお手伝いというルーティンを楽しんでいた。
この十日間で変わったことといえば、胸元に括られるのではなく、アルベルティーヌの肩に止まれるようになった。
畑に向かう度に、胸元に押し付けてくるアルベルティーヌの手を傷つけないように軽くつついて、鳴き声と目線で何とか訴えた。
(俺は男なんだぞ!!胸元はやめてくれ!肩や腕に……!)
伝えるのは大変だったが、アルベルティーヌはどうにか察してくれたようで、その晩に早速爪がくい込まないよう肩に当てるふわふわのパッドを縫ってくれた。
『クロちゃん、おとなしく肩にいてくれる?怪我が治ったら自由に飛んでいいから……お願いそれまでは、まだ一緒にいて……』
と懇願するベルはめちゃくちゃ可愛かった。
そして、夜は一緒に布団にくるまり眠るようになった。
涙を拭えないのなら、せめて少しでも温もりを与えたくなり、布団に入るようになったからだった。
深夜の2時頃になると、アルベルティーヌは寂しさを紛らわせるためだろうか、俺を抱っこするようにして泣きながら眠る。
いつも朝方になると、寝起きのふにゃっとした笑顔で『クロちゃんおはよう』と一番に撫でてくるのだった。
──断じて!神に誓って!下心などない!ただ甘い香りがして……ほんの少しだけ変な気持ちになるのは仕方がない。だって人間だもの。By.クロ
『──ピィィィィッ』
そして今。魔法の呪文を唱えながらバサバサと軽く翼を振ると、均一に混ざったペレットの生地が出来上がった。
とはいえ、鷹なのでピィという高い鳴き声しか出ないのだが。
「きゃーーーーーーー!クロ様!!?あなた魔法が使えるのね?魔法が使える鷹なんて聞いたことがないわ!!クロ様は本当に天才なのね?」
『ピィィィィ!ピィ!』
嬉しそうな顔の後、少しだけ難しそうな顔をして、アルベルティーヌは口を開いた。
「クロちゃん、あのね一つだけ約束してほしいの」
『ピィ?』
「あなたは綺麗で利口で魔法も使えるとっても素敵な鷹さんなの。他の人にバレてしまったら……一緒に居られなくなってしまうかもしれないの。だから魔法を使うのは私の前だけにしてね?約束よ?」
そうか、アルベルティーヌだからここにいたいと思うが、知らんおっさんには飼われたくないな……
『ピィィィィ』
『ピィィィィ』
『ピィィィィ』
「きゃー!クロちゃん本当にすごいわ!一緒に作るとあっという間に終わるわね!」
アルベルティーヌがあまりにも褒めてくれるので、つい頑張りすぎた。
『可愛い女の子の前ではカッコつけたくなるのが男の性なんだなあ』なんて柄にもなく思ってしまった。
その後調子に乗ってしまった俺は翼を動かしすぎて痛めた。アルベルティーヌは再び過保護になった。
それからまた数日間、手ずから餌やおやつを与えられ、膝に乗せられ甲斐甲斐しく手当てをされ、畑に向かう時には木綿の布地で胸元に優しく括り付けられた。
恥ずかしさと居た堪れなさで身悶えたのは、完全に自業自得だった。
──俺はこんなことで時間を浪費している場合ではないのに!阿呆か俺は!
一刻も早く王宮に戻って情報部の貴族担当に調査を依頼したいというのに……!
自覚しているのか怪しいが、クロヴィスは完全にアルベルティーヌのことで頭がいっぱいで舞い上がっている状態である。隣国への偵察帰りだということもすっかり忘れている。
この浮ついた気持ちに名前を付けられるのは、もう少し後の話。
邸に来てから早くも十日が経った。
今日も朝食から、傷の手当て、そしてアルベルティーヌにくっつき畑めぐり、そしてペレット作りのお手伝いというルーティンを楽しんでいた。
この十日間で変わったことといえば、胸元に括られるのではなく、アルベルティーヌの肩に止まれるようになった。
畑に向かう度に、胸元に押し付けてくるアルベルティーヌの手を傷つけないように軽くつついて、鳴き声と目線で何とか訴えた。
(俺は男なんだぞ!!胸元はやめてくれ!肩や腕に……!)
伝えるのは大変だったが、アルベルティーヌはどうにか察してくれたようで、その晩に早速爪がくい込まないよう肩に当てるふわふわのパッドを縫ってくれた。
『クロちゃん、おとなしく肩にいてくれる?怪我が治ったら自由に飛んでいいから……お願いそれまでは、まだ一緒にいて……』
と懇願するベルはめちゃくちゃ可愛かった。
そして、夜は一緒に布団にくるまり眠るようになった。
涙を拭えないのなら、せめて少しでも温もりを与えたくなり、布団に入るようになったからだった。
深夜の2時頃になると、アルベルティーヌは寂しさを紛らわせるためだろうか、俺を抱っこするようにして泣きながら眠る。
いつも朝方になると、寝起きのふにゃっとした笑顔で『クロちゃんおはよう』と一番に撫でてくるのだった。
──断じて!神に誓って!下心などない!ただ甘い香りがして……ほんの少しだけ変な気持ちになるのは仕方がない。だって人間だもの。By.クロ
『──ピィィィィッ』
そして今。魔法の呪文を唱えながらバサバサと軽く翼を振ると、均一に混ざったペレットの生地が出来上がった。
とはいえ、鷹なのでピィという高い鳴き声しか出ないのだが。
「きゃーーーーーーー!クロ様!!?あなた魔法が使えるのね?魔法が使える鷹なんて聞いたことがないわ!!クロ様は本当に天才なのね?」
『ピィィィィ!ピィ!』
嬉しそうな顔の後、少しだけ難しそうな顔をして、アルベルティーヌは口を開いた。
「クロちゃん、あのね一つだけ約束してほしいの」
『ピィ?』
「あなたは綺麗で利口で魔法も使えるとっても素敵な鷹さんなの。他の人にバレてしまったら……一緒に居られなくなってしまうかもしれないの。だから魔法を使うのは私の前だけにしてね?約束よ?」
そうか、アルベルティーヌだからここにいたいと思うが、知らんおっさんには飼われたくないな……
『ピィィィィ』
『ピィィィィ』
『ピィィィィ』
「きゃー!クロちゃん本当にすごいわ!一緒に作るとあっという間に終わるわね!」
アルベルティーヌがあまりにも褒めてくれるので、つい頑張りすぎた。
『可愛い女の子の前ではカッコつけたくなるのが男の性なんだなあ』なんて柄にもなく思ってしまった。
その後調子に乗ってしまった俺は翼を動かしすぎて痛めた。アルベルティーヌは再び過保護になった。
それからまた数日間、手ずから餌やおやつを与えられ、膝に乗せられ甲斐甲斐しく手当てをされ、畑に向かう時には木綿の布地で胸元に優しく括り付けられた。
恥ずかしさと居た堪れなさで身悶えたのは、完全に自業自得だった。
──俺はこんなことで時間を浪費している場合ではないのに!阿呆か俺は!
一刻も早く王宮に戻って情報部の貴族担当に調査を依頼したいというのに……!
自覚しているのか怪しいが、クロヴィスは完全にアルベルティーヌのことで頭がいっぱいで舞い上がっている状態である。隣国への偵察帰りだということもすっかり忘れている。
この浮ついた気持ちに名前を付けられるのは、もう少し後の話。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
37
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる