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第1章 決意と意志編
14秒 『生きたいから殺す』
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片膝を石畳につけ、茂みに隠れながらネリスは状況を見渡した。まずトルム地区とバルムを繋ぐ高い扉、これを何らかの方法で壁を超えるか、それとも扉を開けるかどちらかをしなければエレナの元へ向かう事は出来ない。
うーんとネリスは悩む、何か手が無いかと考えるがせいぜい子供の頃に聞いた裏道の存在ぐらいだった。
「(ダメだな、その裏道がどこにあるかもわからないし、今もまだ存在してるかもわからない。となると……ぐっ!!)」
突然、息が出来なくなった。
いや、誰かに手で掴まれている。細長い、これは女性の手だ。
一体誰だとネリスは手や足を少し動かしジタバタと抵抗していると、
「ネリス私だ、グレアだ」
「(グレア……!? どうして)」
グレアは小さな声でネリスの耳元へと呟く
「大きな声を出すな、約束出来るなら手を離してやる。いいな?」
頭を縦に素早く3回ネリスは動かすと、グレアはゆっくりと手を離す。
言われた通り声を出さずにゆっくりネリスは身体を振り返らせグレアに尋ねた。
「……魔王討伐に行ったんじゃ?」
「行きたかった、が正しいな」
「はあ?」
「……ある事件がきっかけで、私はシュテッヒ騎士団から監視されていてな。ロイヤルヘヴンも私個人が作ったパーティギルドではない。国の都合を合わせる為だろう」
淡々とグレアは説明をし、どうして国から監視されているのかと所々不思議がるネリスだったが、深くグレアと関わりたくないという意識が勝り、ただ同意して黙り込むネリス。
「さて、本題に入ろう。お前は今、凄く楽しそうな事に巻き込まれている……。そうだろう?」
視線を扉に向け、ネリスはあまり聞いてない素振りで、
「いーや、別に」
「そうかそうか、楽しみは誰にも渡したくないタイプというわけか、私と一緒だな」
「勝手に解釈するなよ……」
扉の攻略、それのみに意識を集中させネリスは考え込むが、グレアは興味津々の顔でさらに顔の近くへと寄る
「さっきからずっと扉を見ているが、ネリス、もしかしてトルムへ行きたいのか?」
ネリスは素っ気ない素振りで、
「それ以外見つめる理由、どこにあるんだよ」
「まあそう言うな……。なあ、強行突破という線が一番太いと思うんだがどうだ?」
「太すぎて俺が持てねえよ」
「(そんな綱あんた一人で握ってろ)」
しかし、閃いたようにネリスは素早く振り返り、楽しそうな顔のグレアを見つめ返した。
「なあ、グレアさん」
「グレアでいいぞ」
「わかった、グレア……あんた強いんだろ? あそこにいる兵士を一瞬で倒せないか?」
扉周辺を警備している兵士は2人が見る分の範囲だと計5人。
さすがのグレアでも厳しいか、とネリスは思ったが、
「可能だ、全員殺せばいいのか?」
「えっ? 今なんて?」
「可能だ、と言った」
それなら話は早い、でも待てよ。
グレアは国に監視されていると言っていた、彼女がトルムへ行くって事は混乱に生じて国の外へ逃げてしまうんじゃないか?
「(……となると、グレアを逃がした責任は協力した俺になるのか?)」
どうする、グレアしか今は頼れる人がいない
でもエレナちゃんを助ける為にはグレアの力は必要だ。
ネリスが判断に悩んでいると、その姿を見て何を考えているのか気になりだすグレアは突然気味の悪い表情を浮かべ笑い出す。
「ぐふっ、ぐふふふっ」
不安そうな顔でネリスは殺さないで5人倒せるかと尋ね、ピタリとその笑いが止み冷静な表情へと変わる
「出来るぞ。だが1つ聞いてもいいかネリス、お前はなぜそうしたいんだ?」
意味がわからず困惑するネリス
「何言ってんだ……? 人なんて殺さないで済むならみんな殺したくないだろ」
「それは殺した事が無いからだ、人は一度殺せば大きく見解は変わる。あいつは殺すぞと思ったのなら殺してみればいい、びっくりするぐらい驚くぞ、人の死など虫のように儚いのだからな」
「生き物なんて死んでしまえば何1つ、生きている者に言葉なんてかけない。文句を言われたら殺す、指図をしたら殺す」
当たり前の質問をするようにネリスは呆れた顔でグレアを見た。
「それは……力があるから出来るんだろ? 力の無い人間が殺す事なんて出来ないし、そんな欲求だらけの人が沢山増えたら人と人の共存なんて成り立たないだろ」
ネリスの答えを聞くとグレアはその言葉が面白かったのか、クスクスと笑った。
「ぐふっ、ぐふふふふっ」
「面白い、考えを投げ捨てずに自分の答えをきちんと持ってきた、そんな人間を久々に見たぞ。いいだろう、殺さずに5人倒して見せよう」
「(謎の多い人だけど……協力してくれるなら助かる)」
馬鹿にされているような気分を強く抱いたけど、なんだろう。
グレアが俺より幼い子供に見えて、なぜか純粋、正直な人という言葉が出てきてしまった。
ネリスに対して協力的なのはどうしてか、それはグレアにしかわからなかったが、騎士団の監視下から離れられ自由に動ける。この利点がというのが最も彼女が望んでいる事なのだろう。
作戦が決まり2人はお互いコクリと頷くと、まずネリスが草むらの中から勢いよく飛び出し、降参のような身振りで両手を上げながら兵士達に近寄った。
「誰か、助けてくださいッ!!」
その声に兵士達は一斉にネリスの方を見た。兵士はこの場に存在しているのがまずいと言った顔で、
「むっ、生存者か」
「そうです! 起きたら避難場所へ逃げろと言われたのですが、どうも場所がわからなくて……」
「わかった……おい! 誰か彼の護衛につき避難所まで誘導してやれ!」
隊長の命令に従い、1人の兵士はネリスにピッタリとつく。
その瞬間をグレアは狙っていた。スキを見逃さず、生い茂った草むらから長い剣を引きずるように音を立てながら飛び出す。
一瞬の時間――
全員が音がする方向へと振り向く、既にグレアは1人の騎士団員の前に立っていた。
速い、ネリスがその言葉を頭の中で言い終わる前に、グレアは既に兵士の後ろへと回り込む。まるで瞬間移動をしたかのように、剣の柄の部分で兵士の後ろ首を強く叩いた。
音と同時に、もう1人の場所の後ろ首を叩く。ネリスが速いという言葉を言い終わった時。その場にいた兵隊4人が、まるで糸が切れてしまった人形のようにバタバタとその場に倒れ、ネリスにピッタリと付いていた兵士のみが残ると、
「なんだ?」
兵士は状況の異変に気付き、振り向いて扉の方へ視線を向けると、既にグレアはその兵士の首元に長剣を突きつけていた。
「きっ……貴様はグレア・フィールドッ! 監視員の2人はどうした!?」
「少し別件に出向いていてな、今この時だけ自由の身だ」
「くっ……!!」
「扉の鍵を出せ、さもなくばあいつらと同じように気絶させて魔物のエサにするぞ?」
慌てた表情の兵士は待ってくれ、という身振りで手の平を見せながら必死の抵抗をする。
「わ……私は持っていないっ! 助けてくれ!!」
「ほう、鍵で開く扉なのか」
「しまっ……」
「早くしろ、踊り場は目の前なんだ。私は誰かが踊るのを黙って見てるのが嫌いでな、誰が鍵を持っているのか言え」
グレアはネリスを脅した時のように首元の剣を少しずつ力を入れ、兵士の皮膚は少しヘコみ出す。
恐怖に怯えながら兵士はこの人ですと、言わんばかりに倒れている1人を指差す。
ふっ、と鼻で笑い剣を下げたグレアは隊長に向かって身体の隅々を調べ、扉の鍵を探す。
ネリスはグレアの迷いの無い行動に脱帽した。戦いもそうなのだが、まず質問を限定させて「扉に鍵がかかってるかどうか?」を兵士から最短で聞き出した。その次に1人を残したというところ。
もし、全員気絶させてしまった状態では鍵で開く扉なのかもわからず、力業でこじ開けるしかない。鍵で開けようものなら兵士全員を隅々まで調べなければ扉を開ける事ができず、その時間を短縮した事にネリスは驚き、同時に尊敬の目でグレアを見ていた。
「(もし強い力を持っていても、俺はグレアみたいな事が出来たんだろうか?)」
ネリスはあのダンジョンの事を思い出した。もし機転を利かせる事が出来たなら、もっとイリナの為に活躍出来たのかもしれない、そういう事が出来なかったから弱かったのか。と反省をする
「俺が参考にするべき強さはグレア……なのか?)」
そんな事を考えていると、グレアは鍵を掲げながら嬉しそうな顔でネリスに声をかける。
「おい、あったぞネリス、さあ行くぞっ!! ぐふふっ……パーティはすぐそこだッッ!!!」
「お……おう」
英雄、ずっとなってみたかった英雄に、グレアは近いのかも知れない。
誰かを救える強い力を持って、誰かを救えるほどの強い頭、世界を変えてしまうような強い力があれば……そうだ。
「(誰も悲しまない、明るく、みんなが笑えるような世界が作れるのかも)」
足がすくんでしまった兵士に一歩一歩グレアは近寄ると、
「おい、私たちが入ったらすぐ扉を閉めろ。じゃないとここも魔物で溢れるぞ、それとお前はこの一連の出来事を何も見ていない……私は言う事を聞かない人間が一番嫌いだ、わかるな?」
「は、はいッ!!」
鍵を受け取ったネリスは鍵穴らしきモノを見つけ、そこへ鍵を差し込むとガチッと先までハマッた音が聞こえ、大きな扉を握ったグレアはゆっくりと前へ力を入れると、鈍い音を立てながらゆっくりと開き始めた。
こうしてネリス達は誰も殺す事もなく無事、トルム地区へ進入する事に成功する
それは、ネリスにとって辛い挑戦への第一歩であった……。
◇ ◇ ◇
「なんだよこれ……なんなんだよッッ!!」
目を見開いたまま絶望の表情で叫ぶネリス。
トルム地区、そこはいつもと違う悲惨な光景が広がっていた。魔物達は面白そうに逃げようとする人間を追いかけ回し、服を掴んでは鬱憤を晴らすかのように歯で肩に食らいついたり、家の木材から抜き取って作った先の尖った得物で、笑いながら刺し殺していた。
傍若無人、この言葉が当てはまるほど非道の限りを尽くす魔物達。
その光景を見て、グレアは教えるようにネリスを見ながら、
「ネリス、この光景だ、この光景を目に焼き付けるんだ」
まるで、ネリスに伝えるかのようにグレアは語りかけ続けた。
「怒れ、憎め、殺意を持て、人間とは本来戦って生き延びる生き物だ。こうして他の種族が人間を襲うのはまず話し合おうとするからだ、だからナメられる。殺されるというのに本人は必死じゃないんだ」
「……何が言いてぇんだよお前は」
「私はお前を気に入ってる、だから同じようになってほしくないんだ。人間とは違う人間を目指してほしい」
「うっせえ……っ」
「ネリス」
グレアは急にネリスの服の襟を掴んでグイッと持ち上げ強制的に立ち上がらせる。
空中に浮き上がったネリスは思わずグレアの手を掴み、引き離そうとするが、その力は強く、引き剥がす事など不可能だった。
「さあ、ロイヤルヘヴンでの続きだ、このままでは殺されるぞ? いつまで傍観者でいるんだ?」
「がっ……くっ!!」
グレアはペロリと舌を動かし、
「いい目だ……憎む目、その目が大事なんだ、ネリス」
「ああっ……がっ……あっ」
「腰についている武器は飾りか? んん?」
「て……め……えっ!!」
苦しそうな顔でネリスは手を震わせながら鞘に手を伸ばし、短剣を抜くとグサリ。と思い切りグレアの腕に突き刺した。
痛みからではなく抵抗の意志が伝わったのか、グレアは手を離すとネリスは呼吸を乱しながら咳を数回しながらギロリとグレアを睨み付けた。
人間らしい顔が見れて嬉しかったのか、ニヤニヤとグレアは腕に刺さっていた短剣を抜き、ネリスの前へと転がし、
「それでいい、それでこそ人間の本質だ。くだらない偽善的思考を感情だけで上書きしろ」
「……」
「さっきより大分マシな目になったな、これでもう迷わず戦えるだろう」
背後からスキを見つけたのか、ゴブリンのような人型の魔物がグレアを襲うが、存在に気付いていたグレアは迅速の動きで振り返って剣を振ると、魔物を真っ二つにした。
長剣についた返り血を飛ばし、気味の悪い笑い声で上半身を前へと仰け反らせると、グレアは強く胸を掴んだ。
発情していた。彼女は突然全身の内から現れた情欲を抑えきれずはあはあ、と興奮し始め、一呼吸置いてから、
「……ネリス、私は少し暴れてくる、もう我慢できん」
「おい、一緒に戦ってくれないのかよグレア!?」
「甘えるな。お前はお前で目的があるんだろう? 私はお前には興味があるが、お前の目的には興味がない」
「……グレア」
長剣をネリスの前にグレアは突き刺し、警告をする。
「私を邪魔すると言うのならお前でも容赦なく斬る。じゃあな、無事に生き延びる事を祈っているぞ」
「お、おい!! グレア!!」
ネリスの制止も聞かずにグレアは嬉しそうに笑うと、走りながら長剣を引きずって素早い剣捌きで1体、2体、と次々に斬り捨てていく。
その表情は子供のように無邪気で、夢中で殺しを楽しんでいた。
ネリスは憧れていたグレアの存在を全否定する。あんなのは人間の生き方じゃない、ただの狂った殺人鬼だ。と強く抱くと――
1匹の魔物の鳴き声が聞こえた、ゴブリンだ。綠色の悪魔が木で出来た突起物を持ち、ネリスをどうやって殺そうかと、よだれを垂らしながら嬉しそうにジリジリと距離を詰めながら近寄る。
「くそッ!! なんで……なんで震えてるんだよ俺は!!」
サッとイリナから借りたダガーを構えるネリスだったが、その手はプルプルと震えていた。
怖い、逃げてしまおう、思考は既に戦うのではなく、逃げる方向へと考え始める。
迷ってから決断するまでの時間など、ゴブリンは待つはずもなく噛みつくように口を開くと、立ち尽くしたネリスを食い殺す為に飛びつこうと足を曲げた瞬間――。
「ああああああッッ!!!」
それは恐怖を拭う為の行動だった。必死に短剣を左、右へと振りまわすネリス。
その行為は「刺す」「斬る」などいった事ではなく、飛んできた危険な虫を追い払うような、人間が持つ自己防衛だった。
殺すつもりのない攻撃に脅威など生まれるはずもなく、魔物はネリスの振った手をたやすく捕まえると、ニヤリと口元が笑うゴブリン。
殺される、そう思ったネリスは見る見るうちに顔色が悪くなり――
ゴブリンは――口を開けてネリスの右肩へと噛みついた。
「があああああッッ!!!!!」
歯は皮膚を突き破り、その場にあった肩の肉がごっそりと無くなった。そうネリスは最初に感じる。
口の隙間から吹き出た血を見て、最初に感じたのは熱い、とても焼きついた痛みだった。
「うわああああッッ ああああッ がああっ!!」
頭の中が真っ白になり、自己防衛の行動だけが働く。
ネリスは右肩に噛みついたゴブリンの背中を力いっぱいダガーで刺すと、耳を塞ぎたくなるほどの悲鳴が聞こえた。
無意識にネリスはダガーを抜き、自身の危険を感じたゴブリンは噛みつくのを止め、ネリスから距離を取る。膝を崩した姿勢で呼吸を乱すネリス。
噛まれた傷は全く動けないほどではないが、ジンジンと生きている事を証明するように痛みが止まらない。ゴブリンもそれは同じで、ネリスの一撃が効いたのか先ほどのようにすぐ飛びかかる事はなく、じっくりとネリスを見つめる。
ゆっくりと立ち上がると、ネリスは決意を固めた――。
「(暴力は嫌いだ、でも……どうしても戦わなきゃ自分という存在が残せないのなら)」
「俺はお前に暴力を振るう。生き延びてやる!! お前なんかに……消されてたまるかッッ!!」
戦う、殺す、その言葉だけを思い浮かべ、ネリスはただゴブリンのみを一点に見つめると、
左手で持っていたダガーを殺意を込めて強く握る。生き物を殺すという未知の領域。
ネリスの目にはもう、殺さずに済む方法を探すという迷いは無かった――。
うーんとネリスは悩む、何か手が無いかと考えるがせいぜい子供の頃に聞いた裏道の存在ぐらいだった。
「(ダメだな、その裏道がどこにあるかもわからないし、今もまだ存在してるかもわからない。となると……ぐっ!!)」
突然、息が出来なくなった。
いや、誰かに手で掴まれている。細長い、これは女性の手だ。
一体誰だとネリスは手や足を少し動かしジタバタと抵抗していると、
「ネリス私だ、グレアだ」
「(グレア……!? どうして)」
グレアは小さな声でネリスの耳元へと呟く
「大きな声を出すな、約束出来るなら手を離してやる。いいな?」
頭を縦に素早く3回ネリスは動かすと、グレアはゆっくりと手を離す。
言われた通り声を出さずにゆっくりネリスは身体を振り返らせグレアに尋ねた。
「……魔王討伐に行ったんじゃ?」
「行きたかった、が正しいな」
「はあ?」
「……ある事件がきっかけで、私はシュテッヒ騎士団から監視されていてな。ロイヤルヘヴンも私個人が作ったパーティギルドではない。国の都合を合わせる為だろう」
淡々とグレアは説明をし、どうして国から監視されているのかと所々不思議がるネリスだったが、深くグレアと関わりたくないという意識が勝り、ただ同意して黙り込むネリス。
「さて、本題に入ろう。お前は今、凄く楽しそうな事に巻き込まれている……。そうだろう?」
視線を扉に向け、ネリスはあまり聞いてない素振りで、
「いーや、別に」
「そうかそうか、楽しみは誰にも渡したくないタイプというわけか、私と一緒だな」
「勝手に解釈するなよ……」
扉の攻略、それのみに意識を集中させネリスは考え込むが、グレアは興味津々の顔でさらに顔の近くへと寄る
「さっきからずっと扉を見ているが、ネリス、もしかしてトルムへ行きたいのか?」
ネリスは素っ気ない素振りで、
「それ以外見つめる理由、どこにあるんだよ」
「まあそう言うな……。なあ、強行突破という線が一番太いと思うんだがどうだ?」
「太すぎて俺が持てねえよ」
「(そんな綱あんた一人で握ってろ)」
しかし、閃いたようにネリスは素早く振り返り、楽しそうな顔のグレアを見つめ返した。
「なあ、グレアさん」
「グレアでいいぞ」
「わかった、グレア……あんた強いんだろ? あそこにいる兵士を一瞬で倒せないか?」
扉周辺を警備している兵士は2人が見る分の範囲だと計5人。
さすがのグレアでも厳しいか、とネリスは思ったが、
「可能だ、全員殺せばいいのか?」
「えっ? 今なんて?」
「可能だ、と言った」
それなら話は早い、でも待てよ。
グレアは国に監視されていると言っていた、彼女がトルムへ行くって事は混乱に生じて国の外へ逃げてしまうんじゃないか?
「(……となると、グレアを逃がした責任は協力した俺になるのか?)」
どうする、グレアしか今は頼れる人がいない
でもエレナちゃんを助ける為にはグレアの力は必要だ。
ネリスが判断に悩んでいると、その姿を見て何を考えているのか気になりだすグレアは突然気味の悪い表情を浮かべ笑い出す。
「ぐふっ、ぐふふふっ」
不安そうな顔でネリスは殺さないで5人倒せるかと尋ね、ピタリとその笑いが止み冷静な表情へと変わる
「出来るぞ。だが1つ聞いてもいいかネリス、お前はなぜそうしたいんだ?」
意味がわからず困惑するネリス
「何言ってんだ……? 人なんて殺さないで済むならみんな殺したくないだろ」
「それは殺した事が無いからだ、人は一度殺せば大きく見解は変わる。あいつは殺すぞと思ったのなら殺してみればいい、びっくりするぐらい驚くぞ、人の死など虫のように儚いのだからな」
「生き物なんて死んでしまえば何1つ、生きている者に言葉なんてかけない。文句を言われたら殺す、指図をしたら殺す」
当たり前の質問をするようにネリスは呆れた顔でグレアを見た。
「それは……力があるから出来るんだろ? 力の無い人間が殺す事なんて出来ないし、そんな欲求だらけの人が沢山増えたら人と人の共存なんて成り立たないだろ」
ネリスの答えを聞くとグレアはその言葉が面白かったのか、クスクスと笑った。
「ぐふっ、ぐふふふふっ」
「面白い、考えを投げ捨てずに自分の答えをきちんと持ってきた、そんな人間を久々に見たぞ。いいだろう、殺さずに5人倒して見せよう」
「(謎の多い人だけど……協力してくれるなら助かる)」
馬鹿にされているような気分を強く抱いたけど、なんだろう。
グレアが俺より幼い子供に見えて、なぜか純粋、正直な人という言葉が出てきてしまった。
ネリスに対して協力的なのはどうしてか、それはグレアにしかわからなかったが、騎士団の監視下から離れられ自由に動ける。この利点がというのが最も彼女が望んでいる事なのだろう。
作戦が決まり2人はお互いコクリと頷くと、まずネリスが草むらの中から勢いよく飛び出し、降参のような身振りで両手を上げながら兵士達に近寄った。
「誰か、助けてくださいッ!!」
その声に兵士達は一斉にネリスの方を見た。兵士はこの場に存在しているのがまずいと言った顔で、
「むっ、生存者か」
「そうです! 起きたら避難場所へ逃げろと言われたのですが、どうも場所がわからなくて……」
「わかった……おい! 誰か彼の護衛につき避難所まで誘導してやれ!」
隊長の命令に従い、1人の兵士はネリスにピッタリとつく。
その瞬間をグレアは狙っていた。スキを見逃さず、生い茂った草むらから長い剣を引きずるように音を立てながら飛び出す。
一瞬の時間――
全員が音がする方向へと振り向く、既にグレアは1人の騎士団員の前に立っていた。
速い、ネリスがその言葉を頭の中で言い終わる前に、グレアは既に兵士の後ろへと回り込む。まるで瞬間移動をしたかのように、剣の柄の部分で兵士の後ろ首を強く叩いた。
音と同時に、もう1人の場所の後ろ首を叩く。ネリスが速いという言葉を言い終わった時。その場にいた兵隊4人が、まるで糸が切れてしまった人形のようにバタバタとその場に倒れ、ネリスにピッタリと付いていた兵士のみが残ると、
「なんだ?」
兵士は状況の異変に気付き、振り向いて扉の方へ視線を向けると、既にグレアはその兵士の首元に長剣を突きつけていた。
「きっ……貴様はグレア・フィールドッ! 監視員の2人はどうした!?」
「少し別件に出向いていてな、今この時だけ自由の身だ」
「くっ……!!」
「扉の鍵を出せ、さもなくばあいつらと同じように気絶させて魔物のエサにするぞ?」
慌てた表情の兵士は待ってくれ、という身振りで手の平を見せながら必死の抵抗をする。
「わ……私は持っていないっ! 助けてくれ!!」
「ほう、鍵で開く扉なのか」
「しまっ……」
「早くしろ、踊り場は目の前なんだ。私は誰かが踊るのを黙って見てるのが嫌いでな、誰が鍵を持っているのか言え」
グレアはネリスを脅した時のように首元の剣を少しずつ力を入れ、兵士の皮膚は少しヘコみ出す。
恐怖に怯えながら兵士はこの人ですと、言わんばかりに倒れている1人を指差す。
ふっ、と鼻で笑い剣を下げたグレアは隊長に向かって身体の隅々を調べ、扉の鍵を探す。
ネリスはグレアの迷いの無い行動に脱帽した。戦いもそうなのだが、まず質問を限定させて「扉に鍵がかかってるかどうか?」を兵士から最短で聞き出した。その次に1人を残したというところ。
もし、全員気絶させてしまった状態では鍵で開く扉なのかもわからず、力業でこじ開けるしかない。鍵で開けようものなら兵士全員を隅々まで調べなければ扉を開ける事ができず、その時間を短縮した事にネリスは驚き、同時に尊敬の目でグレアを見ていた。
「(もし強い力を持っていても、俺はグレアみたいな事が出来たんだろうか?)」
ネリスはあのダンジョンの事を思い出した。もし機転を利かせる事が出来たなら、もっとイリナの為に活躍出来たのかもしれない、そういう事が出来なかったから弱かったのか。と反省をする
「俺が参考にするべき強さはグレア……なのか?)」
そんな事を考えていると、グレアは鍵を掲げながら嬉しそうな顔でネリスに声をかける。
「おい、あったぞネリス、さあ行くぞっ!! ぐふふっ……パーティはすぐそこだッッ!!!」
「お……おう」
英雄、ずっとなってみたかった英雄に、グレアは近いのかも知れない。
誰かを救える強い力を持って、誰かを救えるほどの強い頭、世界を変えてしまうような強い力があれば……そうだ。
「(誰も悲しまない、明るく、みんなが笑えるような世界が作れるのかも)」
足がすくんでしまった兵士に一歩一歩グレアは近寄ると、
「おい、私たちが入ったらすぐ扉を閉めろ。じゃないとここも魔物で溢れるぞ、それとお前はこの一連の出来事を何も見ていない……私は言う事を聞かない人間が一番嫌いだ、わかるな?」
「は、はいッ!!」
鍵を受け取ったネリスは鍵穴らしきモノを見つけ、そこへ鍵を差し込むとガチッと先までハマッた音が聞こえ、大きな扉を握ったグレアはゆっくりと前へ力を入れると、鈍い音を立てながらゆっくりと開き始めた。
こうしてネリス達は誰も殺す事もなく無事、トルム地区へ進入する事に成功する
それは、ネリスにとって辛い挑戦への第一歩であった……。
◇ ◇ ◇
「なんだよこれ……なんなんだよッッ!!」
目を見開いたまま絶望の表情で叫ぶネリス。
トルム地区、そこはいつもと違う悲惨な光景が広がっていた。魔物達は面白そうに逃げようとする人間を追いかけ回し、服を掴んでは鬱憤を晴らすかのように歯で肩に食らいついたり、家の木材から抜き取って作った先の尖った得物で、笑いながら刺し殺していた。
傍若無人、この言葉が当てはまるほど非道の限りを尽くす魔物達。
その光景を見て、グレアは教えるようにネリスを見ながら、
「ネリス、この光景だ、この光景を目に焼き付けるんだ」
まるで、ネリスに伝えるかのようにグレアは語りかけ続けた。
「怒れ、憎め、殺意を持て、人間とは本来戦って生き延びる生き物だ。こうして他の種族が人間を襲うのはまず話し合おうとするからだ、だからナメられる。殺されるというのに本人は必死じゃないんだ」
「……何が言いてぇんだよお前は」
「私はお前を気に入ってる、だから同じようになってほしくないんだ。人間とは違う人間を目指してほしい」
「うっせえ……っ」
「ネリス」
グレアは急にネリスの服の襟を掴んでグイッと持ち上げ強制的に立ち上がらせる。
空中に浮き上がったネリスは思わずグレアの手を掴み、引き離そうとするが、その力は強く、引き剥がす事など不可能だった。
「さあ、ロイヤルヘヴンでの続きだ、このままでは殺されるぞ? いつまで傍観者でいるんだ?」
「がっ……くっ!!」
グレアはペロリと舌を動かし、
「いい目だ……憎む目、その目が大事なんだ、ネリス」
「ああっ……がっ……あっ」
「腰についている武器は飾りか? んん?」
「て……め……えっ!!」
苦しそうな顔でネリスは手を震わせながら鞘に手を伸ばし、短剣を抜くとグサリ。と思い切りグレアの腕に突き刺した。
痛みからではなく抵抗の意志が伝わったのか、グレアは手を離すとネリスは呼吸を乱しながら咳を数回しながらギロリとグレアを睨み付けた。
人間らしい顔が見れて嬉しかったのか、ニヤニヤとグレアは腕に刺さっていた短剣を抜き、ネリスの前へと転がし、
「それでいい、それでこそ人間の本質だ。くだらない偽善的思考を感情だけで上書きしろ」
「……」
「さっきより大分マシな目になったな、これでもう迷わず戦えるだろう」
背後からスキを見つけたのか、ゴブリンのような人型の魔物がグレアを襲うが、存在に気付いていたグレアは迅速の動きで振り返って剣を振ると、魔物を真っ二つにした。
長剣についた返り血を飛ばし、気味の悪い笑い声で上半身を前へと仰け反らせると、グレアは強く胸を掴んだ。
発情していた。彼女は突然全身の内から現れた情欲を抑えきれずはあはあ、と興奮し始め、一呼吸置いてから、
「……ネリス、私は少し暴れてくる、もう我慢できん」
「おい、一緒に戦ってくれないのかよグレア!?」
「甘えるな。お前はお前で目的があるんだろう? 私はお前には興味があるが、お前の目的には興味がない」
「……グレア」
長剣をネリスの前にグレアは突き刺し、警告をする。
「私を邪魔すると言うのならお前でも容赦なく斬る。じゃあな、無事に生き延びる事を祈っているぞ」
「お、おい!! グレア!!」
ネリスの制止も聞かずにグレアは嬉しそうに笑うと、走りながら長剣を引きずって素早い剣捌きで1体、2体、と次々に斬り捨てていく。
その表情は子供のように無邪気で、夢中で殺しを楽しんでいた。
ネリスは憧れていたグレアの存在を全否定する。あんなのは人間の生き方じゃない、ただの狂った殺人鬼だ。と強く抱くと――
1匹の魔物の鳴き声が聞こえた、ゴブリンだ。綠色の悪魔が木で出来た突起物を持ち、ネリスをどうやって殺そうかと、よだれを垂らしながら嬉しそうにジリジリと距離を詰めながら近寄る。
「くそッ!! なんで……なんで震えてるんだよ俺は!!」
サッとイリナから借りたダガーを構えるネリスだったが、その手はプルプルと震えていた。
怖い、逃げてしまおう、思考は既に戦うのではなく、逃げる方向へと考え始める。
迷ってから決断するまでの時間など、ゴブリンは待つはずもなく噛みつくように口を開くと、立ち尽くしたネリスを食い殺す為に飛びつこうと足を曲げた瞬間――。
「ああああああッッ!!!」
それは恐怖を拭う為の行動だった。必死に短剣を左、右へと振りまわすネリス。
その行為は「刺す」「斬る」などいった事ではなく、飛んできた危険な虫を追い払うような、人間が持つ自己防衛だった。
殺すつもりのない攻撃に脅威など生まれるはずもなく、魔物はネリスの振った手をたやすく捕まえると、ニヤリと口元が笑うゴブリン。
殺される、そう思ったネリスは見る見るうちに顔色が悪くなり――
ゴブリンは――口を開けてネリスの右肩へと噛みついた。
「があああああッッ!!!!!」
歯は皮膚を突き破り、その場にあった肩の肉がごっそりと無くなった。そうネリスは最初に感じる。
口の隙間から吹き出た血を見て、最初に感じたのは熱い、とても焼きついた痛みだった。
「うわああああッッ ああああッ がああっ!!」
頭の中が真っ白になり、自己防衛の行動だけが働く。
ネリスは右肩に噛みついたゴブリンの背中を力いっぱいダガーで刺すと、耳を塞ぎたくなるほどの悲鳴が聞こえた。
無意識にネリスはダガーを抜き、自身の危険を感じたゴブリンは噛みつくのを止め、ネリスから距離を取る。膝を崩した姿勢で呼吸を乱すネリス。
噛まれた傷は全く動けないほどではないが、ジンジンと生きている事を証明するように痛みが止まらない。ゴブリンもそれは同じで、ネリスの一撃が効いたのか先ほどのようにすぐ飛びかかる事はなく、じっくりとネリスを見つめる。
ゆっくりと立ち上がると、ネリスは決意を固めた――。
「(暴力は嫌いだ、でも……どうしても戦わなきゃ自分という存在が残せないのなら)」
「俺はお前に暴力を振るう。生き延びてやる!! お前なんかに……消されてたまるかッッ!!」
戦う、殺す、その言葉だけを思い浮かべ、ネリスはただゴブリンのみを一点に見つめると、
左手で持っていたダガーを殺意を込めて強く握る。生き物を殺すという未知の領域。
ネリスの目にはもう、殺さずに済む方法を探すという迷いは無かった――。
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