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第1章 決意と意志編
11秒 『血染めのグレア』
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◇ ◇ ◇
いつもと変わらない朝、憎たらしいほどに天気は快晴だった。
ため息一つ吐くと、ネリスはイリナの目が覚める前に朝飯の準備をして、寝ているイリナの身体を軽く揺さぶって起こす
「おい起きろ、朝だぞ」
「んー……」
呆けた返事をし、目を開けるとイリナは寝ぼけながら頭をポリポリとかき上半身を起こすが、思考が止まっているかのようにただどこか一点を見つめていた。
「(やべえ、こいつちょっと可愛い)」
少し力を入れてしまえばまたパタリと倒れてしまう。そう感じさせるほどイリナの身体は全身の力が抜けていた。
怒られる事を回避したとホッとしたネリスは今へ戻り椅子に座ると、寝間着姿のイリナがフラフラとした足取りでテーブルにつく、どうやらまだ眠いようだ。
あくび一つイリナはすると、ネリスが用意した食事に手をつける。
フォークとナイフを動かしながら、ネリスの名前を呼ぶ。
イリナのその表情は先程の眠そうな目から一変して、必ずこれだけは伝えなければいけない、そんな決意をした顔でネリスを見つめていた。
「ネリスくん、今日は騎士団の方に用があるから……。いつも通り家で大人しくしててね」
その言葉の意味を深くネリスは考えてはおらず、ただ一言わかったと返事をするだけで、会話が終わる。ネリスもまた、家を出たくない事情があった。
そう、昨日急に迫ってきたあの橙色の女の子がここへ来ないかとネリスは怯えていた。
結局あの後は追ってくることもなく無事に家に戻って来れたのだが、しばらく家に出ない方がいいとネリスは判断する。
「じゃ、行ってくるね」
「ああ」
バタンと閉まる扉の音を聞いて、もう1回寝るかとネリスは呟くと床へゴロリと寝転がる。
太陽が元気に活動し、人が仕事に出ているのを想像すると、優越感に浸ってネリスは鼻で笑うと、目を閉じた。
「選ばれた者の地区……か、選ばれなかった人間が住んでいいものなんかね」
イリナは俺を救いたかった、だから金を払ってでも俺を買って貴族の位置まで引き上げてくれた。
そのお礼をしなきゃと思って普段やらない事をやったら、結局諦めてしまった。
イリナ、俺さ。
このままお前にすがって生きてていいのかな――。
◇ ◇ ◇
「ありがとうございます、ありがとうございます。助けて頂きありがとうございます、このご恩は一生忘れません」
まただ、橙色の女の子、もう見たくないんだけどな
最悪な○○だ、あれ? ○○、うまく言えない。
「うるさい、どうでもいいから黙って食え」
「……」
犬みたいに食ってるんだけどこの子
というか俺……なんでこんな偉そうなんだろう。
「はあ、必死に生きれるって羨ましいよな」
なんだこいつ、無愛想な顔して本当に俺な――の
「……あっ」
目をこすると、ネリスは膝を立てて起き上がる。
「変な夢だったな……」
目線の高さを上げ、机を見下ろすとペンダントが1つ置いてあり、イリナが忘れていったのかなとネリスは首をかしげながら手に取った。
ペンダントは透き通るような泡色で、周りが1本の線で囲まれている開閉部分が気になったネリスは爪を軽く入れてみると、簡単にパカッと開く。
「なんだこれ、イリナのお母さん……かな?」
紙のようなモノに1人の女性が映っていた、これも魔法なのかとネリスは疑いながら掲げてじっと眺める。
手の平に収まる大きさのペンダントを指の腹で触っては力を入れたりして触るが、どういう原理でこの中の人の女性が映し出されているのか理解出来なかったネリスは、とりあえずペンダントを机に置くと、
「これ……やっぱ届けた方がいいかな?」
「(でもなあ、外でまたあの子と会うと怖かったりもする……)」
どうしようかと部屋の周りをウロウロし、妙にイリナに気に入られたいという気持ちに駆られ、やっぱり届けようと決意し、家のドアを開けた。
「さて……と、イリナは一体どこにいるんだろう?」
街を歩きながら辺りを見渡しても騎士団っぽい建物すら見つからず、さらに長い時間をかけてぶらぶら歩いていると、昔イリナと冒険に出た際に立ち寄ったギルドの前でピタリと止まるネリス
扉を開け中へと入ると、この前とは違ってより中は活気に溢れていた。
なぜ今日は冒険者が沢山いるんだろうか、とネリスは首を傾げながらカウンターの前へ向かう
「すいません、イリナを見てませんか?」
尋ねると胸の大きいお姉さんは不思議な顔して上の空を見て、ポンと閃いたように手を叩くと、受付のお姉さんはテーブルにその大きい胸を乗せながら、
「多分ですけど、ロイヤルヘヴン所属のイリナさんですか?」
「多分そうですね」
それでしたら今日は来ていないと伝えると、んー。とイリナがどこへ行ったのか検討もつかないネリス。
カウンターに前のめりの態勢から身体を起こすと、お姉さんは胸をぼよんと弾ませネリスに問う
「ギルド支部の方は訪れてみましたか?」
「ギルド……しぶ?」
気になったネリスは話を聞くと、どうやらギルドで気が合う者達がメンバーを組み、少人数で拠点を作るのが【ギルド支部】と言うらしい。
もう1つ聞かされた【パーティギルド】についても聞くと、最大4名まで登録する事ができ、このギルドで無しで登録した場合、この国へ出る際の人数とダンジョンへ向かった人数が違ってはいけないようだ。
ギルドのシステムを理解したネリスはなぜダンジョンや外へ出れるのが4人までなのか、と疑問に持ったが、まず目的であるイリナが所属しているパーティギルドについて尋ねると、
「イリナさんの所属しているロイヤルヘヴンへはここから北へ数分歩いたところですね」
「なるほど……あ、すいませんついでに地図1枚ください」
地図を受け取りネリスがお礼を言うと、なぜか受付のお姉さんはもう1枚地図を取り出しては、
「もう1枚いりますか?」
「いらないです」
「持っておけば便利ですよ? 唐突に便意をもよおした時とか」
「地図の扱いって雑なんですね」
引く事はなく、再度お姉さんは勧めてきたので、はあとため息一つ吐きながら面倒くさい顔をしてネリスは2枚地図を受け取る。
これさえあればこの街に迷う事はないだろうと、一歩状況が前進した事にネリスは安心し、大勢の声が耳に飛び込んでくるのが気になった。
「どうして今日はこんなに冒険者が多いんです?」
「ああえっと……」
お姉さんは慌てふためき、後の事を言っていいのか悩んだ素振りをすると、冒険者であるかどうかをネリスに確認し、ネリスは首を横に振って答える。
「それでしたら教える事は出来ません。あくまでも冒険者のみ情報共有をしているそうなので」
「そうですか……」
「(いいんだ、元々届かない夢だったんだ。人を救う力の無い者がそんな事を望んではいけない)」
人を救う英雄への道、その第一歩である冒険者、ネリスが一度は憧れた冒険者。
羨ましそうに剣や杖をテーブルに立てかけ、酒を飲んでいる者達をネリスは見つめる。お姉さんに向き直すと、納得しましたと別れを告げ、寂しそうな足取りでギルドを出た……。
◇ ◇ ◇
「えーっと、ここがパーティギルドか」
ネリスは地図と照らし合わせて【ロイヤルヘヴン】のパーティギルドである事を確認すると、扉をコンコンと手でノックしたが何も反応が返ってこない。留守なのかな、とネリスはイリナのペンダントをポケットから取り出す
「すいませーん、イリナはいますかー?」
と、また扉をノックをしてみるが、しばらく待ってもやはり反応が返ってこない。
ダメ元で扉に手をかけると鍵はかかっておらず、少し前へ力を入れるとギギギと鈍い音を立てて扉は開いた。
いいのかなと少々困惑しながらネリスは中へと入ると、部屋に明かりが1つもついておらず暗闇に包まれていた。ここにとても人がいるという雰囲気ではなかったが、誰かいるだろうとネリスは大声ですいませんともう一度叫ぶと、
「ッッ!!(世界よ止まれ、ダイヤルウォッチ――!!)」
目の前に1つの小さな光が見えた。
その物体の正体はわからなかったが、反射的にネリスは能力を発動させ、世界を止める。
「(なんだこれ……ナイフ?)」
光った物をよく見て確認したところ、どうやら投げナイフが向かってきていたようだ。そのナイフは殺傷能力が低く、先が丸く刺さらないように出来ていた。
しかし、あのスピードで向かってきたという事は誰かが警戒して思い切り投げたという事は間違いないだろう。
状況の確認が済んだネリスはナイフに当たらないよう一歩横にズレ、時間停止を解除する。
投げナイフはそのまま壁に向かってカンッと当たると地面へと転がった。
「何者だ?」
どこからか女性の声が聞こえる、この声はイリナではない。そう思ったネリスはイリナについて尋ねると、暗闇の中から金髪の女性剣士が足音立てて階段を下り、こちらへと向かってくる。
「イリナはここにはいない、そもそもお前は誰だ?」
女性は長い剣を腰に身につけていて、警戒を怠らない身振りでネリスに尋ねる。
返事をすると、何かを思い出すように顎に手を当て、
「ふむ……君がネリス・ロコーションか」
彼女はそう言って部屋の窓に取り付けられていた1つのカーテンをめくり、部屋一面に光が飛び込んできた。
この人は強そうだ、とネリスは心の中で思い彼女をじっくりと見る。世の中の全てを見透かしているような黒く、色の無い瞳が目に止まる。
髪型は真ん中分けで、手入れは一切していないのか髪の毛は好き放題に伸びている。
恐らく目にかからなければ良いという考えなのだろう、大雑把そうな人、それがネリスが見たグレアの印象だった。
ネリスは少し怯えながら誰ですか、と訪ねると腹の近くに畳んだ腕を置き、女性は右足を一歩下げながら軽く頭を下げ名前を名乗る
「失礼した、私はロイヤルヘヴンリーダーのグレアだ」
いつもと変わらない朝、憎たらしいほどに天気は快晴だった。
ため息一つ吐くと、ネリスはイリナの目が覚める前に朝飯の準備をして、寝ているイリナの身体を軽く揺さぶって起こす
「おい起きろ、朝だぞ」
「んー……」
呆けた返事をし、目を開けるとイリナは寝ぼけながら頭をポリポリとかき上半身を起こすが、思考が止まっているかのようにただどこか一点を見つめていた。
「(やべえ、こいつちょっと可愛い)」
少し力を入れてしまえばまたパタリと倒れてしまう。そう感じさせるほどイリナの身体は全身の力が抜けていた。
怒られる事を回避したとホッとしたネリスは今へ戻り椅子に座ると、寝間着姿のイリナがフラフラとした足取りでテーブルにつく、どうやらまだ眠いようだ。
あくび一つイリナはすると、ネリスが用意した食事に手をつける。
フォークとナイフを動かしながら、ネリスの名前を呼ぶ。
イリナのその表情は先程の眠そうな目から一変して、必ずこれだけは伝えなければいけない、そんな決意をした顔でネリスを見つめていた。
「ネリスくん、今日は騎士団の方に用があるから……。いつも通り家で大人しくしててね」
その言葉の意味を深くネリスは考えてはおらず、ただ一言わかったと返事をするだけで、会話が終わる。ネリスもまた、家を出たくない事情があった。
そう、昨日急に迫ってきたあの橙色の女の子がここへ来ないかとネリスは怯えていた。
結局あの後は追ってくることもなく無事に家に戻って来れたのだが、しばらく家に出ない方がいいとネリスは判断する。
「じゃ、行ってくるね」
「ああ」
バタンと閉まる扉の音を聞いて、もう1回寝るかとネリスは呟くと床へゴロリと寝転がる。
太陽が元気に活動し、人が仕事に出ているのを想像すると、優越感に浸ってネリスは鼻で笑うと、目を閉じた。
「選ばれた者の地区……か、選ばれなかった人間が住んでいいものなんかね」
イリナは俺を救いたかった、だから金を払ってでも俺を買って貴族の位置まで引き上げてくれた。
そのお礼をしなきゃと思って普段やらない事をやったら、結局諦めてしまった。
イリナ、俺さ。
このままお前にすがって生きてていいのかな――。
◇ ◇ ◇
「ありがとうございます、ありがとうございます。助けて頂きありがとうございます、このご恩は一生忘れません」
まただ、橙色の女の子、もう見たくないんだけどな
最悪な○○だ、あれ? ○○、うまく言えない。
「うるさい、どうでもいいから黙って食え」
「……」
犬みたいに食ってるんだけどこの子
というか俺……なんでこんな偉そうなんだろう。
「はあ、必死に生きれるって羨ましいよな」
なんだこいつ、無愛想な顔して本当に俺な――の
「……あっ」
目をこすると、ネリスは膝を立てて起き上がる。
「変な夢だったな……」
目線の高さを上げ、机を見下ろすとペンダントが1つ置いてあり、イリナが忘れていったのかなとネリスは首をかしげながら手に取った。
ペンダントは透き通るような泡色で、周りが1本の線で囲まれている開閉部分が気になったネリスは爪を軽く入れてみると、簡単にパカッと開く。
「なんだこれ、イリナのお母さん……かな?」
紙のようなモノに1人の女性が映っていた、これも魔法なのかとネリスは疑いながら掲げてじっと眺める。
手の平に収まる大きさのペンダントを指の腹で触っては力を入れたりして触るが、どういう原理でこの中の人の女性が映し出されているのか理解出来なかったネリスは、とりあえずペンダントを机に置くと、
「これ……やっぱ届けた方がいいかな?」
「(でもなあ、外でまたあの子と会うと怖かったりもする……)」
どうしようかと部屋の周りをウロウロし、妙にイリナに気に入られたいという気持ちに駆られ、やっぱり届けようと決意し、家のドアを開けた。
「さて……と、イリナは一体どこにいるんだろう?」
街を歩きながら辺りを見渡しても騎士団っぽい建物すら見つからず、さらに長い時間をかけてぶらぶら歩いていると、昔イリナと冒険に出た際に立ち寄ったギルドの前でピタリと止まるネリス
扉を開け中へと入ると、この前とは違ってより中は活気に溢れていた。
なぜ今日は冒険者が沢山いるんだろうか、とネリスは首を傾げながらカウンターの前へ向かう
「すいません、イリナを見てませんか?」
尋ねると胸の大きいお姉さんは不思議な顔して上の空を見て、ポンと閃いたように手を叩くと、受付のお姉さんはテーブルにその大きい胸を乗せながら、
「多分ですけど、ロイヤルヘヴン所属のイリナさんですか?」
「多分そうですね」
それでしたら今日は来ていないと伝えると、んー。とイリナがどこへ行ったのか検討もつかないネリス。
カウンターに前のめりの態勢から身体を起こすと、お姉さんは胸をぼよんと弾ませネリスに問う
「ギルド支部の方は訪れてみましたか?」
「ギルド……しぶ?」
気になったネリスは話を聞くと、どうやらギルドで気が合う者達がメンバーを組み、少人数で拠点を作るのが【ギルド支部】と言うらしい。
もう1つ聞かされた【パーティギルド】についても聞くと、最大4名まで登録する事ができ、このギルドで無しで登録した場合、この国へ出る際の人数とダンジョンへ向かった人数が違ってはいけないようだ。
ギルドのシステムを理解したネリスはなぜダンジョンや外へ出れるのが4人までなのか、と疑問に持ったが、まず目的であるイリナが所属しているパーティギルドについて尋ねると、
「イリナさんの所属しているロイヤルヘヴンへはここから北へ数分歩いたところですね」
「なるほど……あ、すいませんついでに地図1枚ください」
地図を受け取りネリスがお礼を言うと、なぜか受付のお姉さんはもう1枚地図を取り出しては、
「もう1枚いりますか?」
「いらないです」
「持っておけば便利ですよ? 唐突に便意をもよおした時とか」
「地図の扱いって雑なんですね」
引く事はなく、再度お姉さんは勧めてきたので、はあとため息一つ吐きながら面倒くさい顔をしてネリスは2枚地図を受け取る。
これさえあればこの街に迷う事はないだろうと、一歩状況が前進した事にネリスは安心し、大勢の声が耳に飛び込んでくるのが気になった。
「どうして今日はこんなに冒険者が多いんです?」
「ああえっと……」
お姉さんは慌てふためき、後の事を言っていいのか悩んだ素振りをすると、冒険者であるかどうかをネリスに確認し、ネリスは首を横に振って答える。
「それでしたら教える事は出来ません。あくまでも冒険者のみ情報共有をしているそうなので」
「そうですか……」
「(いいんだ、元々届かない夢だったんだ。人を救う力の無い者がそんな事を望んではいけない)」
人を救う英雄への道、その第一歩である冒険者、ネリスが一度は憧れた冒険者。
羨ましそうに剣や杖をテーブルに立てかけ、酒を飲んでいる者達をネリスは見つめる。お姉さんに向き直すと、納得しましたと別れを告げ、寂しそうな足取りでギルドを出た……。
◇ ◇ ◇
「えーっと、ここがパーティギルドか」
ネリスは地図と照らし合わせて【ロイヤルヘヴン】のパーティギルドである事を確認すると、扉をコンコンと手でノックしたが何も反応が返ってこない。留守なのかな、とネリスはイリナのペンダントをポケットから取り出す
「すいませーん、イリナはいますかー?」
と、また扉をノックをしてみるが、しばらく待ってもやはり反応が返ってこない。
ダメ元で扉に手をかけると鍵はかかっておらず、少し前へ力を入れるとギギギと鈍い音を立てて扉は開いた。
いいのかなと少々困惑しながらネリスは中へと入ると、部屋に明かりが1つもついておらず暗闇に包まれていた。ここにとても人がいるという雰囲気ではなかったが、誰かいるだろうとネリスは大声ですいませんともう一度叫ぶと、
「ッッ!!(世界よ止まれ、ダイヤルウォッチ――!!)」
目の前に1つの小さな光が見えた。
その物体の正体はわからなかったが、反射的にネリスは能力を発動させ、世界を止める。
「(なんだこれ……ナイフ?)」
光った物をよく見て確認したところ、どうやら投げナイフが向かってきていたようだ。そのナイフは殺傷能力が低く、先が丸く刺さらないように出来ていた。
しかし、あのスピードで向かってきたという事は誰かが警戒して思い切り投げたという事は間違いないだろう。
状況の確認が済んだネリスはナイフに当たらないよう一歩横にズレ、時間停止を解除する。
投げナイフはそのまま壁に向かってカンッと当たると地面へと転がった。
「何者だ?」
どこからか女性の声が聞こえる、この声はイリナではない。そう思ったネリスはイリナについて尋ねると、暗闇の中から金髪の女性剣士が足音立てて階段を下り、こちらへと向かってくる。
「イリナはここにはいない、そもそもお前は誰だ?」
女性は長い剣を腰に身につけていて、警戒を怠らない身振りでネリスに尋ねる。
返事をすると、何かを思い出すように顎に手を当て、
「ふむ……君がネリス・ロコーションか」
彼女はそう言って部屋の窓に取り付けられていた1つのカーテンをめくり、部屋一面に光が飛び込んできた。
この人は強そうだ、とネリスは心の中で思い彼女をじっくりと見る。世の中の全てを見透かしているような黒く、色の無い瞳が目に止まる。
髪型は真ん中分けで、手入れは一切していないのか髪の毛は好き放題に伸びている。
恐らく目にかからなければ良いという考えなのだろう、大雑把そうな人、それがネリスが見たグレアの印象だった。
ネリスは少し怯えながら誰ですか、と訪ねると腹の近くに畳んだ腕を置き、女性は右足を一歩下げながら軽く頭を下げ名前を名乗る
「失礼した、私はロイヤルヘヴンリーダーのグレアだ」
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