36 / 47
35 ゼフィロside
しおりを挟む「ん…朝…」
日差しを感じて目が覚める。腕の中には愛しい人。未だぐっすりと眠っていて起きる気配はなさそうだ。
昨日はかなり無理をさせた自覚はある。リコを何度も突き上げて吐精させて、何も出なくなっても繰り返し突き上げた。
昨夜のリコは堪らなく可愛かった。最初に私のモノを口に頬張って、頬を染めて潤んだ瞳で見つめられた時、これはダメだ、と思ったのだ。もう止められない、と。
お互いの気持ちを確かめ合って、初めてリコから好きだと言われて舞い上がった自覚はある。その上、リコからあんな風に積極的に迫られたら理性の糸は簡単にぶち切れるなんて当たり前だ。
今まで我慢していたこともあって、昨夜はタガが外れてしまった。好きだという気持ちが止まらなくなって、その思いのまま暴走してしまった。
『さっきのゼフィ様も、カッコよかったので…』
激しい交わりのあとに、ふにゃりとした顔でそんなことを言われたらもうどうにもできなくなった。あれはリコが悪い。リコが可愛すぎるのがいけない。
『もう…むりぃ……あん…あぁ……あ、もう、激し、すぎぃ…っ』
涙を流しながら、そう口にするリコ。はぁ…思い出しただけで股間に来る…。だがもう、今日はそっとしておいてあげよう。これ以上はリコが壊れてしまう。それほどまでに激しく交わったのだから。
今までにないほど、満たされた気持ちになっている。もちろんリコがそこにいるだけで、十分幸せだし楽しいのだが、気持ちを通わせた昨夜は今まで以上の幸福感だった。
それと同時に、絶対にリコを離す物かと誓った。
邪魔する奴がいたら……。ああ、そういえば既にいたな。迷惑な皇女が。
さて、あいつはどうしたものか。簡単に手を引くとは考えられないが、最悪の場合は――。
「ん~……ゼ……さ……」
リコが起きたのだろうか。そう思ってしばらく待ってみたが、むにゃむにゃと口を動かしただけで起きる気配はなかった。
このまま昼過ぎまで寝かせておくか。それくらいまで起きてこられないだろう。
頭にちゅっとキスを落とし、1人ベッドから降りる。身支度を整えてリビングへ行き茶を淹れた。
「はぁ…やっぱりリコが淹れてくれた方が美味しいな」
返す言葉がないのに、そう独り言ちた。すると外に人の気配がした。セルジオ達だろう。そろそろ来る頃かと思っていたからちょうどいい。
扉をノックされる前に鍵を開け扉を開けた。
「お。ノックする前に開いちゃった。おはよ、ゼフィロ」
「ああ、おはよう」
予想通り、セルジオ達だった。口々に朝の挨拶をしながら中へと入ってくる。
「あら? ウルリコさんはどうしたのですか?」
「リコならまだ眠ってる。恐らく昼頃まで起きてこないだろう」
「え…なんで?」
「抱き潰した」
「「は…?」」
ギルエルミとソニアの声が被る。仲が良いな。婚約した理由が理由だったが、なんだかんだ言ってもお似合いの二人だろう。
「ソニア、礼を言う。お陰でお互いのわだかまりが解けた」
「…ああ、いえ。それなら良かったのですけど…。ウルリコさんは大丈夫なのですか?」
「問題ない。癒しの魔法を掛けておいた」
「そうですか。まぁ、皇女の一件がありますからお互いが強い絆で結ばれてくれないと、その隙をついてややこしくなりそうなので良かったのですけど…ウルリコさんに無理をさせてしまいましたね」
私が抱き潰す原因となったのが自分だと思っているからか、ソニアは苦笑いをしている。抱き潰した原因はどちらかというと、リコが可愛すぎたからなのだが言う必要はない。
それからいつ頃王都へと発つのかという話になって、あまり時間がないことから2日後と決まった。リコが起きてきたらその話をしなければ。
王都へは転移を繰り返していくことから2週間もかからずに着くだろう。王都に着いたらまずは家へと戻り、家族にリコを紹介しないと。反対されることはないだろうが、リコと共にここに住むことの了承も貰っておかないとな。
「…え? 皆さん、どうしてここに!?」
そんなことを話していたら、リコが起きてきた。もう少し寝ているかと思ったが存外早い目覚めだな。…まだ抱き潰しても大丈夫ということか?
「おはようございます、ウルリコさん。体は大丈夫?」
「え? は、はい。大丈夫、ですが…?」
「ゼフィロは流石勇者というか、体力バカだからな。ま、今後も頑張れよ」
「へ? セルジオ様、どういう意味………あ、まさか……」
ぎぎぎぎぎ、という音が聞こえそうな動きで私の方を見るのでそのままコクリと頷いておいた。なぜ自分が今起きたのか、その理由はもう皆にバレているとリコも気づいたのだろう。
「うわあぁぁぁぁ! ちょ、え、ま、は!?」
真っ赤になった顔を手で覆い隠したと思ったら、奇声を上げてしゃがみ込んでしまった。ああ、もうそんなところすら可愛すぎてどうしようか。
「…ゼフィロ、ニマニマした顔、気持ち悪いから」
「ギルエルミ、失礼よ。否定はしないけど。それだけ幸せだという事でしょう」
「そうだな。ウルリコと再会した今のゼフィロは、締まりのない顔が多い」
こいつら……。
「おぉ、怖い怖い。じゃ、また2日後に来るね」
ぎろりと睨みつけたら、腕をさすりながら怖がる振りをしたギルエルミは立ち上がった。それを機に他のメンバーも立ち上がり、またね、と家を出ていった。
「全く……。リコ、そろそろ可愛い顔見せてくれる?」
リコの側へ寄ってしゃがみ込み、顔を隠した手をそっと外す。「…なんでバレてるんですかぁ」と恥ずかしくて半泣きのリコ。ねぇそれわざとなの? 可愛すぎてまた押し倒して抱き潰したいんだが。
「皆勘がいいからね」と抱き潰したことを皆に言ったことは黙っておいた。知られない方が良いこともある。
リコの手を取って立ち上がらせ、そのまま椅子に座った私の膝の上に乗せた。「え、なんで…?」と困惑気味のリコだが、お互い気持ちが通じ合ったのだから疑問に思う事もないだろうに。そのまま腰を抱き寄せ、首元に頭を乗せた。あー、リコの匂い。落ち着く…。
「くすくす。ゼフィ様って甘えんぼですよね」
「嫌?」
「いいえ、全然」
ゆっくりと頭を撫でる手が温かくて気持ちいい。今のこの時間が堪らなく幸せで愛おしい。
だから、この幸せな時間をぶち壊そうとするあの皇女を何とかしなければ。
「ねぇリコ。大事な話があるんだ」
「はい…」と撫でる手を止めて、聞く姿勢をとってくれた。一つため息を零し、口を開く。
「私は一度王都へと戻る。あの迷惑な皇女を何とかしないといけないから。だからリコには付いてきて欲しい」
「え…? 俺も一緒に?」
「そう」と答えて、リコに預けていた頭を上げる。リコの目を見てちゃんと伝えないと。
「私はこの先、リコと過ごしていきたい。リコと一緒になりたい。だから皇女が、いや、皇女だけじゃなくてリコ以外の誰かに、何を言われても何をされても一緒になることはない。
リコは私に子供を残せないと言っていたね。どちらかというと、私に子供は要らないんだ。というより、いない方が良い」
え? と目をぱちぱち瞬かせるリコ。
「皇女だけじゃなくて私の血を残そうとする人は多い。だけど、それは要らぬ災いを呼ぶ。誰が私の子供を産むのか。誰が私の血を残すのか。
そもそもスキルは遺伝しない。リコも知ってるでしょ? だから私の血を残したい云々言っているのはただの建前。私と繋がりを結び、有利に立てる地盤が欲しい。私という駒を使って権力を振りかざしたい。そういう人ばかりなんだ」
「………」
「だから私がリコと一緒になるというのは、そういった意味でも都合がいい。もちろんそれが目的じゃなくて、リコだから一緒になりたいんだ。それだけは信じて」
「はい。わかってます」
にこりと笑って頷いてくれたリコ。この前までの不安げな、悲しい顔じゃない。私の言ったことをちゃんと信じてくれている。
「それと。リコに付いて来て欲しい理由として、ここに残していくことが不安なんだ。もしかしたら、私とリコの仲を裂こうとリコに手を出してくる奴がいるかもしれない」
「それは…考えすぎなのでは?」
ふるふると首を振り、リコの手を握る。
「私とリコが恋人だと、この町では知れ渡っている。そしてリコの事を邪魔だと思う人間は、きっとリコに手を掛けるだろう。戦う術のないリコは最悪命を落とす危険がある。
これは大袈裟なんかじゃなく、あの皇女以外にも私を取り込もうとしている人間なら、平気でそういう事が出来るんだ」
びくりとリコの体が震えた。私といることで、命を狙われるなんて思いもしなかっただろう。ごめんリコ。それでも私は君を放すことは出来ない。私が側にいれば、そんな奴に手を出させることはしないが、私がいなければ悪意ある者の手によって、あっという間にリコは儚くなってしまうだろう。
「私の側にいれば、そんな事は絶対にさせないし守ることが出来る。だから一緒に付いて来てほしい。ついでに私の家族も紹介するよ。命の恩人であるリコに会いたいと言っていたしね」
「ひえっ! 辺境のただの薬師が、ゼフィ様のご家族に会う!? ダ、ダメですよ! 俺、マナーとかそんなの全然わかりませんし!」
「くすくす。そんなもの別にどうでもいいよ。そんなことで咎める様な人たちじゃないから、リコはリコらしくそのままでいてくれればいい」
「そんな事言われても…」とふにゃりと眉を下げたリコが可愛すぎる。我慢出来なくて、ちゅっちゅっと軽く口づけた。
「だから一緒に来てくれる? あの皇女は本当に話が通じなくて面倒な相手なんだ。だけど私はリコが居てくれれば何でも出来る。だから側で見守っていて欲しい」
「…わかりました。ゼフィ様の側にいる方が安全ですし、何も出来ないですけど寄り添う事は出来るので。連れて行ってください」
「ありがとう、リコ。愛してる」
私がそう言ってリコを抱きしめれば、リコも抱きしめ返してくれる。
『何も出来ないですけど寄り添う事は出来るので』
リコにそうされることが一番勇気が出て、安心出来て、力が湧いて来る。何も出来ないじゃない。それはリコにしか出来ない凄い事だ。リコが側に居てくれれば、それだけで何でも出来るんだよ私は。
私たちはお互いの温もりを感じるように、強く抱きしめ合った。
「あ、そうだ。ゼフィ様、聞いて欲しい話があるんです」
35
お気に入りに追加
567
あなたにおすすめの小説
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる