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番外編
秘密がいっぱい
しおりを挟むヴィンセントside
* * * * * * *
「ヴィンセント、この書類を確認したあと騎士団長様の所へ持って行ってくれるか?」
「はい。かしこまりました。」
初めは緊張していた王宮での仕事も今は大分覚えて慣れてきた。
新人の私は雑用から始まるだろうと思っていたのに、初日から宰相様の執務室で働く事になった時は声が出なかった。「君が来るのを待っていたよ。」と言われた時は嬉しいのと同時にプレッシャーも感じた。
私に出来るだろうか、と不安になってもライリーさんが大丈夫、と一言言ってくれるだけですっと肩の力が抜けて心が軽くなるからとても不思議だ。
「では騎士団長様の元へ行って参ります。…ライリーさん、行きましょうか。」
「よろしく頼みます。…ああ、新婚だからといちゃいちゃするのは控えてくださいね。」
「えっ!? あの…そんな事はっ!」
ははは!と皆さんに笑われてしまった。
ライリーさんは私の専属護衛として一緒に王宮で働いている。
そして皆さんは私とライリーさんが結婚した事ももちろんご存知だ。だからこうして冷やかされたりもする。
「流石にここではしませんよ。家に帰ってから存分にいちゃつくのでご心配なく。」
「ちょ、ライリーさん!?」
「これは子供が産まれるのも早いかもな~。ご馳走様~。」
うう…。恥ずかしすぎる。では!と逃げるようにして騎士団長様の元へと向かった。後ろからは「ははは!相変わらず可愛らしい。」と皆さんの笑い声が聞こえる。
「ヴィン、真っ赤になって可愛い。」
「ライリーさん、職場ですよ!…恥ずかしいのでやめてください。」
「…じゃあ言う事聞く代わりに、家に帰ったら楽しみにしてるから。」
「…わかりました。」
私はライリーさんには勝てない。嬉しそうに笑うその顔を見るとなんでもしてあげたくなってしまう。
それに私も期待していて。…私ってこんなにもふしだらな人間だったとは。
でも愛される喜びを知ってしまったらもうどうにもできなくなっていた。
「あ。待って!ヴィンセントって君でしょ?」
騎士団長様の執務室へもう着くという時ふと名前を呼ばれた。
足を止めてそちらへ顔を向けると、儚げな、という言葉がぴったりの大変美しい華奢な方がいらっしゃった。
「はい、ヴィンセントは私ですが…。あの…。」
「ああ、ごめんなさい。初めまして。僕はウォルター。ウォルター・プランマーです。よろしく。エイデンから君の話は聞いてるよ。目の色が違うなんて珍しいね。でも凄く魅力的だ。」
プランマー様って…。しかも騎士団長のことをエイデンと呼び捨てにされるこの方はもしかして…。
「ウォルター、こんな所でどうした?…ん?ヴィンセント殿にライリー殿まで。」
「あ、エイデン様。」
騎士団長のエイデン様もいらしたので全員で執務室へと入る。
「ああ、書類を持ってきてくれたのか。わざわざすまない。………よし、これでいい。これを宰相補佐殿に渡してもらえるか?」
「はい、かしこまりました。……ところで。」
先程からウォルター様から物凄く視線を感じていて少し居心地が悪い。私の顔に何か付いているのだろうか…。
「あ、ごめんごめん!あんまりにも綺麗な目だから見惚れちゃって。」
「ウォルター、じろじろ見るのはやめなさい。…すまないね。うちの伴侶が。…実は先日王都に戻ってきたばかりでね。仕事の関係でしばらく辺境へ行っていたんだ。」
ウォルター様はエイデン様と同じ騎士団の方だそうだ。だけど剣を振るうのではなく、騎士団内の文官をされている。そしてエイデン様とウォルター様は夫夫だそうだ。
……なるほど。だからか。だけど、まさかこういう関係だったなんて…。
「これからちょくちょく仕事で会う事もあると思うからよろしくね。」
「はい、ウォルター様。」
そして騎士団長様の執務室を後にしたのだけど。
「…ヴィン?どうかしたの?」
平静を保っていたつもりだったけど、ライリーさんにはバレていたらしい。
これ、言っていいのかな。うーん…どうなんだろう…。
でも結婚されてるし皆さんも知っている事なのかもしれないし…。まずはライリーさんにだけ言ってみよう。
「えっと…。私は人の魔力が視えるじゃないですか。それで、エイデン様の中にウォルター様の魔力が、その、視えまして…。」
「え。え?ええ!?」
「ちょ、ちょっと!声が大きいですよ!」
ライリーさんが驚かれるのも無理はない。だって華奢で儚げなウォルター様が、筋肉でガッチリムキムキのエイデン様を抱いているという事なのだから。
ぱっと見は逆だと思うけど、実際はそうじゃなかった。
「…まぁ、好みは人それぞれだからな。お互いがそれでいいなら外野が何かいうことではないけど。ただ、なんというか…意外、だな。」
「ですね。」
そして私は宰相様からこっそり依頼を受けていたりする。
こうやって人の魔力が視える事を利用して、ぱっと見ではわからない事を調査している。
王宮内で魔力の色が悪い方が居た場合、宰相様に報告して要注意人物としてこっそり監視したり。
他国からの使者がお見えになった時は隠し部屋からこっそり覗いて使者の方の魔力を視たり。
今回こうして騎士団長様の執務室へわざわざ向かっていたのも、その道中で魔力の色が悪い方が居ないか見つける為だったりする。
今後、強姦などの犯罪があった場合もこっそり私が体内に残った魔力を視て犯人を特定する事もあるだろうと言われている。
魔力を使った犯罪行為だった場合は、私が駆り出される事になるだろう。
だけど、思わぬところで今回の様に意外な発見もしたりするわけで…。
もしこれがその人達の秘め事だった場合は大変だ。絶対に漏らさない様にしなければ。
「魔力が視えるのも大変だな。知りたくないことまで知ってしまったりするし。…何かあったら僕にだけはなんでも言ってよ。1人で絶対抱え込まないで。」
「はい。わかりました。」
すぐ側に味方がいるというのはなんて心強いのだろう。
「戻りました。宰相補佐様、こちらをどうぞ。」
「ああ、ありがとうございます。……うむ、確かに。そういえば、ウォルター殿には会いましたか?」
「はい。エイデン様の執務室でお会い致しました。」
「以前からウォルター殿がヴィンセント殿に会いたい会いたいと言っていましてね。念願が叶ったようで何よりです。」
私に会いたいだなんてまたどうして?
聞くと目の色が違うだなんて珍しいから一目見てみたかった、とそういう訳らしい。なんだか見せ物になった気分だ…。
「ウォルター様とエイデン様はご夫夫なんですね。」
「そうなんですよ。あの2人も仲の良い夫夫でね。子供も3人恵まれています。ウォルター殿も優秀な方ですからね。妊娠出産で仕事を休んでいた間は大変だったそうですよ。」
ん?ウォルター様が出産された?
「…3人ともウォルター様がご出産を?」
「ええ。そうですが。どうかしましたか?」
「いえ、何も。…華奢な方でしたので3人も産んだのは凄いな、と思いまして。」
言えない。これは絶対言ってはいけない事だ。
エイデン様に残っていたウォルター様の魔力。かなりの量だったから。
これは私の胸の中にしまっておこう。
そして、この執務室の中には10人の方が働いていらっしゃる。その中にはおそらくカップルであろう方もいる。そしてそれは秘密にされているらしくて。
私はこうやって人に言えないことがどんどん増えてしまっている。うっかり口を滑らせない様にしなければ。
…私はこれからも上手くやっていけるだろうか。
* * * * * * *
エイデンとウォルターの補足。
2人は政略結婚です。エイデンは攻めたい人でウォルターも攻めたい人でした。でもウォルターはそれをいう事が出来なくて出産。その後、3人も産んだからもういいだろう、と攻めたい事を告白。エイデンはウォルターの望みを叶える為に受けになってみた結果、受けにハマってその後は攻め受け固定になりました。
ただこれは誰にも言っていない事なのでヴィンセントとライリー以外知りません。
明日もう1話おまけUPします。17:00の更新です。よろしければご覧ください!
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