【完結】平民として慎ましやかに生きようとするあいつと僕の関係。〜平民シリーズ③ライリー編〜

華抹茶

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13 大切な人が…

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「…エレンさんに謝らなければ。」

「うん。その時はサラッとでいいからな。」

ちょっと内容が恥ずかしい事だからな。サラッと謝ればそれでいい。

「でもヴィンておっちょこちょいなのか?ちょっと考えたらわかりそうなものだけど…。」

「…自分でも驚いています。なぜ思いつかなかったのでしょうか。」

「閨事を知らないわけじゃ、ないんだよな?」

「…そうですね、本で読みましたので知ってはいます。自分には関係ない事だと思って、今まで忘れていました。」

そっか。ここに来る前のヴィンだったらそう思っても仕方ない、よな。

「……興味、ある?自分に関係あるってなったら、興味、ある?」

僕はヴィンの事が好きだ。だから本当はキスもしたいし抱きたいとも思う。
でも無理やりなことは絶対しない。ヴィンを傷つけることはしたくない。

だから僕の事を気にしてほしいし好きになってほしい。友人じゃなくて恋人になりたい。


そんな真っ赤な顔が可愛くて胸がきゅってなって、ヴィンが欲しくなって顔を寄せた。

「あ……。」

最近のヴィンは表情が明るくなってすごく可愛くなったこと知ってる?それを見て僕がヒヤヒヤしてること知ってる?

その唇にキスをしたらどんな感じがするのかな。僕がこんな事考えてるなんて知らないでしょ?

ああ、もう少しでキス出来てしまう。…でもそれで嫌われたくない。でもキスしたい。

ちゅ。

唇は避けてヴィンの頬にキスをした。

「あ……。」

「…親愛のキス。ヴィンは大切な人だから。…もう戻ろう。」

誤魔化す様に部屋を出た。



あっぶなぁぁぁ!!咄嗟に変えた僕偉い!!

誤魔化したけど…誤魔化せたよな。……どうなんだろう。


もういいや。『大切な人』っていうのは間違ってないし。それで僕のこと気にしてくれるならそれでいいや。

……でも相手はヴィンだぞ。気にしてくれるかな。


ああああああ!!もうわからねぇ!!

もういいや。考えるのやめよ。答えなんて出ないし。



「あ、ライリー。父さんと母さんまだ戻ってこないんだけど、僕たち先に帰るね。」

「え、もう帰っちゃうの!?…アーネスト様だけ帰ればいいんじゃない?兄ちゃんは残ったら?」

「ダメだよ。明日魔法師団の仕事があるし転移門の予約もあるから。…また今度ゆっくり話そ。」


そう言って兄ちゃんは帰っていった。椅子に腰掛けてはぁ、とため息。

「…ライリーさん。あの…。」

ヴィンが戻ってきた。その顔はまだ少し赤みが残ってる。

「あの…私がこう思うのは烏滸がましいのかも知れませんが、その…私もライリーさんが『大切な人』です。」

「え?」

そのまま僕に近づいてきて、ちゅって頬にキスをしてきた。

「その…『親愛のキス』、なんですよね?ですので、お返しを…その、した方がいいのかと…。」

僕はそのままテーブルにガンッ!と頭をぶつけて突っ伏した。

「ライリーさん!? 大丈夫ですか!? 凄い音がしましたけど!?」


いや待って待って待って!! 何これ何これ何これぇ!!

可愛すぎてしんどい!無理!どうしよう!このまま襲いたい!

ぐぅ…僕の股間が…。落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着けぇぇ!!

僕の気持ちなんてわからないヴィンは「大丈夫ですか?」とそこでウロウロしていた。

…うん、大丈夫だからちょっとそっとしてもらえると助かるかな。ごめん。


「…あれ。アシェル達は帰ったのか。」 

「あ、エレンさん!先程は大変申し訳ございませんでした!」

「ああ…大丈夫。ごめんな。うん、もう大丈夫だから。」

父さんと母さんも戻ってきて、ちょっと変な空気になってたけどには触れずに、食事の準備を始めた。



「ヴィンセント、その魔眼の事だがあまり人には話さない方がいいと思う。…最近少し怪しい動きがあるからな。」

「はい、ライアスさん。…実はこの目の事は誰にも言ってなかったんです。ですので知っているのは皆さんだけです。」

それならいい。と父さんも安心した様だ。

こんな事他に知られたら大変なことになる。人の魔力が視えて、しかもそれが人の善悪までわかるなんて利用しようと思えばいくらでも利用できる。

「ヴィンはこれから1人で外に出るのはやめた方がいい。絶対誰かと一緒にいる事。わかった?」

「はい。」

ガンドヴァの奴らがソルズに入ってるって言ってたし、戦えないヴィンが狙われたら何も出来ない。



それから数日が経ち僕たちは魔物討伐に出かけることになった。

「魔物のいる場所はここから少し離れていてな。戻ってこれるまで3日程かかるだろう。馬を用意したから後は頼んだ。それともし何かあれば『通話の魔道具』で連絡をくれ。こちらも何かあれば連絡を入れる。」

「了解。デイビットさん助かる。準備はバッチリだから行ってくるな。」

「あとヴィンセントの事は任せてくれ。面倒見ておく。」

「うん。ヴィンのことお願いね。」

ちょっと不安だけど、僕たちが居ない間はデイビットさんの家で世話になることになった。デイビットさん達なら僕たちも安心だからお願いする事にした。

「皆さんお気をつけて。お戻りをお待ちしております。」

ヴィンに見送られて僕たちは討伐へと向かった。


馬で進んで1日。思ったよりも進みが悪かった。というのも、魔物の数が多かったから。

「これは少しおかしいな。魔物の数が多すぎる。」

「だよな。低ランクの魔物ばっかりだから大した事ないけど、数が多いのは何かおかしい。…一応デイビットさんに連絡入れておこう。」

そう言って母さんは魔道具でデイビットさんに連絡を入れた。


それから野営をして翌日。ようやく目当ての魔物を見つけた。
コイツもソルズ付近じゃ見かけないヤツでかなりの巨体だ。

剣に『エンチャントの魔道具』を付けて魔力を流す。今回僕は雷の魔法を乗せた。父さんは火。

いつも通り母さんが魔法でヘイトを買う。注意が向いたところで僕は一気に距離を詰め斬りつけた。

雷の魔法が直撃するから魔物は痺れて動けなくなっている。そこに父さんが火を纏わせた剣で斬りつけるとあっさりと切断されて討伐が終わった。

「…あれ?終わり?」

「魔力剣よりも刃の通りが良かったです。」

「燃やしながら斬りつけるからかな?…とりあえず魔力剣よりも強い事が分かったな。」

「巨体な魔物はこれがあると簡単だね。…こんなに早く終わるなんて思わなかった。」


目的は果たしたからソルズヘと戻る。ここへ来るまでにそれなりに魔物を討伐しながら来たから帰りは楽だった。でもまた一泊野営をする事になる。

日が高いうちに順番に水浴びして、食事をとって交代で見張りをする。

その間も僕はヴィンの事が気になって仕方なかった。

デイビットさんに任せてあるから大丈夫だと思うんだけど、なんか嫌な予感ていうかゾワゾワするのが無くならない。

何事もなければ良いんだけど…。


翌朝早くに起きて出発した。しばらくすると『通話の魔道具』が音を鳴らした。

「こちらエレン。何かあったのか?」

『エレン!大変だ!ヴィンセントが何者かに連れ去られた!今どこにいる!?』

なんだって?ヴィンが連れ去られた? 

「はぁ!? なんでそんな事に!俺たちはまだ街に着くまで少しかかる!急いで戻るからそっちもっ…!」

「デイビットさん!いつ!? いつ連れ去られたの!?」

『ライリーか!?そんなに時間は経っていない!だからソルズの街からは出ていないはずだ。すでに転移門も街の門も封鎖した。こっちでも冒険者に言って人海戦術で捜索に当たっている。』

「すぐ戻るから!」

馬に鞭を入れて一気に駆け出していく。

「おい!ライリー!」

無事でいて!ヴィン!絶対助けるから!



ヴィンに手を出したヤツ。絶対許さない!殺してやる!

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