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俺は人生の選択を誤ったらしい

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 最新機種のスマホを手に入れた俺は、家に帰るとすぐにあのゲームをダウンロードした。俺はいったい何やってんだ、と思わなくもなかったがどうしてもやらずにはいられなかったのだ。

 ゲームが始まると荘厳な雰囲気の音楽が流れだした。そしてプロローグが始まる。俺は興味がないため、スキップボタンで飛ばし飛ばし見ていった。そしてとうとうパートナーとなるキャラクターを選ぶ場面へと突入する。

 色々なキャラクターの特徴が書かれたプロフィールを一通り見てみるが、気になるのはバルトロメウスただ一人だけ。こいつをパートナーに選び早速ストーリーを進めていく。が、ここで新たな問題が発生した。

「は? チケット?」

 ストーリーを進めていくにはストーリーチケットなる物が必要だったのだ。1日5枚のチケットを無料で手に入れられるが、それ以上進めたい場合はチケットの購入をしなければならない。しかもえっちぃストーリーの場合は2枚必要だった。なんだそれ。

 明日のログインボーナスまで待つか。と思って一度はゲームを閉じた。が、どうしても続きが気になってしまって俺は課金することを選択した。

「え、これどっち選べばいいんだ?」

 ストーリーが進んでいくと選択肢が現れる。2個の場合もあれば3個の場合もあった。とりあえずわからないから直感で適当に選んでいく。
 そしてとうとうエロストーリーも解放された。初めて男同士のそれを見た俺は「うわぁぁぁ!」と内心叫んでいた。

 だっていくら白抜きされてるからとはいえ、がっつりアレがアソコに入ってぬっこぬっこ言ってるんだぞ!? ガンガン突かれた主人公はあんあん言ってるし、ご立派なモノを突っ込んでるバルトロメウスは気持ちよさそうに『ここか?』とか言いながら腰振ってるし…。
 効果音やボイスががっつり入ったそのシーンは正直かなりエロかった。バルトロメウスのイケボが耳に残って、俺はその日、初めてゲームで抜いてしまった。

 そうやって課金しつつも5日間でバルトロメウスのストーリーを終わらせた。のだが…。

「は? 死んだ…? え!? お前死んじゃうの!?」

 バルトロメウスは自分の命と引き換えに、太陽の暴走を止めたのだ。『君と一緒に戦えて良かった…』と一言残し、バルトロメウスは消滅した。そして最後にはバッドエンドの文字。

「え? なにこれ……」

 俺は呆然としてしばらくそのまま動くことが出来なかった。だって、あんなに気になっていたバルトロメウスが死んだんだぞ。『この戦いが終わったら結婚しよう』とかなんとか言ってたのに。フラグ立てんな! って思ってたけど見事に回収されてしまったのだ。

「こんな結末納得できるかっ!」

 絶対にバルトロメウスを死なせずクリアしてやる! とまたニューゲームのボタンをタップする。

 ズルをしてでもハッピーエンドにさせようと攻略法を調べてみた。が、マイナーなゲームなのかどこにもこのゲームの攻略法は載っていなかった。仕方ないので選択肢が現れる度に好感度の上がり方を記録していった。

 何日も費やし、何度もやり直し、その度に課金をし、やっとこの日を迎えることが出来た。

『翔月、これで平和が取り戻せた。君のお陰だ、ありがとう。愛してる』

 そしてラストは感動のえっちシーン。お互い傷だらけなのにマッパになってご褒美えっち。ストーリー内のえっちシーンよりも長くいやらしいシーンに俺は釘付けになった。

 そして最後にハッピーエンドの文字が現れる。

「よっしゃーー! やっとクリアできたーー!!」

 俺はスマホを天に掲げて勝利のポーズ。やり切った。俺はやり切ったんだ!
 課金額は最終的に考えることを止めた。恐ろしい額を投資したことだけはわかるが、数字として見るのが怖かった。だけどそれだけ課金した甲斐があった。最後に見せたバルトロメウスの蕩けるような笑顔。それを見た時俺は何とも言えない感動に包まれた。

「はぁ…BLゲームだと思って最初は引いたけど、バルトロメウスが幸せになって良かった」

 手にしたスマホの画面にはバルトロメウスと主人公のキスシーンを背景に『Congratulation!』の文字がレインボーで書かれていた。

「にしてもラストのえっちシーンすごかったな…。濃厚と言うか何と言うか…。BLゲーム恐るべし。しかも名前まで声付きだったしな…最近のゲームは凄いな」

 と言ったところでふと気になることが出来た。

 主人公の名前を俺は入力したっけ? と。

 ゲームスタート時『主人公の名前を決めてください』と出てきたが、考えるのがめんどくさかった俺はデフォルトの名前『ユエ』のままにしていた気がする。だけど、最後の方でバルトロメウスは『翔月』と言っていなかったか? しかもえっちシーンではボイスでしっかり『翔月』と言っていなかったか?

「え? 俺の気のせい? 勘違い?」

 俺は頭に『?』マークをたくさん飛ばしながらスマホの画面を見つめていた。そこにあるのは変わらず2人のキスシーンを背景にCongratulation! と書かれた文字だけ。だったのだが。

「え…? うわっ!?」

 いきなりスマホが凄い光を放ち一切目の前が見えなくなった。それと同時に俺は意識を手放してしまった。
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