上 下
22 / 44

22.魔物だと思われていた

しおりを挟む

 僕のクラスは一番上のAクラス。首席合格だったからね。
 そしてクラスでの僕はとても遠巻きにされている。僕の顔、というか目の色を見てビクッとした後、すーっと離れていく。

 僕は同年代の人とほとんど関わってこなかった。周りは大人ばかりの中で、しかも僕の目の色に対して忌避感を抱いていない人ばかりだった。だからこんな反応されるとは思っていなかった。

 いつの日だったかちらりと聞こえた声。――金色の目なんて魔物みたい…

 きっと皆が怯えた感じなのは、僕は魔物だと思われているからだろう。母様も昔、こんな感じだったのかな…。

 魔物、と一口に言ってもマテオみたいな神獣と呼ばれる貴い魔物もいる。でも冒険者でもなければ『魔物は恐ろしい生き物』、という認識なんだろう。

 だから僕は皆にとって『恐ろしい人物』になっているんだろう。それは別にいいんだけど……。

「ジェフリー! 食堂に行こうぜ」

「レジナード…」

「ん? どうした? 俺の顔になんかついてる?」

「いや…。レジナードは僕と一緒にいていいの? 僕の噂、聞いてると思うんだけど……」

「え? ああ、アレね。俺にすればバカバカしいという感想しかない。そんなことより腹減った。食堂行くぞ」

 レジナードは小さな時から変わらない。僕が学園で変な噂がたっているのに「それがどうした?」って全く気にしていない。

 食堂へ行きランチを受け取る。そして空いてる席に座ればその周りにいた人達はさっと立ち上がり何処かへと行ってしまう。お陰で僕たちの回りは不自然な形で席が空く。

「……お前の目、そんなに怖いか? カッコいいのにな」

 レジナードは呆れた顔でそう呟いた。本当に小さい時から変わらない。一番最初に会った時『なにその目! 金色なんてカッコいい! すげー!』だったっけ。

「レジナードは変わらないよね」

「ん? 何が?」

「なんでもない」

 僕の事が怖くてこうなってるのは別にいいんだけど、意外と寂しいものなんだなって最近わかった。だからレジナードの変わらない態度が実は嬉しかったりする。ずっと一緒にいたいわけじゃないとか思ってごめんなさい。いつもありがとう。

 友達作ってこいって言われて学園に来たけど、僕の目が周りにとって畏怖と感じるんだって認識できたことは、ある意味収穫だと思った。

「2人共、僕もこの席座ってもいい?」

「リアム兄様。一杯空いてるのでどうぞ」

「ふふ、ありがとう。お陰で見つけやすくて助かるよ」

「だけどいいんですか? 兄様の後ろにいる人、兄様と一緒に食事したいみたいですけど…」

 ちらりと兄様の後ろを見れば、そわそわとしている人数名…。

「ああ、どうでもいいかな。可愛いジェフリーに対してあんな態度なんだもん。そんな人と関わりたいと思わないし。さ、食べよー」

 うん、かなり怒っているご様子だ。きっといつも一緒にいる僕の事で何か言われたんだろう。もしフィンレー兄様がこの場にいたら暴れそうだな…。いなくて良かったかもしれない。


 そんな感じでしばらくはこの3人で集まってることが多かった。リアム兄様は学年も違うし魔法科だしで、一緒にいられない時は多かったけど。

 そして授業はとてもつまらなかった。だってもう学習し終わってる内容だし、新しい知識の欠片もないし。これなら学者の皆さんと話してる方がよっぽど勉強になる。

 解読の方はどうなったかな…。新しい収穫はあったのかな。入学してから僕はそっちの方は全く関わっていない。寮生活だし、外に出られる機会は少ない。
 休みの日は家へ帰ってる。その時に行けばいいんだけど、マテオが僕がいない間寂しいみたいで構って構ってと騒がしい。だからマテオの相手を兼ねて冒険者として活動するようになった。

 学者の皆さんから連絡がこないってことは、進展がないってことなんだろな。


「あ~……家に帰りたい……」

「またそれか?」

「だって、授業もつまんないしやることないんだもん」

 放課後、学園内のカフェテラスでレジナードとリアム兄様とお茶をしている。学園に入学して半年、僕のため息がだんだん増えてしまって、愚痴を吐けと2人に連れてこられた。

「ジェフリーは天才だもんね。授業が面白くないことは分かるけどこればっかりはね…。
 じゃあ今度の試験、ジェフリーに手伝ってもらおうかな。僕魔法の実技は問題ないんだけど、筆記が少しね…。どう?」

「僕は天才じゃないですよ。早く勉強終わらせなきゃって思って必死にやっていただけなので。
 魔法科の授業僕にわかるでしょうか。一度見てみて大丈夫ならやりますよ」

「やった! ジェフリーなら直ぐに解けちゃいそうだね。今度教科書見せてあげる」

 僕たち3人はこんな感じでほのぼのとお茶してるけど、周りの目は相変らずだ。
 授業で会話しなきゃいけない時もあって僕が話しかけると、話しかけられた人は物凄く怯えてしまう。先生もそれを見て、僕に特別課題を出してあまり他の人と関わらないようにされてしまった。

 ……アルの事がなかったら、今すぐにでも辞めてしまいたい。

「ジェフリー! ここにいましたか!」

「え!? 母様!? 父様まで…!?」

 学園のカフェテラスに両親がいきなり現れた。それもかなり急いで駆け付けたみたいで、母様は息が上がっている。
 父様が現れたからだろう。一気に周りが騒がしくなった。父様は『ドラゴン討伐の英雄』として有名だからね。

「今すぐ王宮へと向かいますよ。グリュック王国のヴォルテル陛下から、例の事について報告がありました」

「え…!? 本当ですか!? レジナード、リアム兄様すみません! 僕ちょっと行ってきます!」

「あ、うん。行ってらっしゃい」

「叔父様、叔母様こんにちは。ジェフリーまたね」

「悪いな2人共。ジェフリーを借りて行くぞ」

 そのまま駆け足で学園を突っ走っていく。そして馬車乗り場へ行き王宮へ向かった。

「母様、一体何がわかったんです?」

「グリュック王国で文献、神話から全て調べていたそうで、以前の大規模スタンピードに関することが書かれていたと連絡がありました」

「なっ! それは本当ですか!?」

「私もそこまでしか聞いていません。それで宰相様から貴方を連れてくるように言われたんです」

「お前には通話の魔道具渡してないからな。直接来るしかなかったんだ」

 なるほど。それでわざわざ学園に。

 でも凄い。グリュック王国にそのことが書かれていたものがあったなんて…。

 こんな時、瞬間移動があればいいのにと思ったことはない。早く王宮へ行って話を聞きたい!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

薬師は語る、その・・・

香野ジャスミン
BL
微かに香る薬草の匂い、息が乱れ、体の奥が熱くなる。人は死が近づくとこのようになるのだと、頭のどこかで理解しそのまま、身体の力は抜け、もう、なにもできなくなっていました。 目を閉じ、かすかに聞こえる兄の声、母の声、 そして多くの民の怒号。 最後に映るものが美しいものであったなら、最後に聞こえるものが、心を動かす音ならば・・・ 私の人生は幸せだったのかもしれません。※「ムーンライトノベルズ」で公開中

【R18BL】世界最弱の俺、なぜか神様に溺愛されているんだが

ちゃっぷす
BL
経験値が普通の人の千分の一しか得られない不憫なスキルを十歳のときに解放してしまった少年、エイベル。 努力するもレベルが上がらず、気付けば世界最弱の十八歳になってしまった。 そんな折、万能神ヴラスがエイベルの前に姿を現した。 神はある条件の元、エイベルに救いの手を差し伸べるという。しかしその条件とは――!?

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

傾国の美青年

春山ひろ
BL
僕は、ガブリエル・ローミオ二世・グランフォルド、グランフォルド公爵の嫡男7歳です。オメガの母(元王子)とアルファで公爵の父との政略結婚で生まれました。周りは「運命の番」ではないからと、美貌の父上に姦しくオメガの令嬢令息がうるさいです。僕は両親が大好きなので守って見せます!なんちゃって中世風の異世界です。設定はゆるふわ、本文中にオメガバースの説明はありません。明るい母と美貌だけど感情表現が劣化した父を持つ息子の健気な奮闘記?です。他のサイトにも掲載しています。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

帝国皇子のお婿さんになりました

クリム
BL
 帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。  そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。 「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」 「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」 「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」 「うん、クーちゃん」 「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」  これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。

[完結]嫁に出される俺、政略結婚ですがなんかイイ感じに収まりそうです。

BBやっこ
BL
実家は商家。 3男坊の実家の手伝いもほどほど、のんべんだらりと暮らしていた。 趣味の料理、読書と交友関係も少ない。独り身を満喫していた。 そのうち、結婚するかもしれないが大した理由もないんだろうなあ。 そんなおれに両親が持ってきた結婚話。というか、政略結婚だろ?!

処理中です...