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22.魔物だと思われていた
しおりを挟む僕のクラスは一番上のAクラス。首席合格だったからね。
そしてクラスでの僕はとても遠巻きにされている。僕の顔、というか目の色を見てビクッとした後、すーっと離れていく。
僕は同年代の人とほとんど関わってこなかった。周りは大人ばかりの中で、しかも僕の目の色に対して忌避感を抱いていない人ばかりだった。だからこんな反応されるとは思っていなかった。
いつの日だったかちらりと聞こえた声。――金色の目なんて魔物みたい…
きっと皆が怯えた感じなのは、僕は魔物だと思われているからだろう。母様も昔、こんな感じだったのかな…。
魔物、と一口に言ってもマテオみたいな神獣と呼ばれる貴い魔物もいる。でも冒険者でもなければ『魔物は恐ろしい生き物』、という認識なんだろう。
だから僕は皆にとって『恐ろしい人物』になっているんだろう。それは別にいいんだけど……。
「ジェフリー! 食堂に行こうぜ」
「レジナード…」
「ん? どうした? 俺の顔になんかついてる?」
「いや…。レジナードは僕と一緒にいていいの? 僕の噂、聞いてると思うんだけど……」
「え? ああ、アレね。俺にすればバカバカしいという感想しかない。そんなことより腹減った。食堂行くぞ」
レジナードは小さな時から変わらない。僕が学園で変な噂がたっているのに「それがどうした?」って全く気にしていない。
食堂へ行きランチを受け取る。そして空いてる席に座ればその周りにいた人達はさっと立ち上がり何処かへと行ってしまう。お陰で僕たちの回りは不自然な形で席が空く。
「……お前の目、そんなに怖いか? カッコいいのにな」
レジナードは呆れた顔でそう呟いた。本当に小さい時から変わらない。一番最初に会った時『なにその目! 金色なんてカッコいい! すげー!』だったっけ。
「レジナードは変わらないよね」
「ん? 何が?」
「なんでもない」
僕の事が怖くてこうなってるのは別にいいんだけど、意外と寂しいものなんだなって最近わかった。だからレジナードの変わらない態度が実は嬉しかったりする。ずっと一緒にいたいわけじゃないとか思ってごめんなさい。いつもありがとう。
友達作ってこいって言われて学園に来たけど、僕の目が周りにとって畏怖と感じるんだって認識できたことは、ある意味収穫だと思った。
「2人共、僕もこの席座ってもいい?」
「リアム兄様。一杯空いてるのでどうぞ」
「ふふ、ありがとう。お陰で見つけやすくて助かるよ」
「だけどいいんですか? 兄様の後ろにいる人、兄様と一緒に食事したいみたいですけど…」
ちらりと兄様の後ろを見れば、そわそわとしている人数名…。
「ああ、どうでもいいかな。可愛いジェフリーに対してあんな態度なんだもん。そんな人と関わりたいと思わないし。さ、食べよー」
うん、かなり怒っているご様子だ。きっといつも一緒にいる僕の事で何か言われたんだろう。もしフィンレー兄様がこの場にいたら暴れそうだな…。いなくて良かったかもしれない。
そんな感じでしばらくはこの3人で集まってることが多かった。リアム兄様は学年も違うし魔法科だしで、一緒にいられない時は多かったけど。
そして授業はとてもつまらなかった。だってもう学習し終わってる内容だし、新しい知識の欠片もないし。これなら学者の皆さんと話してる方がよっぽど勉強になる。
解読の方はどうなったかな…。新しい収穫はあったのかな。入学してから僕はそっちの方は全く関わっていない。寮生活だし、外に出られる機会は少ない。
休みの日は家へ帰ってる。その時に行けばいいんだけど、マテオが僕がいない間寂しいみたいで構って構ってと騒がしい。だからマテオの相手を兼ねて冒険者として活動するようになった。
学者の皆さんから連絡がこないってことは、進展がないってことなんだろな。
「あ~……家に帰りたい……」
「またそれか?」
「だって、授業もつまんないしやることないんだもん」
放課後、学園内のカフェテラスでレジナードとリアム兄様とお茶をしている。学園に入学して半年、僕のため息がだんだん増えてしまって、愚痴を吐けと2人に連れてこられた。
「ジェフリーは天才だもんね。授業が面白くないことは分かるけどこればっかりはね…。
じゃあ今度の試験、ジェフリーに手伝ってもらおうかな。僕魔法の実技は問題ないんだけど、筆記が少しね…。どう?」
「僕は天才じゃないですよ。早く勉強終わらせなきゃって思って必死にやっていただけなので。
魔法科の授業僕にわかるでしょうか。一度見てみて大丈夫ならやりますよ」
「やった! ジェフリーなら直ぐに解けちゃいそうだね。今度教科書見せてあげる」
僕たち3人はこんな感じでほのぼのとお茶してるけど、周りの目は相変らずだ。
授業で会話しなきゃいけない時もあって僕が話しかけると、話しかけられた人は物凄く怯えてしまう。先生もそれを見て、僕に特別課題を出してあまり他の人と関わらないようにされてしまった。
……アルの事がなかったら、今すぐにでも辞めてしまいたい。
「ジェフリー! ここにいましたか!」
「え!? 母様!? 父様まで…!?」
学園のカフェテラスに両親がいきなり現れた。それもかなり急いで駆け付けたみたいで、母様は息が上がっている。
父様が現れたからだろう。一気に周りが騒がしくなった。父様は『ドラゴン討伐の英雄』として有名だからね。
「今すぐ王宮へと向かいますよ。グリュック王国のヴォルテル陛下から、例の事について報告がありました」
「え…!? 本当ですか!? レジナード、リアム兄様すみません! 僕ちょっと行ってきます!」
「あ、うん。行ってらっしゃい」
「叔父様、叔母様こんにちは。ジェフリーまたね」
「悪いな2人共。ジェフリーを借りて行くぞ」
そのまま駆け足で学園を突っ走っていく。そして馬車乗り場へ行き王宮へ向かった。
「母様、一体何がわかったんです?」
「グリュック王国で文献、神話から全て調べていたそうで、以前の大規模スタンピードに関することが書かれていたと連絡がありました」
「なっ! それは本当ですか!?」
「私もそこまでしか聞いていません。それで宰相様から貴方を連れてくるように言われたんです」
「お前には通話の魔道具渡してないからな。直接来るしかなかったんだ」
なるほど。それでわざわざ学園に。
でも凄い。グリュック王国にそのことが書かれていたものがあったなんて…。
こんな時、瞬間移動があればいいのにと思ったことはない。早く王宮へ行って話を聞きたい!
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