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 それからはゆっくりお風呂に入ってご飯を食べて。それから夜にまたテオ様の後ろを開発して。

 翌日には挿入までやった。

「あっ…く…んうっ!」

「はっはっ…テオ様、気持ち、いいです、か?」

「あ…気持ち、いいっ…んあっ」

 パンっパンっと音が響くぐらい腰を打ち付ける。何度も何度も。テオ様もすっかり快感を拾えているようですごく気持ちよくなっている。今回は初めての挿入で辛くならないよう後ろから突いている。顔は見えないけど、きっととろんとした顔をしているんだろう。

 俺よりもデカい人なのに、俺に組み敷かれてあんあん言ってるこの状況。やばい…俺もなんかハマりそう。でも本当は嵌めて貰う方が好きだからテオ様にガンガンやってほしいけど。不能だって言うのが残念だよほんと。

 後ろから突きながら前もちゃんと弄ってあげる。不能だって言うのが信じられないくらいガッチガチだ。

「あ、もう、ダメ、だっ…イクっ! イクっ! イ、クぅっ…!」

「俺もっ…うっ…!」

 テオ様がイってからすぐ俺もイッた。びゅるびゅるっと白濁液を噴き出している。体をびくんびくんと震わせて、精子を出し切ったらくたりと倒れこんだ。

「テオ様、今日も上手にイケましたね。よくできました」

 後ろから抱きしめながら頭を撫でてあげる。本当なら不敬かもしれないけど、テオ様も嬉しそうだし大丈夫だよな。


 それから残された日数、こうやってテオ様を突いて突いて突きまくって後ろの練習を終えた。本番は、将来の結婚相手だろう。その時にちゃんと上手く出来たらいいな。


「イルミリオ、今日まで世話になった。ありがとう」

「いいえテオ様。この一週間とても楽しかったです。こちらこそありがとうございました」

「ああ、俺も楽しかった。まさかああなるとは思いもしなかったが…。だが、君のお陰で悩みも無くなった。本当に礼を言う。名残惜しいが、国に帰らねば。では元気でな」

「はい。テオ様もどうぞお元気で。これからの活躍をここからお祈りしています」

 最後に軽くハグをして別れた。もう二度と会うことはないだろう。本当にこの一週間がとても楽しくてずっとこうだったらいいのに、なんてあり得ないことを考えたりもした。

 でも時間は無情にも過ぎていく。テオ様が去った後も俺はしばらくそこから動けなかった。

「…あれ? なんで…」

 気が付けばぽろぽろと涙を流していた。

「はは…寂しいなんてこの俺が思うなんて…」

 俺を育ててくれたここの主人以外で、初めて俺を認めてくれた人だった。褒めてくれた人だった。
 俺を大切にしてくれた人だった。優しくしてくれた人だった。

 でももう二度と会うことは出来ない。俺もここから出るつもりもない。

 テオ様との思い出は忘れることはないだろう。



 そしていつもの日常へと戻った。


「あんっ、あ…もっとっ…そこ、いいっ! あっあっ、やん!」

 今日も俺に客が付く。いつものように好きに抱かれて、客を満足させてやる。

「ほらよっ! もっと締まりをよくしろっ!」

 バチンっ! と尻を思いきり叩かれかなり痛い。

「ああっ! 良い! 気持ちいいっ!」

 本当は叩かれるなんてただ痛いだけで大嫌いだ。だけど、それが良いと思わせなきゃいけない。

「ははっ! 叩かれて感じるなんてとんだ変態だなっ! だが締まりが良くなったぞっ! おらっ!」

 そしてまた叩かれる。後でかなり腫れるだろう。ちゃんと冷やしておかなきゃ…。


 苦痛の時間を過ごし、その客を見送る。「今日もよかったぞ。また来る」そう言って満足そうに帰っていった。

 もう二度と来んな、ばーか。


 そしていつものように小間使いを呼び部屋の掃除をさせ、俺は風呂へと向かう。

「くっそ…。痛ぇ…。あのジジイ何度も何度も叩きやがって…。俺の可愛いお尻が腫れてら」


 風呂から上がり軽く食事をして、綺麗になったベッドで横になる。そして思い出すのはテオ様のこと。

『イルミリオは化け物なんかじゃない。この髪も、その瞳もとても綺麗だと思う』

『君は賢いな。男娼だなんて勿体ない。…でもそのお陰で俺は救われた』

『この出会いに感謝しなければな。そう思えば俺の過去も意味があったのかもしれない』

 あの低くて優しい声。頭を撫でてくれる大きな手。包み込んでくれる俺よりも大きな体。温かい言葉。

『イルミリオの淹れる茶は美味いな。これからもずっと飲みたいくらいだ』

『ほう。良く知っているな。流石だ』

『君は優しいな。心が温かくて癒される。…きっと痛みを知っているからこそ、人の痛みにも気づけて労われるのだろうな』

 好きに抱かれるための男娼なのに。欲を満たすだけの存在なのに。そんな俺を1人の人間として扱ってくれる優しい言葉。

「テオ様…」

 俺は客に恋をした。テオ様に恋をしてしまった。ただの男娼なのに。ただの客なのに。

 そして今日も枕を濡らしてテオ様を想う。もう二度と会えないあの人を想って。



 そしてあの日から8か月ほど経ったある日。ここの主人が部屋に飛び込んできた。

「ミリオ! 起きてるかっ!?」

「…んあ? 何? まだ寝てたわ…。今何時…って寝てから3時間しかたってねぇじゃん。なんだよ…俺疲れてんのに…」

「馬鹿野郎! 急いで起きろ! お前に客だ!」

「…はぁ? 客ぅ? つーかまだ店開いてねーだろうが。誰だよ、そんな非常識な客は…」

「イルミリオ、久しいな。非常識で済まない。だが早く会いたくて無理を言った」

「……嘘。なんで…」

 そこにはもう二度と会えないテオ様が立っていた。俺の大好きな綺麗な顔で微笑みながら。

 慌てて起きて身支度を整え、テオ様のところへ向かう。

「イルミリオ。元気そうで何よりだ」

「テ、テオ様もお元気そうで良かったです。お久し、ぶりです…」

 夢じゃない。会いたいと思っていたテオ様が、目の前にいる。でもなんで? あの件はもう解決したはずじゃ…。

 「じゃ、後は2人でごゆっくり」そう言い残してここの主人は部屋を出ていった。

 お茶を淹れてテオ様へ差し出す。

「ああ、久しぶりのイルミリオのお茶だ。…うむ、相変らずいい香りだな。美味い」

「あの…テオ様。なぜここに? あ、あの事が上手くいった報告ですか? それともまさか…」

「落ち着いてくれ。…そうだな。結論を言えば上手くいかなかった」

「え…。嘘…。」

 なんで? テオ様が子供を産めば万事解決するのになんで失敗したんだ?

「実は――」

 テオ様は帰ってからの事を全部話してくれた。

 まず家に帰って事情を説明。テオ様が子供を産む選択をしたことを伝えた。それでちょっとだけ揉めたが、そうしなければお家断絶になると説得し受け入れられた。

 それから本当にテオ様が抱かれることが出来るのかを確認するため、閨教育の時の講師を呼び実践。
 だが、結果は惨敗。なんとテオ様が気持ち悪くなって吐いたらしい。

 相手が悪かったのかも、と他の人を呼んでみたが全て惨敗。相手が誰であっても気持ち悪くて吐いてしまった。

 しかも指を入れている段階で。実践どころか準備の段階でダメだった。

「なんでですか? 俺との時は問題なかったのに…」

「…その事なんだが、どうやら俺は君じゃなければ無理らしい」

「え?」

 ちょっと待って。幻聴か? 凄く自分に都合のいい言葉が聞こえたんだが。

「それを確かめるために、今日ここへ来た。疲れているところ悪いが、相手をしてくれるか?」

 テオ様に求めてもらえるなら、疲れていようが寝不足だろうがなんだって構わない。

 二つ返事ですぐに準備した。

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