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番外編

アシェルの常識は非常識。

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僕とアーネスト様は結婚して今は一緒に暮らしてる。

学園を卒業してから僕は魔法師団に、アーネスト様は騎士団に入った。だから住まいはまだ王都で、こっちにあるスタンディング辺境伯の別宅に住んでいる。

スタンディング領にある本邸に行った事もあるけど、あちらと違って小さめだ。と言っても僕にしたら物凄く大きなお家なんだけど。

僕の家も平民として考えれば大きすぎるくらいだけど、上級貴族のお家はその比じゃない。慣れるまでが大変だった。

使用人の方もいて、お世話されるということに慣れないからこれだけは困ってる。僕は必要ないって言ってるんだけど、させて下さい!って強くお願いされてしまって、お茶の用意とか簡単なことだけお願いしてる。流石に着替えはちょっと…。


アーネスト様と一緒に暮らせて幸せで楽しいんだけど、僕には1つ疑問に思っている事がある。

父さんと母さんみたいに、いつでもどこでもちゅってしない事。
結婚前ならわかるんだけど、結婚したらするもんだと思っていたからなんでだろう?

父さんは母さんによく抱きつくし、ちゅーしてるし、僕とライリーもそれを見てる。いつも仲が良いなぁって思ってて、僕も結婚したらそうしたいなぁって思ってた。

だけどアーネスト様はしないからなんでなんだろう。
もちろん仕事が終わって部屋に戻ってきた時はしてくれるんだけどね。


あ。もしかしたら僕からしないといけないのかな。貴族の方はそうなのかもしれない。え、そしたら僕、今までそれを放棄してたってこと?え!それ大変なことじゃないの!?

わわわっ、どうしよう!アーネスト様が呆れちゃう!

こうなったら今日からやらなきゃっ!アーネスト様、ごめんなさい!!


今日は僕の方が早く仕事が終わったから先に帰ってきた。アーネスト様が帰ってきたらちゃんとやらなきゃ。


「今戻った。」

「アーネスト様、お帰りなさいませ。」

そう言って僕はすぐアーネスト様の胸に飛び込んだ。

「ア、アシェル!?」

「あの、アーネスト様少し屈んでください。背が高くって届きません。」

僕にそう言われて屈んでくれたところに僕はちゅっとキスを贈る。

「!? な、な、な…。」

あれ?どうしたんだろう。妻としての努めを果たしたと思ったんだけど足りなかったのかな。じゃあもう1回。

ちゅっとキスをしたら、そのままガバッと抱き上げられて部屋へと直行した。

「アシェルっ!? 一体どうしたんだ!?」

「え?結婚したので妻としての努めを果たそうと…。」

「妻の勤め??」

ん?あれ?

どういう事かと言われたから、僕の父さんと母さんの事を含めて説明した。そしたらアーネスト様が「嬉しいけどそれは違う」って…。


それは妻の努めでも何でもなかった。父さんと母さんはただイチャイチャしていただけだった事がわかった。……僕、最悪だ。


「アシェルのご両親は本当に仲が良いんだな。俺たちもそういう風になろう。…だけど、他の人に見られるのは恥ずかしいことだから2人きりの時にしてくれるか?」

「…はい。ごめんなさい。」


使用人の方にも、

「仲睦まじく微笑ましゅうございました。ですが他の方が驚かれますからお控えいただければ幸いです。」

と優しく諭された。本っ当にごめんなさい!


貴族として新米な僕は、アーネスト様だけじゃなくてこの家の執事長にもお願いして、貴族としての、というより当たり前の常識を習う事にした。


「俺もアシェルが義母上からある程度習っていたと思っていたから勘違いしていた。すまない。」

謝らないでください。僕の思い込みが悪いんです…。


父さんと母さんはギルドでもしていたから、職場でしなくて本当に良かった。そんな事してたら、と考えるだけで怖い。


そう思うと僕の両親は異常だったんだ…。これ、ライリーにも教えてあげた方がいいかも。

ライリーに手紙を送って、帰ってきた手紙には『教えてくれてありがとう。だけど兄ちゃんのその話はショックだった』って書かれてた。…兄としても幻滅されてしまった。僕はなんてダメなんだろう。

ダメダメ!卑屈になっちゃ!これから頑張れば良いよね!うん!


それから僕はちゃんと常識を学んであんなミスは2度としなくなった。

だけど2人きりの時ならいいんだもんね。父さんと母さんは僕の憧れだったから、2人きりの時は遠慮せずにする事にした。

ふふ。だって僕が積極的にするとアーネスト様、真っ赤になるんだもの。可愛くて可愛くて。

これからも仲良く過ごしましょうね。アーネスト様。




* * * * * * *

~手紙をもらったライリー~


は?なんだこれ。

兄ちゃんがアーネストにキスしたとかなんとか書いてあるんだけど。


兄ちゃんっ!僕の兄ちゃんがっ!!


それと父さんと母さんの日常はおかしい事くらい知ってるからっ!! というか兄ちゃんが知らなかったなんてっ!! どんだけ素直で可愛いんだよっ!!

それにしてもアーネストの野郎っ!兄ちゃんとイチャイチャしやがって!!僕の兄ちゃんを誑かした挙句、こんな事させてたなんてぇぇ!!


くっそぉ…。兄ちゃん…。


…とりあえず手紙返さなきゃ。兄ちゃんを傷つけないようにしないとだけど、どうやってもアーネストへの恨み事を書いてしまう。
これじゃ僕が嫌われるじゃないかっ!!


…うん、もうこんな感じでいいかな。これがもう限界だ。


はぁ。まさか兄ちゃんが勘違いしてたなんて。

…やっぱり僕の兄ちゃん世界一可愛い。







* * * * * * *

今回の番外編は感想欄のコメント『両親がやっていたから普通だと思っていたイチャイチャ』から頂きました!ありがとうございましたm(_ _)m

私も楽しく書かせていただきました!

アシェル大好きっ子ブラコンライリーの気持ちを考えると…笑 こんな手紙貰ってもショックしかないよね。


明日はフィリップ&ノーマンのお話です。フィリップsideでお送りします。12:00にUPしますのでよろしければご覧ください。
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