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番外編

親衛隊長、ここに参上!

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僕は初めて人を見て心を撃ち抜かれた。あんなに美しい方がいらっしゃるなんて!!


あ、僕が誰かって?うーん…親衛隊Aと名乗っておこう。以後よろしく。まあ僕のことはどうでもいいんだよ。それよりもあの方の事!



あの方に初めて会ったのは、貴族学園の入学試験の時だった。
筆記の時に、会場に足を踏み入れた銀の天使様。一瞬で心を鷲掴みにされて目を離す事が出来なかった。

この会場に来たって事は魔法科だよな。
試験に受かれば彼と一緒に学べる!!ぜぇぇぇったい、合格しなければ!!

天使様はきっと天使様だからこんな試験簡単にパスするに違いない!!よし!やるぞ!僕はやるぞ!!


筆記の後は実技試験だ。天使様はどんな魔法を見せてくれるのだろうか。

あ、試験はあの的に魔法を当てるのか。10個の的全部なんて無理無理無理無理。僕が出来るのはせいぜい2個かな。……やっぱり2個が限界だった。

周りを見ても皆似たり寄ったり。そうだよね。そうなるよね。


あ、天使様!歩く姿もなんて美しいんだ!はぁ~心が洗われる…!


天使様はどれくらいの的に当てるんだろう。ワクワクする!たとえ1個しか当てられなくても全っ然問題ない!そこに居るだけで素晴らしいんだから!


………は? え? 何があった…?

ん?僕の見間違いかな?全部の的に当てた???

あれ?見間違いじゃない??……凄くない??


天使様は大天使様だった!!! なんて事だ!!この世界に大天使様が降臨なされた!!

この光景をしっかりと目に焼き付けておこう!ありがとうございます!大天使様!!素晴らしい物を見せていただいて!!


僕も試験に受かって無事に入学する事が出来た。でも僕はBクラスで大天使様とは離れてしまった。あああ!僕の馬鹿っ!なんで今までもっと勉強してこなかったんだ!!


大天使様はアシェル様と仰るらしい。見た目通りなんて美しい名前…。はぁ…こうして姿を見られるだけで幸せだ。あれで平民とか意味がわからない。どこかの高貴な血筋の方できっと身分を偽り入学されたんだろう。うん、きっとそうだ。


騎士科との合同実習前に行われたダンスの授業。その時のアシェル様の笑顔が美しすぎて、興奮した僕は鼻血が出てその場で倒れた。


それからアシェル様は『魔法科の銀の天使』と呼ばれるようになった。うん。同意。皆も同じ事を思っていたんだね。


美しすぎるアシェル様は不埒な輩に声をかけられることも少なくない。
なんとかしてお守りしたいが僕は何が出来るだろうか。

そんな事を考えていた時、アシェル様と良くいらっしゃるモデシット様がこう仰った。

「親衛隊でも作ったら?そうすればアシェルの側に居る事も話しかける事も守る事も自然に出来るだろ?」

はい、そのお話頂きました!僕は今ここに『魔法科の銀の天使アシェル様を守り隊』を発足する!!


そう宣言した途端、あっという間に入隊希望者が集まり親衛隊が出来上がった。よし、これでアシェル様を狙う不埒な馬鹿野郎共から守るんだ!!


「隊長!アシェル様を狙おうとしている輩を見つけました!」

「よくやった!今すぐそいつの所へ行くぞ!」


来てみれば、コイツは性癖に難ありとして周りから嫌われているやつじゃないか。
結婚相手には、常に全裸で過ごしてもらい仕事中でも食事中でもとにかくいやらしい事をして欲しいとか、鞭で殴って欲しいとか、踏みつけて欲しいとか、自分で言いふらしていた頭のおかしい奴だ。

アシェル様にそんな事をさせようとしていたのかコイツは!!許せん!


「自分の顔を鏡で見てこいや!アシェル様と並び立つに相応しい顔をしていると思っているならいっぺん死んで顔をぐちゃぐちゃにして作り直してからにしろやボケェ!そんないかがわしい事させようとするなんざワシら親衛隊が許さんからなぁっ!わかっとるんかアホンダラ!!分かったならとっとと消えろやクソボケェ!!!」


ノンブレスで捲し立てたら泣いて走って消えていった。ふぅ。これでアイツはもうアシェル様に声をかけることはしないだろう。

「素晴らしいです隊長!僕たちも見習います!」

「隊長!またアシェル様を狙っている不届き者がぁ!」

なんやとっ!? 次に行くぞぉ!! アシェル様をお守りするんやぁ!!



そんな感じで僕たち親衛隊はアシェル様が心穏やかに過ごせるように頑張っていたんだ。

え?僕が怖い?何言ってんですか。アシェル様をお守りするためなら鬼でも悪魔でもなんでもなりますよ僕は。それが僕の使命なんで。


でも1番厄介なのはノルベル・パーキンス。アイツは自分が1番可愛いと勘違いしている奴だ。
1番可愛くて綺麗で尊いのはアシェル様に決まっとろぅが!!お前の目は節穴か!?


でも僕たちの力及ばずアシェル様は1日部屋に引きこもってしまわれた。

あぁぁ、なんてお労しい…。変われるなら代わって差し上げたい!

でもローレンス・フィンバー様がアシェル様を立ち直らせたようで僕たちも一安心だ。
と思った矢先、アーネスト・スタンディングがアシェル様をデートに誘ったぁぁぁ!?

アイツもアシェル様にちょくちょく色目を使っている奴だ!アシェル様が困っているならお助けせねばっ!!



…あれ?アシェル様? 真っ赤になっていらっしゃるぅぅ!!

え!? 何!? アシェル様はもしかして、アーネスト・スタンディングの事がっ!?


なんてこったい!!アシェル様がっ!僕たちのアシェル様がぁ!!


でもっ!それが貴方の幸せになるならば僕たちは全力で応援致します!!ええ、全力でっ!!


と思ったらなんとアシェル様はドラゴン討伐に成功したとの連絡がっ!!


さすがは僕たちの希望の星!貴方はどこまで行くんですかっ!!もはや神!!天使ではなく、神です!!

アシェル神、降っ臨!!!


ぜぇぜぇ…。ちょっと力みすぎました。


それからアシェル様はアーネスト様と婚約され、本当に幸せそうになさっておられた。眩しい笑顔が目に沁みるぜっ!


もうアーネスト様がいらっしゃるので僕たちの出番はあまり無いけど、『ドラゴン討伐の英雄』となられたアシェル様を崇め奉る人間は増える一方で、親衛隊の入隊員は爆発的に増えた。

流石は我らがアシェル神!!これからも貴方をずっと見守ります!!




それから月日が経ち、僕たちは学園を卒業してそれぞれの道へと進んだ。


この国が国力を大きく伸ばし強くなったのも、『魔道具の国』として有名になったのも全てアシェル様のお陰だ。

そして今でも僕の耳にはアシェル様の噂が聞こえて来る。
夫となったアーネスト様と『金銀の双璧』と呼ばれ、スタンディング辺境伯領を守り、発展させているという。


僕は魔法師団に入団し、今では魔法師団の小隊長をやっている。ちなみに副団長はセイルズ様だ。

あのアシェル様に意地悪をしていたセイルズ様は、アシェル様によって心を浄化され今では平民の学舎を作り、国民の学力を上げるという立派な事をされている。


僕は今でもアシェル様の親衛隊長だ。僕の人生全ての原動力はアシェル様をお守りすることにある。今の僕の仕事は国境の防衛担当だ。スタンディング辺境伯領に任務先を希望した。


「よし、今日もアシェル様のために働くぞ!」


そして今日も僕は親衛隊長として、アシェル様を守るための1日が始まる。






* * * * * * *

今回のアシェル編は、エレン編と違いアホな展開が無かったのでぶち込んでみました。

明日はアシェルsideに戻ります。結婚後の一幕。コメントからいただきましたネタです。12:00にUPしますのでよろしければご覧ください。
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