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しおりを挟む今日はとうとうアーネスト様との旅行だ!
学園がお休みの日を利用して、1泊2日でお出かけする。ローレンス兄上にもクリステン王国のおすすめ場所を聞いて予習はバッチリだ!
ただ、ものすごーくにやにやしながら「へぇ、2人っきりで旅行かぁ。2人っきりで。」と言われて凄く恥ずかしかった。
…バレてるよね、これは。
アーネスト様と一緒に旅行に行けるのは本当に楽しみだし嬉しい。だけど、あれからキス以上の事はしていなくて僕はそれが少し寂しい。だから今回2人で隣国へ行ったらまた触れてくれるかな、ていう期待もあって…。それに学園の寮だとちょっと恥ずかしいというのもある。
…僕って変態っぽいよね。もっと触れてほしいだなんて。こんなの知られたら嫌われてしまいそうで怖くて言えない。
「あ、アーネスト様!すみません、お待たせしました!」
なんと僕は少し寝坊してしまった。楽しみにしすぎて寝付けなかったのが原因。…前にも嬉しすぎて寝れなくなった事があるけど、子供っぽくて嫌になる。
「いや、そんなに待っていないから大丈夫だ。…ははっ急いできたのか髪が乱れてる。」
わわわっ!恥ずかしいっ!もう寝坊した僕の馬鹿っ!
それから転移門まで馬車で向かってクリステン王国へ。
「ここがクリステン王国…。」
街の雰囲気はリッヒハイム王国とそんなに大きく変わるわけじゃないけど、なんていうのかな。空気が違う。新鮮な気持ちだ。
「まずは宿へ行こう。荷物を預けて散策だ。」
馬車に乗って宿へ向かう。初めて見る景色はどんな所でも楽しい。ここが父さんと母さんの産まれた所なんだ。
宿へ着いた。…着いたんだけど。
「アーネスト様。ここ…高級過ぎませんか?」
アーネスト様にお任せした泊まる宿。なんていうかとにかく大きくて広くて、中は物凄く綺麗でピカピカしてて…。僕がいるのは場違いじゃないかと思う場所で。
「そうか?これくらいなら普通だと思うが…。」
さすが上級貴族…。感覚が違う。僕はこの感覚にも慣れないといけないのか。貴族って大変だ…。
王宮から用意された宿もこんな感じの宿だったけど、あれは王宮から用意された場所だからこんな風には思わなかった。でも今回は自分達で選んだ場所だから、こんな立派な宿は緊張してしまう。
「じゃあアシェルは少し待ってて。」
緊張した僕とは違ってアーネスト様は慣れた様子で受付してる。
はぁ~アーネスト様って本当に上級貴族なんだ。すごい。僕、いつまでもこんな風じゃダメだよね。うん。頑張ろう。
荷物を預けてから、ローレンス兄上におすすめしてもらった場所へ。
まずはこのリッヒハイム王国でも有名な庭園だ。とても広い所らしくて、凄く綺麗だから行ってみたら良いよって。
その言葉通り物凄い所だった。入り口からしてもう別世界だった。真っ直ぐ続く道を挟んで両側が左右対称になっていて、奥には大きな噴水が。まるで迷路かと思うようなトピアリーに、色とりどりの花が咲いている花壇などなど、全てが感動する美しさだった。
すごい、こんな綺麗な景色初めて見た。
「これは壮観だな。話には聞いたことがあるが、本当に見事だ。」
アーネスト様も楽しんでくれてるみたい。庭園を歩いているとカフェもあって、そこでお茶にする事に。すると弦楽器の生演奏まで始まって、心地のいい時間を過ごすことが出来た。
全部回ると1日が終わっちゃうから、名残惜しく思いながらも次の場所へ。またここに来たいな。
それからこれもクリステン王国では有名な光の塔へ。
とても高い塔は夜になると魔道具で光るらしい。今は昼間だから光ってないけど、この塔自体が芸術品で壁には色々な彫刻がされている。中は外の光がたくさん入るようになっていて、とても明るくて綺麗だった。壁に描かれた絵もとても美しくてずっと見ていられるくらい。
ほぅ、とため息が漏れてしまうくらい綺麗な所だった。
それからお腹も空いてきたからおすすめされたレストランへ。クリステン王国の伝統料理が中心の有名なお店だそう。
料理は初めて食べるものもあれば、父さんが作ってくれた物もあって、どれも美味しくて食べ過ぎてしまった。
「ははっ。アシェルは食べている姿も可愛いな。」
あ、僕お行儀悪かったのかな。
「いや、全く。…前から思っていたんだが、アシェルのテーブルマナーは綺麗だと思っていたんだ。平民なのになぜだろうって。でも公爵家縁の者だと知った時、納得したよ。」
「アーネスト様から見ても大丈夫ですか?」
「ああ、全く問題ない。母上の教育が素晴らしかったのだな。」
えへへ。母さん、ありがとう。褒められちゃった。
食事の後は、ゆっくり街を歩く。貴族の人はこういうのあんまりしないらしいんだけど、僕は平民だし冒険者だし街を歩くのは好き。それをアーネスト様もわかってくれているから僕に合わせてくれる。
「たまにこうして歩くというのもいいものだな。知らなかった物を見つけたり、新しい発見がある。…それに何よりアシェルとこうしていられる事がとても嬉しい。」
そう言って繋いだ手を持ち上げて、僕の手の甲にキスをする。
ひゃっ!アーネスト様…そんな事されたら僕の心臓は止まりそうになりますっ!…もう僕の顔、絶対真っ赤だよ!
「ぼ…僕も嬉しい、です。」
「ぐっ…。耐えろ、まだ早いっ…!」
どうしたんだろ?…はしたなかったかな?大丈夫?
それから色々なお店を見て回った。可愛い置物を買ったり、ハミッシュ様達用にお菓子も買った。
「アシェル、これを付けてほしい。」
とある宝石店へ入ったら、アーネスト様から髪飾りを。アーネスト様の瞳の色の宝石がついた綺麗な髪飾り。
「アシェルの髪は長くて綺麗だから、これが映えると思って。」
「前にもネックレスいただいているのにまたこんなっ…。」
「贈りたいんだ、俺が。だから受け取ってほしい。」
もうそんな風に言われたら断れないじゃん…。
じゃあ僕も何かアーネスト様に贈ろう。
「じゃあ、アーネスト様にはこれを。…僕の色のネックレス、付けてください。」
僕はアーネスト様の色のネックレスを貰ったから、僕からは僕の色のネックレスを。
「嬉しいよ。もちろん付けさせて貰う。」
わ…アーネスト様本当に嬉しそうにしてくれた。どうしよう。抱きつきたいけど、人の目があるから我慢我慢!
…僕の挙動不審さでバレてるのか、お店の人に温かい目で見られてる気がする。ちょっと恥ずかしくなってきちゃった。
そろそろいい時間だからって宿に戻って、夕食は宿にある高級レストラン。
なんか今日一日、すごく贅沢した気がする。でもこれがアーネスト様のような上級貴族の人達には普通のことなんだよね。……慣れるかな、僕。
「アシェル、今日一日疲れただろう。風呂でゆっくりしてくるといい。」
「…はい。ではお先に行ってきますね。」
そう言って浴室へ。扉を閉めて深呼吸をひとつ。
うん。アーネスト様もお風呂入ったら、僕から抱きついてキスしよう。
……大丈夫かな。嫌がられないかな。…婚約してるし大丈夫だよね。
今日一日一緒に過ごして、もっと触れて欲しくなったんだ…。もう僕も我慢できないよ。
* * * * * *
~アーネストside~
…今日何度アシェルを宿に連れて帰ろうと思ったかわからない。
庭園を歩いているときも、光の塔へ行った時も、とにかく楽しそうで嬉しそうなその顔が可愛くて…。
それに、俺にアシェルの色のネックレスを贈ってくれて。その時はギリギリで煩悩を押しとどめたが、本当に危なかった。
宿の受付も、本来なら俺は自分でする事がない。だから事前に調べておいたがアシェルから見ておかしくはなかっただろうか。
これからも2人で出かける事は多いだろう。色々と調べておいて、自分で出来る様にした方がいいだろうな。…アシェルにカッコ悪いところは見せたくない。
…アシェルが風呂から出て、俺も湯を浴びて。その後は抱きしめキスをして、そのまま押し倒して…。
嫌がられないだろうか。前に一度体を重ねた時も嫌がりはしなかったから大丈夫だとは思うが…。
今日一日一緒に過ごして、普段とは少し違うアシェルを見てもっと触れたくなったんだ。もうこれ以上、俺は我慢できそうにない。
応援ありがとうございます!
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