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しおりを挟む婚約も成立して、僕は自分の瞳の色のピアスを用意した。今アーネスト様はそれを付けてくれている。
初めてそれを見た時、僕の心臓はきゅーんってなって嬉しすぎてアーネスト様の胸に飛び込んでしまった。
好きな人が自分の色を身につけるってすごい。こんな風になるんだ。
それから学園では冷やかされたりもしたけど凄く幸せだった。科が違うから食事の時くらいしか一緒に居られないけど、必ず一緒にいるようになった。
それからドラゴン討伐からおよそ3ヶ月程経って、王宮から討伐メンバーにお呼びがかかった。討伐に関しての褒賞が決まったそう。
本来なら大体1ヶ月位には決まるらしいんだけど、内容が内容だっただけに3ヶ月かかったらしい。
ただのドラゴン討伐だけならそこまでにならないけど、魔力剣や魔道具の事もあってこれをどうするかがなかなか決まらなかったらしい。
「うん。よく似合ってるよ。」
「母さん、ありがとう。…それにしてもお爺ちゃま達…。」
今日は王宮へ向かう日だ。それに合わせて僕の家族も王都に来ていて、王宮から用意された宿で身支度中だ。
僕とアーネスト様の婚約の時に、実は大量の贈り物を持ってきていた。婚約祝いとドラゴン討伐の褒賞で王様に謁見するだろうとしてその時の服とか宝石とかを。
有難いんだけどやりすぎなんだよね…。今に始まった事じゃ無いんだけど。
「今日は旦那様方も夜にはこちらにいらっしゃるようだから忙しい日になるな。」
そうなんだよね。お爺ちゃま達にもまた会えるのは凄く楽しみ。
「兄ちゃん緊張するね。まさか王様に会えるなんて思わなかった…。」
「僕も。確かに凄いことをしたんだろうけど、ここまで大事になるなんて思わなかったね。」
それから王宮へと向かった。アーネスト様とアレクシスおじ様も王宮で合流してそれから謁見の間へ。謁見の間はもうなんていうか煌びやかで荘厳な場所で圧倒されてしまってカチコチになってしまった。初めてアレクシスおじ様に会った時の事を思い出す。こういう時、やっぱり僕は平民なんだなって思う。
初めてお目にかかった王様は、とても優しいお顔をされて僕たちを出迎えてくれた。
「ドラゴンという脅威に立ち向かい、見事討伐し街を救った偉業を讃えここに褒賞を授ける。」
まずはドラゴン討伐の報奨金。しかも大量の。平民なら一生手にする事は出来ない金額だ。目眩がした。
そして倒したドラゴンの素材を使って作られた剣と杖。こんなの自分で作るとなったらいくらかかるかなんてわからない代物だ。
それから今までにない画期的な魔道具の開発に携わったとして、これに関してもお金が渡された。母さん発案の『あったら良いな』で始まった事が物凄い金額に変わってしまった…。
魔力剣も国の戦力増強になるとして、魔力を使った新しい方法を生み出したとしてこれもすごい金額のお金が渡される事になった。…僕もう気絶してもいいかな。
魔力剣は今後、国の騎士団をはじめ、順々に広めていく事になった。その講師もして欲しいと言われ今後どのようにしていくか相談となった。
そして心肺蘇生法。新しい救命方法として国に広めていく事になったと聞かされた。民は国の財産。その民の命を救う新しい方法であるとして、これは発案者の母さんに褒賞が渡される事になった。
母さんは、クリステン王国で国外追放となった身だ。でもクリステン王国にも母さんの偉業は伝わっていて、魔道具の開発に繋がる発案、心肺蘇生法の伝授、ドラゴン討伐に関わっているとしてそれを讃え国外追放の罰は無くなった。(魔力剣についてはリッヒハイム王国がまだ秘匿している案件で、クリステン王国側は知らないらしい。)
だから母さんはもう、いつでも好きな時にクリステン王国へ行く事が出来るようになった。
たまに母さんが謝っていたけど、これで母さんの罪は無くなったんだ。もう謝る必要はないんだ!
そして僕たち家族は叙爵され、名誉貴族となった。一代限りの騎士爵だ。それで姓を名乗る事が出来る様になって、母さんのフィンバー姓を名乗る事になった。
公爵家ではないけど、またフィンバーを名乗る事が出来る様になったんだ。
母さんはそこで静かに涙を流していた。父さんが寄り添って背を撫でている。本当は皆でぎゅってしたいけど、王様を前にそれは流石に出来ないもんね。
母さんはどれだけ嬉しいだろう。たまにごめんて謝る母さんを見るのは僕も辛かったんだ。僕も嬉しくて涙が出た。母さん、良かったね。
これで王様との謁見は終了した。謁見の間を出てから僕たち家族は母さんに抱きついた。
「母さん良かったね、良かったね。」
また涙が溢れ出してわんわん泣いてしまった。1番嬉しい褒賞は母さんの国外追放がなくなった事だ。神様はちゃんと見てくださってたんだね。
「まさかあの魔道具の開発がこうなるとはね。世間を賑わすとは思っていたけど、こうなるなんて夢にも思わなかったよ。家はお陰で更に繁栄するだろう。ありがとう。アシェル、これからも魔道具の開発に手を貸してくれ。宜しく頼むよ。」
「はい。こちらこそ。」
アレクシスおじ様はにこにこで先に王宮を後にした。
そこから部屋を移り、宰相様と宰相補佐様、そして騎士団長様、魔法師団長様とお話しする事に。
宰相補佐様はフィリップ様のお父様でびっくりした。フィリップと仲良くしてくれてありがとうって言われて、仲良くさせてもらってるのは僕の方だから恐縮してしまった。
今からは魔力剣の講師の件についての話し合いをする事になる。
「王との謁見後でお疲れでしょうし、お茶会でもしながら気軽にお話し致しましょう。英雄の方々とお茶会出来るなんて贅沢な時間ですね。王にも後で自慢しましょう。」
という事でお茶会となってしまった。喉も乾いてたし有り難かったんだけど、国の重要な内容についてのお話しなのにこんなに気軽で良いのかな?…宰相様が良いと言ってるからいいのか。
魔力剣の講師の話だけど、まずは父さんに王都の騎士団に入り教えてもらえないかと言われた。Sランクの冒険者として有名でもあったから、剣術の指導も含めて。
でも父さんはそれを断った。理由は母さんと離れていたくないから。相変わらずラブラブなのは良いんだけど、そんな簡単に断っていいの?と僕はちょっと怖かった。
でも宰相様は、怒る事はなくて騎士団長様と騎士数名をソルズへ数日派遣する事になった。ひと月に1度のペースでソルズへ数日派遣して、その時に父さんが教える、という形に落ち着いた。
ライリーとアーネスト様は騎士団への入団を、僕と母さんは魔法師団への入団を勧められた。
ライリーと母さんは冒険者を続けたいとして、入団を断った。母さんは今はSランクだけど、本来はBランク程度の実力しかないという理由。ライリーは自由に動ける冒険者の方が性に合ってるという理由で。
アーネスト様は僕がどうするかで決めたいと言われてしまった。
僕も冒険者は続けたいと思う。でもアーネスト様と結婚したら冒険者で仕事を続けていくのは難しいのかもしれない。辺境伯領のこともあるし。
それにアレクシスおじ様との約束もある。魔道具の開発研究もお手伝いしたい。魔力回路や込める魔法を考えるのは楽しかったんだ。
そう伝えたら、特別団員として入団するのはどうかと言われた。
僕は今回の魔道具製作にも大きく関わっているし、今後も国の事を考えれば続けた方がいい。でも魔法師団で魔法の指導もして欲しい。なら、指導する側として入団しアレクシスおじ様との魔道具製作にも携わる。
本来は団員は他の仕事をしてはいけないんだけど、特別団員となれば大丈夫なんだそう。
それなら冒険者の仕事もたまには出来るから僕の望みは叶えられる事になる。
とりあえず、5年ほど魔法師団に所属して今後どうするかを考えてみては?と言われてそうする事にした。
それでアーネスト様も僕と同じ年数騎士団に入団する事になった。
ガンドヴァの動き次第ではスタンディング辺境伯領へ戻る可能性もあるから、と。その時は僕も一緒に行く事になる。
まだ先の話だし、とりあえずはそんな形で話は纏まった。
* * * * * *
~お茶会後の宰相と宰相補佐の会話~
「宰相閣下、お疲れ様でした。」
「ああ、お疲れ様。」
「それにしても、あの家族はまた目立ちますね。」
「本当に。エレン殿とアシェル殿は特に。あの様な可憐な姿からは想像できないが、ドラゴン討伐してしまう実力者とは信じられん。」
「…それとエレン殿が昔国外追放された人物とは驚きました。今の様子からそうは見えませんでしたので。」
「…そうなんだよな。人は見かけによらないというが。だが、国外追放があったからこの国に大きな利益をもたらす事となった。」
「クリステン王国は悔しいでしょうね。国外追放の罪をなくしましたが、国に戻ろうとする気配は今のところありませんでしたし。」
「それにアシェル殿がスタンディング辺境伯の息子と婚約したしな。アシェル殿だけでもこの国に残る事が決まっているのは有り難い。」
「…ガンドヴァ王国との事もありますからね。同盟国を増やし、打てる手を増やしましょう。」
「うむ。かの国は、今度はあの英雄達を我が物にせんとするだろう。国境の警備強化など同時に進めていかねばな。…はぁ、忙しい日々はいつ終わるのだろうか…。」
「頑張ってください、宰相閣下。」
「…お前も頑張るんだよ、宰相補佐殿。私だけにやらせようとするな。」
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