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しおりを挟むドラゴン討伐が終わって、アーネスト様も助かって、皆ヘロヘロだったけど、まだスタンピードで溢れた魔物が残っていた。
皆、一旦ポーションで回復させてまだ戦ってる皆の元へと戻った。
気絶した男はライリーが縄でぐるぐる巻にして連れてった。
アーネスト様は背の高い人だから、父さんが担いで行った。…ちょっと扱いが雑な気がするのは気のせいかな?怪我人なんだから優しくしてあげて。
最初程ではないけど、まだたくさんの魔物が居たから僕はありったけの魔力を込めて魔物を氷漬けにした。
動きを止めた魔物はもう他のメンバーの敵じゃない。そのまま、父さん達も戦いに参加してあっという間に制圧が完了した。
やっと全部終わったぁ…。
僕は力が抜けてその場にへたり込んだ。最後に思いっきり魔力を使ったから、もう何にも残ってない。
「アシェル!お疲れさん!さすがだったぜ!」
「…デイビットさん。へへ…。僕たちドラゴンに勝ったよ。」
「ほんとに、お前達は最高だな!」
デイビットさんに頭をぐりぐりと撫でられる。
ギルドの皆も騎士の人達も、皆ヘロヘロだったからとりあえず解散になった。
縄でぐるぐる巻にして捕まえておいた男は、理由を話して憲兵へと預けた。明日以降また事情を聞きにくると言って。
そして僕たちはそのまま家に帰った。
まさかこんな形で帰ってくる事になるなんて思わなかったな。
「アシェル、アーネスト様は俺が看ておくからお前は先に風呂に入ってこい。」
母さんにそう言われてお風呂に入った。アーネスト様の血を思いっきり浴びたから、凄い事になってるしね。
お風呂から出てアーネスト様が寝ている部屋へと行くと、アーネスト様を母さんが全部綺麗にしてくれてた。
血まみれで泥だらけだったもんね。…うん、顔色もまた良くなってるみたいで良かった。
「アシェル、今日は本当にお疲れ様。お前は本当に強くなったな。」
えへへ。母さんに褒められた。
「アーネスト様はこれから熱が出るだろう。あれだけの大怪我をしたんだ。ポーションで傷は治っても体は一気には治らない。ま、処置が早かったから後遺症なんかもないだろう。…後はお前が看病しろ。な。」
「うん…。母さん、ありがとう。」
「ただ、お前も疲れてるんだからちゃんと寝ろよ。…じゃ、俺も風呂入ってくるな。」
そう言って母さんは部屋を出て行った。残された僕は、アーネスト様の横に座ってアーネスト様の顔をじっと見ていた。
『…俺も…守りたい、人が…いたから…な…。アシェル…愛し、てる……。』
あの時、確かにアーネスト様はそう言った。
ねぇ、その言葉は本当なの?僕のこと、好きなの?早く目を覚まして。もう一度聞かせて。
もしその言葉が本当だったなら…。僕は諦めなくて良いのかな。
ねぇ、アーネスト様。僕もね、大好きだよ。
目を覚ましたらちゃんと伝えよう。だから早く目を覚まして。声を聞かせて。
その後、しばらくするとアーネスト様は熱が出た。濡れたタオルで汗を拭いてあげる。
何度かそうしていたけど、僕もいつの間にか寝てしまった。
「ん…。あ、朝?…アーネスト様は…?」
何かが僕に触れてる感じがしてふと目が覚めた。
そろりと起き上がると、アーネスト様とぱちりと目があった。
「え…?」
「…アシェル…おはよう。」
「アーネスト様…。」
「ああ。……アシェルありがとう。俺は、助かったんだな。」
アーネスト様が起きてる。顔色も完全じゃないけど、すごく良くなってる。
「……アーネスト様ぁ!!」
助かったと言っても僕は不安だったんだ。もしこのまま目を覚さなかったらって。
でもアーネスト様が起きてて、話してて、ちゃんと僕を見てくれてて。
嬉しくて嬉しくて、泣きながら抱きついてしまった。
「良かった…良かった…アーネスト様ぁっ!あのまま…目を覚さなかったらって…怖かった…良かった…。」
「…心配かけてすまない。でも俺はちゃんと君を守れたんだな。」
「助けてくださって、ありがとう、ございましたっ!…でもっでもっ!もうあんな思いをするのは、嫌です!もう絶対に、嫌です!」
「すまない。ありがとう、アシェル。」
僕たちはしばらくそのまま抱き合っていた。アーネスト様の心臓の音が聞こえる。生きてる。ちゃんと生きてここにいる。
その音がすごく安心させてくれた。
「…アシェル、あの時俺はちゃんと言えてただろうか?」
「え?あの時?」
あの時っていつの話?起き上がってアーネスト様の顔を見つめる。アーネスト様はすごく優しい顔をして僕の目を見つめていた。
「もう一度言い直させてくれ。…アシェル、愛してる。」
「…あ。………本当、ですか?」
「ああ、俺の心からの言葉だ。アシェル、好きだ。愛してる。」
「え…で、でもっ!アーネスト様にはパーキンス様が…。」
「…そうか。まだ言ってなかったのか。もう婚約破棄になっている。だから心配しなくてもいい。」
うそ…婚約破棄に、なってたんだ…。じゃあ、じゃあ僕は本当に諦めなくてもいいの?
「アシェルには迷惑かもしれないが、どうしても伝えたかったんだ。…本当に愛してるんだ。」
「ぼ、僕もっ!僕も好きです、アーネスト様!」
嘘みたいだ。あの時の言葉は嘘じゃなかったんだ…!夢みたいだ…!
「アシェル!」
そのまま僕の唇はアーネスト様と一つになる。角度を変えながら、何度も何度も。
暖かくて柔らかくて気持ちよくて。僕の心には幸せが広がった。
やがて僕たちは離れた。
「嘘みたいだ…。こんな事があるなんて。」
「はい。僕も、そう思います。」
それからまた抱き合って、しばらくお互いの温もりを感じ合っていた。
アーネスト様はまだ本調子じゃないからまた眠った。
それを見届けて部屋を出た。
リビングにはもう皆が集まっていた。おはようと声を掛け合って僕も席に着く。
「アーネスト様、気がついたよ。今はまた眠っちゃったけど。」
「そうか。良かった。数日はまともに動けないだろうから家に泊まってもらおう。お前も看病するだろ?学園には俺から連絡入れておいたから、ゆっくりしてろ。」
「母さん、ありがとう。」
それから数日家でゆっくり、ドラゴン討伐の疲れを癒した。
アーネスト様は2日程体を動かすのが辛そうだったけど、今はもう元気になっている。
それからドラゴン討伐で僕を突き飛ばした男。憲兵によって調べられた話を聞いた。
あの男は、パーキンス様に依頼された男だった。そしてあのドラゴンもスタンピードもパーキンス様の指示だった事がわかった。
パーキンス伯爵家が作った魔法薬。その中でも最近出来たのが『魔物を引き寄せる薬』だった。
近くにドラゴンが現れたことを聞いていて、ソルズの街に来るよう薬で誘導。そしてソルズの街付近にもその薬を撒いた。
ドラゴンが現れたことで、魔物達は一斉に逃げ出した。本来ならあちこちに行くはずが、撒かれた薬のせいでソルズの街へと集まった。
それがスタンピードの原因だった。
そしてなぜそんな事をしたのか、その理由が。
僕と僕の家族が住むソルズの街を潰して、僕を殺す事。
その話を聞いて僕はすごく怖くなった。
もしスタンピードで僕がソルズの街へ戻る事があったら、魔物の大群の中に僕を突き落とせ、と男に命令していたらしい。
僕はドラゴンの方へと行ってしまったから、どうしようかタイミングを見計らっていたそう。
そして、あんな事になった。
僕はパーキンス様が許せない。僕1人だけじゃなく、周りの人も家族も皆巻き添えにした。そしてアーネスト様も。
負傷者の数も多く、中には亡くなった人もいる。
パーキンス伯爵家は今大変なことになっているらしい。今回の事も含めて、厳しい沙汰が下されるだろうと聞かされた。
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