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しおりを挟む※流血シーンあります。苦手な方はご注意下さい。
* * * * * * *
間近で見るとなんて大きいんだろう…。
怖い。正直怖い!でもここで食い止めなかったら、街が終わる!
氷の槍をまずは10本。そして風の魔法を発動させて、槍と同時に放つ!風の勢いに乗った槍はドラゴンの至る所に思いっきり刺さった。でも全然致命傷には程遠い。
ドラゴンも負けじと巨体を震わせ、僕に向かって攻撃してくる。避けられないから魔法で塞ぎ、すぐ様氷の槍を突き刺す。
ぐっ!攻撃が重い! 氷の槍も奥深くまでは刺さらない!硬すぎでしょっ!
はぁはぁ。1人で厄災級を相手にしてるから結構辛い。でも皆も頑張ってるんだから僕も頑張らなきゃ!
氷の槍を展開する。…っ!!嘘!早い!
ドラゴンが爪を凄い勢いで振り上げてきた。これ、防げない!!まずい!!
ぎゅっと目を瞑ったら、ガキィィン!と強い音がした。パッと前を見ると…。
「っ!? アーネスト様っ!?」
「…ふぅ、間一髪だったな。無事で良かった。」
しかもその剣……。
「前にアシェルが教えてくれただろう?…魔力剣、だったか?俺も出来る様になったんだ。それを伝える前にこんな事になってしまったがな。」
うそ…アーネスト様凄い。父さんだってこれが出来るようになるまで結構かかったのに…。
「さっきはすまなかった。俺は甘ったれていた。」
「アーネスト様…。」
「っ!ドラゴンは待ってくれないみたいだ。やるぞ、アシェル!」
「はい!」
アーネスト様が来てくれた!それだけで僕の力は漲ってくる。
アーネスト様がドラゴンへ一気に迫り足元を斬りつける。魔力剣凄い!斬れ味が段違いだ!
アーネスト様をフォローするように風を展開。防御と攻撃を一度に行う。
ガウッ!と一声鳴いて怯んだ一瞬の隙を突き、そのまま強風を当てる。後ろへたたらを踏んだドラゴンに、アーネスト様がすぐ様何度も斬りつけていく。
アーネスト様がさっと後ろへ退避した瞬間、氷の槍を20本思いっきり上から振り落とす。深くは刺さらなくともダメージは確実に与えられている。
「アシェル!……俺も加勢するぞ!いっけぇぇぇ!!」
竜巻が巻き起こりドラゴンを切り刻みながら後ろへ追いやる。
「っ!母さん!…父さん、ライリーも!」
皆無事だ!良かった!
「アシェル!余所見をするな!まだ終わってないんだぞ!」
父さんに言われてハッとする。魔力を剣に纏わりつかせながらドラゴンへ迫る父さんとライリー。
2人は一気に距離を詰めて、ザクザクと斬りつけていった。
「アシェル、ここまでよくやったな!俺たちも加勢するから、一緒に片付けよう!」
「うん!…アーネスト様!5人でやります!絶対勝ちましょう!」
「よし!やろう!」
それから僕たちは連携を取りながら、対ドラゴン戦を繰り広げた。
巨体は見掛け倒しではなく、どれだけダメージを与えてもドラゴンの攻撃の威力が落ちる事はなかった。
それでも僕たちは諦める事なく何度も攻撃を仕掛けていく。
「ライアス!援護する!」
母さんが突風を父さんに当てて、ぐんっとスピードアップさせた。そのまま勢いに乗りドラゴンの下へ滑り込みお腹を斬りつける。
凄い、父さん達の連携!息ぴったりだ!あんなの普通、人に当てたら大怪我するのに母さんのコントロールはさすがだ!
ドラゴンがブレスを放とうとする時は、僕が氷で口を塞ぐ。
そして、父さん、ライリー、アーネスト様がそれぞれ斬りつけて、母さんが魔法で援護する。
ドラゴンはもうボロボロだった。あと少しだ。
勝てる!絶対勝てる!このままいけば倒せる!
ドラゴンが僕めがけて爪を下から振り上げる。それを防ぐように魔法を展開したその時だった。
何かに思いっきり突き飛ばされて僕は魔法が展開できなかった。
あ、まずい。僕、死んじゃう。
「アシェルーっ!!」
僕の目の前で勢いよく血が撒き散らされる。
そして僕はその血を思いっきり浴びた。
え…何が起こったの…?
「ぐふっ!」
「!! アーネスト様ぁ!!」
アーネスト様のお腹を、ドラゴンの爪が貫通していた。
「いやぁぁ!なんでなんで!アーネスト様!!」
そのまま投げ飛ばされるアーネスト様。僕はアーネスト様の側へ駆けつけた。
「ごふっ…アシェル…無事、で良か、った…。」
「なんで、なんで僕をっ…!」
「…俺も…守りたい、人が…いたから…な…。アシェル…愛し、てる……。」
やだやだやだ!そんな事今言わないでよ!!
「こいつ!邪魔しやがって!!」
「良くやったライリー!そのまま気絶させろ!」
ライリー達の方へ振り返ると、知らない男が倒れていた。僕、さっきあの人に突き飛ばされたの?なんでそんな事するの!?
「アシェル!ここは俺に任せろ!…ありったけのポーション使っておく!だからお前はドラゴンを!」
「…母さん…。僕、僕…。」
アーネスト様が、僕を庇って…。
「しっかりしろ!アシェル!!今はドラゴンをなんとかする方が先だ!俺よりお前の方が強い!こいつは俺に任せて、お前は最後まで諦めるな!!」
っ!!……そうだよね。ドラゴンを倒せなかったら皆やられちゃう…。
「アシェル!ブレスがくるぞ!」
「絶対負けない!」
思いっきりドラゴンの口に氷を詰め込む。そしてすぐに風に石を含ませた竜巻を起こしてドラゴンへ当てる。ボロボロだったドラゴンは更に切り刻まれて倒れ込んだ。
ドラゴンが倒れ込むと、すぐ様父さんとライリーが剣でドラゴンの首を斬り落とした。
これでドラゴン討伐は完了だ。
「アーネスト様!!」
ほっとなんてしてられない!アーネスト様が大怪我を!
「……ポーションで傷は治った。……だけど。」
「え…?」
アーネスト様の顔が真っ青…。え?あれ?アーネスト様、息、してない?
「嘘…嘘だ…嘘だ!アーネスト様!起きて!目を開けて!目を開けてよぉ!!」
やだやだやだやだ!なんで!どうして!なんでアーネスト様がこんな目に遭うの!!
どうしようどうしようどうしよう、どうしたらいい?アーネスト様を助けなきゃ!でもどうやって?どうしたらいい?
「アシェル……ごめん…。」
母さんがなんか言ってる。でも今は聞いてられない。
アーネスト様を助けなきゃ!どうしたらどうしたらっ!
……あっ!!一つ方法があった!!
アーネスト様の胸に両手を置いて、1、2、3、…30。
リズムに合わせて胸を押す。そして、気道を確保して鼻を摘んで息を吹き込む。
母さんが前に教えてくれた心肺蘇生法だ。人命救助があった時にって教えてくれてたのを思い出した。
「アシェル…凄いぞっ!よく覚えてたな!…よし、俺も協力する!」
母さんに胸を押してもらい、僕は息を吹き込んでいく。すると
「……ごほっ…はっ…はっ…。」
「あ……。」
「アシェル!!やったぞ!助かったんだ!!」
あ、ほんとに?ほんとに??
アーネスト様、息を吹き返した…。息を吹き返した!助かったんだ!!
母さんがまたポーションを取り出しアーネスト様に飲ませていく。
「……うん、顔色が少しよくなったな。さすが特級ポーション。……アシェル、良くやったな。」
母さんがそう言って僕の頭を撫でてくれた。
ドラゴンも倒せて、アーネスト様も助かった…。
良かった…本当に良かったっ…!
「うわぁぁぁぁぁぁ!!良かったっ…よか、ったっ…アーネスト様ぁぁ!!」
やっと安心できて、僕はアーネスト様にしがみついてわんわん泣いた。
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